OpenAI、GoogleのChrome買収に意欲表明 – AIブラウザ時代の幕開けとなるか

[更新]2025年4月23日10:18

OpenAI、Googleのブラウザ買収に意欲表明 - AIブラウザ時代の幕開けとなるか - innovaTopia - (イノベトピア)

OpenAIのChatGPT製品責任者ニック・ターリー氏は2025年4月22日、米国ワシントンで行われているGoogleの独占禁止法違反訴訟の公判で、GoogleがChromeブラウザの売却を強いられた場合、OpenAIがこれを買収する意向があると証言した。

この発言は、米国司法省(DOJ)がGoogleに対して提案している救済措置の一環としてChromeブラウザの売却が検討される中で行われた。アミット・メータ判事は2024年、Googleがオンライン検索市場で独占的地位を持つと裁定しており、現在は救済措置を決定する段階に入っている。Googleはこの裁定に対して控訴する予定である。

ターリー氏は法廷で、Chromeを取得することでOpenAIは「素晴らしい体験を提供し、AIを中心としたブラウザがどのようなものかをユーザーに紹介することができる」と述べた。また、OpenAIはすでにChromeの開発に携わった元Google技術者ベン・グッジャー氏とダリン・フィッシャー氏を数ヶ月前に採用しており、独自のブラウザ開発も検討していたことが明らかになっている。

また、ターリー氏は2024年7月にOpenAIがGoogleに対し、ChatGPTでGoogleの検索技術を使用できるようにするためのパートナーシップを打診していたことも明らかにした。しかし、Googleは2024年8月にこの申し出を拒否した。その理由として、「統合には多くの競合他社が関わることになる」と説明したという。

現在ChatGPTはMicrosoftのBing検索エンジンの情報を利用しているが、ターリー氏は既存の検索プロバイダーとの間に「重大な品質問題」があったと証言した。

OpenAIは独自の検索インデックスの開発も進めているが、当初2025年末までにChatGPTの検索の80%にこの独自技術を使用する目標を掲げていたものの、ターリー氏の証言によれば、この目標達成には「数年かかる」見通しである。

ターリー氏によれば、ChatGPTは2025年2月時点で週間アクティブユーザー数が4億人を超えており、2025年4月には5億人に達している。また、OpenAIはAppleのiPhoneとの統合に成功したが、Googleが2025年1月からAndroidメーカーにGemini AIアプリをプリインストールする対価を支払っているため、SamsungなどのAndroidメーカーとの交渉が進んでいないとも証言した。

米国司法省はGoogleに対し、Chromeの売却に加え、AppleなどとのSearch関連契約の禁止や、競合他社への検索データアクセス許可なども提案している。また、他の救済措置が効果的でない場合はAndroidの売却も検討するよう求めている。

from:OpenAI tells judge it would buy Chrome from Google

【編集部解説】

OpenAIのChatGPT製品責任者ニック・ターリー氏が、GoogleがChromeブラウザの売却を強いられた場合に買収する意向を示したことは、単なる発言以上の重要な意味を持っています。この発言は、AI企業が将来のインターネット体験をどのように形作ろうとしているかを示す重要な手がかりとなっています。

ターリー氏は法廷で、Chromeを取得することで「素晴らしい体験を提供し、AIを中心としたブラウザがどのようなものかをユーザーに紹介することができる」と述べました。この発言からは、OpenAIがAIアシスタントの枠を超えて、ユーザーのウェブ体験全体を再定義しようとする野心が見て取れます。

実は、OpenAIはすでにブラウザ開発に向けた準備を進めていたことが明らかになっています。TechCrunchの報道によれば、OpenAIは数ヶ月前に、Chromeの開発に携わった元Google技術者ベン・グッジャー氏とダリン・フィッシャー氏を採用していました。これは、OpenAIがChromeに対抗するブラウザの開発を検討していたことを示しています。

現在のAI競争は、単なる検索エンジンやチャットボットの枠を超え、ユーザーがデジタル世界とどのように接するかという根本的な部分にまで及んでいます。Chromeブラウザは世界のブラウザ市場シェアの約66.6%を占めており、世界中に約37億人のユーザーがChromeを利用していると推定されています。この巨大なユーザー基盤を獲得することは、OpenAIにとって戦略的に非常に重要な意味を持ちます。

また、OpenAIとGoogleの関係についても興味深い事実が明らかになりました。OpenAIは2024年7月にGoogleに対し、ChatGPTでGoogleの検索技術を使用できるようにするためのパートナーシップを打診していましたが、Googleは2024年8月に「統合には多くの競合他社が関わることになる」という理由でこれを拒否しています。

現在ChatGPTはMicrosoftのBing検索エンジンの情報を利用していますが、ターリー氏は「Provider No. 1」と呼ばれる企業との間に「重大な品質問題」があったと証言しました。この「Provider No. 1」がMicrosoftを指すと考えられますが、具体的な名前は挙げられていません。

OpenAIが独自の検索インデックスの開発も進めている点も重要です。当初は2025年末までにChatGPTの検索の80%にこの独自技術を使用する目標を掲げていましたが、ターリー氏の証言によれば、この目標達成には「数年かかる」見通しとのことです。これは、高品質な検索技術の開発がいかに難しいかを示しています。

ChatGPTのユーザー数も急速に増加しており、2025年2月時点で週間アクティブユーザー数が4億人を超え、4月には5億人に達しています。また、OpenAIは2025年4月に300億ドル(約45兆円)の企業価値評価で400億ドル(約60兆円)の資金調達を行い、テクノロジー分野で史上最大の民間資金調達となりました。

この事案は、AI企業と検索エンジン大手の関係性、そしてウェブブラウザ市場の未来に大きな影響を与える可能性があります。GoogleのChromeブラウザがOpenAIに売却された場合、AIを中心としたブラウザ体験という新たな方向性が示される可能性があり、私たちのインターネット利用体験は大きく変わるかもしれません。

さらに、米国司法省がGoogleに対して提案している救済措置には、Chromeの売却だけでなく、AppleなどとのSearch関連契約の禁止や、競合他社への検索データアクセス許可なども含まれています。特に注目すべきは、GoogleがAppleに対して2022年に200億ドル(約30兆円)を支払い、SafariのデフォルトSearch engineになる権利を得ていたという事実です。

このような巨額の独占的契約が禁止されれば、検索市場の競争環境は大きく変わる可能性があります。また、司法省は他の救済措置が効果的でない場合、Androidの売却も検討するよう求めています。

テクノロジー業界におけるこの重要な転換点は、私たちが日常的に使用するデジタルツールの未来を左右する可能性があります。AIを中心としたブラウザ体験は、情報へのアクセス方法を根本から変える可能性を秘めています。検索からブラウジング、コンテンツ消費に至るまで、AIがシームレスに統合された新しいウェブ体験が生まれるかもしれません。

一方で、特定の企業による技術の独占は、イノベーションを阻害する可能性もあります。世界経済フォーラム(2023年)によれば、政策立案者の68%が、規制されていないAI独占は世界的なイノベーションと公平なアクセスに重大な脅威をもたらすと考えています。米国司法省の取り組みは、テクノロジー市場における健全な競争環境を維持するための重要な試みと言えるでしょう。

今後の裁判の行方によっては、テクノロジー業界の勢力図が大きく塗り替えられる可能性があります。私たちinnovaTopiaは、この動向を注視し続け、テクノロジーの進化がもたらす可能性と課題について、読者の皆様に最新の情報をお届けしていきます。

【用語解説】

OpenAI
サンフランシスコに拠点を置く人工知能研究開発企業。ChatGPTなどの革新的なAIモデルを開発している。2015年に設立され、当初は非営利組織だったが、現在は営利部門と非営利部門を持つハイブリッド構造となっている。2025年4月には300億ドルの企業価値評価で400億ドルの資金調達を行い、テクノロジー分野で史上最大の民間資金調達となった。

ChatGPT
OpenAIが開発した対話型AI。ユーザーの質問に対して人間のような自然な会話で回答する。2022年11月に公開され、急速に普及した。2025年4月時点で週間アクティブユーザー数は5億人に達している。

Google Chrome
Googleが開発・提供しているウェブブラウザ。世界のブラウザ市場シェアの約66.6%を占める主要ブラウザである。世界中に約37億人のユーザーがいると推定されている。Androidスマートフォンにはプリインストールされている。

米国司法省(DOJ)
アメリカの行政機関で、日本の法務省に相当する。独占禁止法違反などの訴訟を担当する。2025年2月からはパム・ボンディ氏が司法長官を務めている。

アミット・メータ判事
今回のGoogle独占禁止法訴訟を担当する連邦地裁判事。オバマ政権時代の2014年12月に任命された。1971年にインドのグジャラート州で生まれ、1歳の時に両親と共に米国に移住した。

独占禁止法(反トラスト法)
市場における公正な競争を確保するための法律。企業の独占的行為や不当な取引制限を禁止している。米国の主な独占禁止法は、1890年のシャーマン法、1914年のクレイトン法、1914年の連邦取引委員会法である。

【参考リンク】

OpenAI外部)
OpenAIの公式サイト。ChatGPTやDALL-Eなどの革新的なAIモデルを提供する企業。

Google Chrome(外部)
Googleが提供する世界シェアNo.1のウェブブラウザ。高速で安全なブラウジング体験。

【参考動画】

【編集部後記】

AIとブラウザの融合が現実味を帯びてきました。みなさんは普段どのブラウザを使っていますか?もしOpenAIがChromeを買収したら、検索からブラウジングまでAIが一体化した新しいウェブ体験が生まれるかもしれません。世界のブラウザ市場の約66.6%を占めるChromeが、AIを中心としたプラットフォームに変わることで、私たちのインターネット利用はどう変わるでしょうか?また、特定企業による技術の独占について、どのようにお考えですか?SNSでぜひ皆さんの考えをシェアしてください。テクノロジーの未来を一緒に考えていきましょう。

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TaTsu
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