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AsteroidOS 2.0リリース、10年越しのメジャーアップデート

[更新]2026年2月20日

Linuxベースのオープンソース・スマートウォッチOS「AsteroidOS 2.0」が2026年2月17日付でリリースされた。

AsteroidOSは2016年にフローラン・ルヴェストがFOSDEM 2016で発表したプロジェクトで、2018年にバージョン1.0が公開されている。2.0では常時表示ディスプレイ、Tilt-to-Wake、Palm-to-Sleep、心拍数モニターアプリ、歩数計測の初期サポート、カスタマイズ可能なQuickPanel、7種類の新ランチャー、ナイトスタンドモード、49言語対応などが追加された。

対応デバイスは約30機種に拡大し、Fossil Gen 4〜6、Huawei Watch / Watch 2、OPPO Watch、Ticwatch Pro 3などが新たに加わった。同期クライアントはAndroid向けのAsteroidOS SyncおよびGadgetbridge、SailfishOS/Linuxデスクトップ向けのAmazfish、Ubuntu Touch向けのTelescopeに対応する。

プロジェクトは電子廃棄物の削減、プライバシー、教育を目標に掲げており、ハードウェアポーターやアプリ開発者、翻訳者などの貢献者を募集している。

From: 文献リンクAsteroidOS 2.0 open-source smartwatch OS released, now supports around 30 devices – CNX Software

【編集部解説】

AsteroidOSは、GoogleのWear OSやAppleのwatchOSといったプロプライエタリなスマートウォッチOSに対する、Linuxベースのオープンソースの代替として2015年に誕生したプロジェクトです。技術基盤としてはOpenEmbeddedによるGNU/Linuxディストリビューション上に構築され、UIにはQt/QMLを、Bluetooth接続にはBlueZを採用しています。libhybrisライブラリを通じてAndroid Wear(現Wear OS)搭載ウォッチへの移植を可能にしている点が、技術的な特徴のひとつです。

今回のバージョン2.0で注目すべきは、1.0から約8年という長い開発期間を経て、ようやく「日常使用に耐えうるスマートウォッチOS」としての体裁が整ったことでしょう。1.0の時点では常時表示ディスプレイや手首の傾きによる画面起動といった、商用スマートウォッチでは当たり前の機能が欠けていました。2.0でこれらが実装されたことは、実用性において大きな前進と言えます。

このプロジェクトがとくに興味深いのは、既存のハードウェアを「再利用」するという明確な思想を持っている点です。How-To Geekの報道でも指摘されているように、オープンソース・スマートウォッチの領域にはPINE64のPineTimeやBangle.jsといったプロジェクトが存在しますが、これらは自前のハードウェア向けにソフトウェアを開発するアプローチです。一方、AsteroidOSはメーカーがサポートを終了した既存のスマートウォッチにLinuxを載せ、新たな命を吹き込むという、電子廃棄物削減に直接貢献する方向性を取っています。

ただし、現実的なリスクも存在します。NotebookCheckが報じているように、AsteroidOSのインストールは初心者向けとは言えず、デバイスによっては文鎮化(起動不能状態)の報告もあります。公式のリリースノートでも、Casio WSD-F10/F20で文鎮化が発生したケースや、Samsung Gear 2の電力管理が不安定であることが明記されています。また、対応デバイスの多くはすでに市場で入手が困難な旧モデルであり、「試してみたいが対応ウォッチが手に入らない」という状況も想定されます。

技術的に興味深い動向として、Samsung Gear 2がメインラインLinuxカーネルで動作する最初のAsteroidOS対応ウォッチとなった点が挙げられます。従来のAsteroidOSはlibhybrisを介してAndroidカーネルを利用していましたが、メインラインカーネルへの対応は、ウェアラブルデバイスにおけるLinuxの「正統な」サポートへ向けた一歩です。Asus Zenwatch 2でもメインラインカーネルの基本的なサポートが進んでいます。

今後のロードマップとしては、プライバシーを重視したフィットネスアプリの統合、Wi-Fi設定のアプリ内対応、Webベースのウォッチフェイス作成ツール、Webベースのフラッシュツール、そしてコミュニティ製アプリを簡単に入手できるアプリストアの構想が示されています。とくにWebベースのフラッシュツールが実現すれば、導入のハードルは大きく下がるでしょう。

スマートウォッチ市場では、メーカーによるソフトウェアサポートがスマートフォンと比較して短い傾向にあり、2〜3年で更新が途絶えるケースも珍しくありません。AsteroidOSのようなプロジェクトは、「ハードウェアはまだ動くのに、ソフトウェアが理由で使えなくなる」という現代のテクノロジーが抱える構造的な問題に対し、コミュニティの力で解を提示する試みです。その歩みは決して速くはありませんが、11年にわたって開発が継続していること自体が、このプロジェクトの価値を物語っています。

【用語解説】

OpenEmbedded
組み込みLinuxディストリビューションを構築するためのビルドフレームワーク。AsteroidOSのベースシステムとして使用されている。

Qt/QML
Qtはクロスプラットフォームのアプリケーション開発フレームワーク。QMLはQt Quick Markup Languageの略で、UIの記述に用いられる宣言型言語である。AsteroidOSのアプリケーションやウォッチフェイスの開発に使用されている。

BlueZ
Linux向けの公式Bluetoothプロトコルスタック。AsteroidOSではBluetooth Low Energyによるスマートフォンとの同期通信に利用されている。

libhybris
Androidのハードウェアドライバ(HAL)をGNU/Linux環境で利用可能にする互換レイヤー。これにより、Wear OS搭載ウォッチのハードウェアをAsteroidOSから制御できる。

メインラインLinuxカーネル
Linus Torvaldsが管理する公式のLinuxカーネル本流のこと。メインラインで動作するということは、Android由来のドライバやlibhybrisに依存せず、標準的なLinuxカーネルでハードウェアが動作することを意味する。

Tilt-to-Wake
手首を傾ける動作を加速度センサーで検知し、スマートウォッチの画面を自動的に点灯させる機能である。

文鎮化(ブリック)
ファームウェアの書き換え失敗などにより、デバイスが起動不能となり使用できなくなる状態を指す。

プロプライエタリ
ソースコードが非公開で、開発元が独占的に管理するソフトウェアの形態。Wear OSやwatchOSがこれに該当する。

【参考リンク】

AsteroidOS 公式サイト(外部)
Linuxベースのオープンソース・スマートウォッチOSの公式ページ。対応デバイス一覧やインストールガイドを掲載。

AsteroidOS GitHub(外部)
AsteroidOSのランチャー、アプリ、メタレイヤーなど各コンポーネントのソースコードを公開するリポジトリ群。

PineTime(PINE64)(外部)
PINE64が開発するオープンソース・スマートウォッチ。約27ドルで購入でき、InfiniTimeファームウェアを搭載する。

FOSDEM(外部)
毎年ベルギー・ブリュッセルで開催されるヨーロッパ最大級のフリー・オープンソースソフトウェア開発者カンファレンス。

F-Droid(AsteroidOS Sync)(外部)
Android向けAsteroidOS公式同期アプリの配布ページ。Google Playに依存しないオープンソースのアプリストアである。

【参考動画】

【参考記事】

This open-source operating system for smartwatches just got a big update(外部)
How-To Geek。AsteroidOSを既存ハードウェア再利用に焦点を当てた唯一の大規模プロジェクトと位置づけた解説記事。

AsteroidOS 2.0 brings new life to old smartwatches(外部)
NotebookCheck。インストールの技術的難度と文鎮化リスクについて注意喚起する報道記事。

8 Years Later, Linux-based AsteroidOS 2.0 is Here(外部)
It’s FOSS。約8年ぶりのメジャーリリースで15の新規ウォッチモデル対応、49言語に拡大したことを報じている。

Proper Linux on your wrist: AsteroidOS 2.0 released(外部)
OSnews。FossilやTicwatchの対応が充実し、Linuxスマートウォッチの現実的な選択肢になったと評価。

AsteroidOS 2.0 Released(公式リリースノート)(外部)
AsteroidOSチームによる公式アナウンス。全30機種のビルドに約1週間を要する詳細や今後の計画を掲載。

Happy New Year 2026(AsteroidOS公式ブログ)(外部)
独立開発11年目を迎えたこと、2.0リリースが2026年の主目標であったことなどを記した新年の投稿。

【編集部後記】

皆さんのお手元に、メーカーのサポートが終了して引き出しの奥に眠っているスマートウォッチはありませんか。ハードウェアとしてはまだ動くのに、ソフトウェアの都合で「使えない」とされてしまうのは、少しもったいない気がします。

AsteroidOSのようなプロジェクトは、そうした状況に対するひとつの答えかもしれません。皆さんは、デバイスの「寿命」は誰が決めるものだと思いますか。ぜひご意見をお聞かせください。

投稿者アバター
omote
デザイン、ライティング、Web制作を行っています。AI分野と、ワクワクするような進化を遂げるロボティクス分野について関心を持っています。AIについては私自身子を持つ親として、技術や芸術、または精神面におけるAIと人との共存について、読者の皆さんと共に学び、考えていけたらと思っています。

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