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Keysight×ノースイースタン大学の6G研究最前線:130GHz MIMOシステムで36Gbpsの無線伝送を実現

Keysight×ノースイースタン大学の6G研究最前線:130GHz MIMOシステムで36Gbpsの無線伝送を実現 - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-05-13 08:26 by admin

Keysightは、ノースイースタン大学の6G研究者との共同研究に関するオンデマンドデジタルイベントを開催している。このイベントはIEEE通信学会とWileyが後援している。

イベントでは、ノースイースタン大学の研究者たちが高速・高帯域幅の無線通信における課題を克服するための最先端研究を紹介している。具体的には、130GHz帯を使用した広帯域MIMOシステムの検証、6G信号に対する盗聴攻撃のエミュレーションによる脆弱性テスト、リアルタイムサブテラヘルツ通信のネットワーク層での研究などが含まれる。

講演者には、ノースイースタン大学の電気・コンピュータ工学教授であるJosep Miguel Jornet氏、Keysight Technologiesの6GプログラムマネージャーであるRoger Nichols氏、同社のテストテクノロジストであるDaniel Bogdanoff氏が含まれている。

Keysightは6G研究の加速に向けて、測定科学の専門知識と最先端のRFおよびセルラーテスト機能を提供している。6G技術は前例のない性能、信頼性、セキュリティを提供し、社会を完全に接続することを目指している。

References:
文献リンクOn-Demand Digital Event: Innovating for 6G with Keysight & Northeastern University

【編集部解説】

6G通信技術の研究開発は着実に進んでおり、今回のKeysightとノースイースタン大学の共同研究は、実用化に向けた重要なマイルストーンと言えるでしょう。

特に注目すべきは、130GHz帯を使用した広帯域MIMOシステムの実証実験です。この実験では、130GHz帯で10GHzの帯域幅を持つ2つのデータストリームを使用し、36Gbpsの無線伝送を達成しています。これは現在の5G通信と比較して約10倍の速度であり、将来の超高速通信の可能性を示しています。

また、セキュリティ面での研究も重要です。高指向性のサブテラヘルツ通信リンクに対する「中間者攻撃」のエミュレーションでは、メタサーフェスを使用して高指向性のサブテラヘルツビームを盗聴者の受信機に曲げながら、見通し通信リンクを維持するという手法が検証されています。6Gのような高周波数帯通信では、従来とは異なるセキュリティ脅威が存在することを示唆しており、早期からの対策が不可欠です。

6G通信の実現に向けては、テラヘルツ帯特有の課題も多く存在します。高周波数帯では経路損失が著しく増加し、30GHzから300GHzへの移行だけで20dBもの追加損失が生じます。また、大気吸収や障害物による減衰も深刻な問題となっています。

さらに、従来の通信セキュリティスキームでは対応できない新たな脆弱性も浮上しています。特に統合型センシング・通信(ISAC)技術では、センシング対象が非協力的または悪意を持つ場合、高出力の情報を含むISAC信号でターゲットを照射することで、機密データが盗聴されるリスクがあります。

これらの課題に対処するため、Keysightは測定科学の専門知識と最先端のRFおよびセルラーテスト機能を提供し、6G研究の加速を支援しています。実験室環境での6G信号のエミュレーションにより、研究者たちは実時間チャネルやネットワークにおける6Gシステムのパフォーマンスを正確に評価できるようになっています。

業界では2030年までに6Gの商用化が期待されており、製品や応用、適合基準を確立するまでに残された時間は5年程度です。この短い期間で、研究者、デバイス・コンポーネント設計者、テスト・測定スペシャリスト、ネットワーク・サイバーセキュリティエンジニア、規制当局など、6Gエコシステム全体での協力が不可欠となっています。

今回のKeysightとノースイースタン大学の取り組みは、6G実現に向けた研究開発の最前線を示すものであり、今後の通信技術の進化を占う重要な指標となるでしょう。

【用語解説】

6G(第6世代移動通信システム):
2030年頃の商用化が見込まれる次世代の無線通信規格。5Gの10倍以上となる毎秒1テラビット級の通信速度、超低遅延、多数同時接続などの特徴を持つ。自動運転車、医療ロボット、災害復旧ネットワークなどの分野での革新的な応用が期待されている。

MIMO(Multiple-Input Multiple-Output):
複数のアンテナを使って同時に複数のデータストリームを送受信する技術。6G研究では130GHz帯で広帯域MIMOシステムを使用し、データスループットと伝送距離の向上を図っている。

サブテラヘルツ通信:
100GHz〜1THzの周波数帯を利用する通信技術。6Gでは特に110GHz〜330GHzの帯域(D-バンド、G-バンド、H-バンド)が研究されている。従来の通信よりも高速大容量だが、経路損失や大気吸収などの課題がある。

メタサーフェス:
電磁波の反射や屈折をコントロールできる人工的な表面構造。6G研究では高指向性のビームを曲げて通信経路を制御する技術として活用されている。

Keysight Technologies(キーサイト・テクノロジー):
米国カリフォルニア州に本社を置く世界最大規模の電子計測機器メーカー。ヒューレット・パッカードをルーツに持ち、2014年にアジレント・テクノロジーから分離した。6G研究開発のための測定機器やテストソリューションを提供している。

ノースイースタン大学:
1898年創立のアメリカ合衆国マサチューセッツ州ボストン市に本部を置く私立大学。電気・コンピュータ工学分野で先進的な6G研究を行っており、Keysightと共同で130GHz MIMOシステムや6Gセキュリティなどの研究を進めている。

【参考リンク】

Keysight Technologies 6G技術ページ(外部)
Keysightの6G技術に関するリソース、テストベッド、ホワイトペーパーなどを提供している。

ノースイースタン大学公式サイト(外部)
ボストンに本部を置く私立大学の公式サイト。6G研究を含む先端技術研究の情報が掲載されている。

NTT 6G技術情報(外部)
NTTによる6G技術の解説と将来展望についての情報を提供している。

【参考動画】

【編集部後記】

6G技術は私たちの生活をどう変えるでしょうか? 現在のスマートフォンでさえ、20年前には想像できなかった体験を提供しています。2030年の商用化を目指す6Gは、ホログラム通信や脳直結インターフェースなど、さらに革新的な体験をもたらすかもしれません。皆さんは次世代通信でどんな体験をしてみたいですか? また、高速・大容量通信の先にある社会について、どのような期待や懸念をお持ちでしょうか? SNSでぜひ教えてください。

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TaTsu
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