Microsoft社は2025年7月23日、Windows 11向けの複数のAI機能を発表した。すべてのWindows 11ユーザーがCopilotアプリ経由でCopilot Visionにアクセス可能となる。
この機能は画面上の複数のアプリやWebページの内容を音声で質問できる。既に2025年7月15日からWindows Insiderプログラム参加者向けにデスクトップ共有機能付きのCopilot Vision on Windowsが提供開始されており、2025年6月13日には米国でCopilot Vision on Windows with Highlightsが正式リリースされている。
Snapdragon搭載のCopilot Plus PCユーザーは設定アプリ内のAIエージェントを利用でき、「サイレント時間を有効にしたい」などの自然言語で設定を検索できる。Click to Do機能も強化され、Reading Coachツールでの読み練習、Microsoft WordでのCopilot文書作成、Teamsミーティング設定が可能となる。
Copilot Plus PC限定機能として、PaintのAIステッカージェネレーター、オブジェクト選択ツール、PhotosのAIライティング機能、Snipping Toolの完璧なスクリーンショット機能が提供される。これらの機能は来月にかけて段階的に展開される予定である。
From: Windows 11’s new update will add a bunch of AI features
【編集部解説】
今回のWindows 11のAI機能大型アップデートは、既に段階的に展開されているCopilot Vision機能の完全版リリースという位置づけになります。実際に2025年6月から米国で正式提供が開始され、7月中旬からはInsider向けにデスクトップ全体共有機能が追加されており、今回の発表はその集大成といえるでしょう。
技術進化の段階的展開
Copilot Visionの進化は三段階で進行しています。第一段階として2025年6月13日に米国でCopilot Vision on Windows with Highlightsが正式リリースされ、最大2つのアプリを同時認識する機能が提供されました。第二段階として7月15日にはWindows Insiderプログラム参加者向けにデスクトップ全体共有機能が追加され、画面上のあらゆる要素をAIが解析できるようになりました。そして今回の発表が第三段階として、これらの機能を全ユーザーに展開する完全版リリースとなります。
この段階的アプローチにより、Microsoftは実用性とプライバシー保護のバランスを慎重に検証しながら機能拡張を進めています。特に画面全体をAIが監視する機能については、Insider向けテストを通じて安全性を確認した上での一般展開となっている点が重要です。
ハードウェア戦略の明確化
Copilot Plus PCへの機能集中は、AI処理に必要なNPU(Neural Processing Unit)の重要性を示しています。従来のCPUやGPUでは処理しきれないリアルタイム画面解析や複数アプリ同時認識には、40TOPS以上の処理能力を持つ専用チップが不可欠となります。
この戦略により、企業や個人ユーザーは高度なAI機能を活用するために新しいハードウェアへの投資を検討することになります。特にSnapdragon搭載デバイスへの機能集中は、IntelやAMDとは異なる競争軸を作り出しています。
プライバシー管理の現実的課題
画面全体をAIが監視する機能には、当然ながらプライバシーに関する実用的な課題があります。現在の実装では、ユーザーがタスクバーのメガネアイコンをクリックして明示的に画面共有を開始する必要があり、終了も同じアイコンで可能となっています。
しかし、企業環境では機密情報の表示中に誤って機能を有効化するリスクが懸念されます。IT部門は新たなセキュリティポリシーの策定と、従業員への教育プログラムの実施を検討する必要があるでしょう。
国際展開の現状と課題
現時点でCopilot Vision機能は米国でのみ正式提供されており、日本を含む他地域への展開は「順次ロールアウト予定」とされています。これは各国の規制要件やプライバシー法への対応が必要なためと考えられます。
特にEUのGDPRやカリフォルニア州のCCPAなど、データ保護規制の厳しい地域では、AI機能の展開に慎重な検証が必要となります。日本での本格展開時期は、これらの規制対応の進捗に大きく依存することになるでしょう。
競合環境への長期的影響
この発表により、GoogleやAppleも同様の画面解析機能の開発を加速させる可能性があります。特にAppleは次期macOSでSiriの画面認識機能強化を検討していると予想されます。
ChromeOSを展開するGoogleにとっては、教育市場での競争激化が予想されます。Windows 11の教育支援機能が充実することで、学校や大学でのOS選択基準が変化する可能性があります。
技術トレンドの方向性
今回のアップデートは、「Contextual AI(文脈理解AI)」という新しい技術カテゴリの実現を示しています。AIがユーザーの作業環境全体を理解し、最適なタイミングで支援を提供するという概念が現実化しつつあります。
5年後のコンピューティング環境では、現在のようなアプリケーション単位の操作から、AIが複数のアプリケーションを横断して作業を代行する形が主流になると予想されます。その基盤技術が、今回発表されたCopilot Vision機能群なのです。
【用語解説】
Copilot Vision on Windows with Highlights
2025年6月に米国で正式リリースされたAI機能。画面上の内容をリアルタイムで認識し、重要な箇所を自動的にハイライト表示する。最大2つのアプリを同時に認識可能。
Windows Insider Program
Microsoftが提供するベータテストプログラム。新機能の先行体験が可能で、今回のCopilot Visionデスクトップ共有機能も2025年7月15日からInsider向けに提供開始された。
NPU(Neural Processing Unit)
AIや機械学習の処理に特化した専用チップ。Copilot Plus PCでは40TOPS以上の処理能力を持つNPUが搭載されており、リアルタイム画面解析に必要。
Click to Do
Windowsキーを押しながら左クリックで表示される機能。画面上の要素に対してAIが提案するアクションを素早く実行できる。
【参考リンク】
Microsoft Copilot(外部)
Microsoftが提供するAIアシスタントサービスの公式サイト。Copilot Visionの最新情報や利用方法が掲載されている。
Microsoft Copilot+ PC(外部)
AI機能に特化したWindows PCシリーズの公式ページ。NPU搭載による高性能AI処理の詳細情報を提供している。
Windows Insider Program(外部)
Microsoftの新機能を先行体験できるベータテストプログラム。Copilot Vision機能の最新アップデートを最初に体験可能。
【参考動画】
Mike Tholfsen氏によるCopilot Visionの使用方法を解説した公式チュートリアル動画。画面共有によるAIとの対話やOneNoteでの数学問題解決例を紹介している。
【参考記事】
作業に行き詰ったら「助けてCopilot」、デスクトップをCopilotに見せておしゃべりできる「Copilot Vision on Windows」が強化(外部)
2025年7月15日にWindows Insider向けに提供開始されたデスクトップ全体共有機能について詳細に報告。
AIが画面を見ながら作業をお手伝い。Copilot Visionが正式提供開始(外部)
2025年6月13日の「Copilot Vision on Windows with Highlights」正式リリースを報告。
マイクロソフト、「Copilot Vision」にデスクトップ共有機能を追加(外部)
Windows Insider向けデスクトップ共有機能の追加について、技術的背景と今後の展開予定を詳しく解説。
【編集部後記】
Windows 11の新AI機能発表を受けて、皆さんはどのような感想をお持ちでしょうか?実は私たちも、この技術がどこまで日常の作業を変えるのか、完全には予測できずにいます。
特に興味深いのは、既に一部のInsiderユーザーが実際にデスクトップ共有機能を体験しているという点です。もしご利用経験がある方がいらっしゃいましたら、実際の使用感や便利だった場面、気になった点などをぜひ教えてください。
また、プライバシーへの懸念や、職場での導入について悩んでいる方も多いかと思います。このような新技術との向き合い方について、皆さんと一緒に考えていければと思います。