Midjourney、Warner Bros.からバットマン等キャラクター無断生成で著作権侵害訴訟

[更新]2025年9月5日17:43

Midjourney、Warner Bros.からバットマン等キャラクター無断生成で著作権侵害訴訟 - innovaTopia - (イノベトピア)

AI画像・動画生成企業Midjourneyが、Warner Bros. Discovery、DC Comics、Cartoon Networkから著作権侵害で訴訟を起こされた。

Warner Bros. Discoveryは木曜日に訴訟を提起し、Midjourneyがバットマン、スクービー・ドゥー、バッグス・バニーなどのキャラクターを使った画像生成を許可していることが著作権保護を侵害していると申し立てている。

この訴訟は今年に入ってディズニーとユニバーサルが起こした類似の訴訟に続くものである。Warner Bros. Discoveryは申し立て書で「Midjourneyは自らが法の上にいると考えている」と述べ、同社が著作権所有者に対する保護を提供していないと主張している。

訴訟では、Midjourneyが動画生成モデルのリリース後、最初の数日間でユーザーがキャラクターとのシーンをアニメーション化することを停止させたが、後に制限を解除したことも証拠として挙げられている。6月にはディズニーとユニバーサルがMidjourneyを「果てしない盗作の穴」として訴えていた。Warner Bros. Discoveryは同じ法律事務所に代理されている。

CNETの親会社Ziff Davisも4月にOpenAIを訴えている。

From: 文献リンクAI Firm Midjourney Faces Copyright Lawsuit by Warner Bros., DC Comics and Cartoon Network

【編集部解説】

今回のWarner Bros. DiscoveryによるMidjourney提訴は、実は業界全体で見ると氷山の一角に過ぎません。2025年は「AI著作権元年」とも呼べる状況です。

最も注目すべきは、今回の一連の訴訟が「商業利用」を前提としたプラットフォームへの挑戦である点です。Midjourneyは数百万人の有料購読者を抱え、月額$10から$120のサブスクリプションサービスを提供しており、無料オープンソースソフトウェアに対する問題提起ではありません。これにより、商業的利益を得ながら著作権を侵害しているという構図が鮮明になっています。

技術的な観点で興味深いのは、Midjourneyが動画生成機能を一時的に制限した事実です。リリース直後にキャラクターのアニメーション生成を停止し、その後制限を解除したという一連の動きは、同社が著作権リスクを認識していた証拠として法廷で争われることになります。

Warner Bros. Discoveryが訴訟で提示した比較画像では、MidjourneyによるScooby-Dooの再現画像が、首輪の色や毛色に至るまで元のキャラクターと酷似していることが示されています。同社は「classic comic book superhero battle」といった汎用的なプロンプトでも、バットマンやフラッシュが生成されることを問題視しています。

Warner Bros. Discoveryの経済的権益も大きな争点です。同社が所有するDC Extended Universe映画シリーズは、2018年から2023年の間に全世界で70億ドル以上の興行収入を記録し、1作品あたり平均4億7900万ドルを稼いでいます。

業界全体で見ると、AnthropicとMetaが著者による書籍を用いたAI訓練について「フェアユース」として勝訴した判決もあり、今回のMidjourney訴訟にも影響を与える可能性があります。一方で、各社は「AIのための損害賠償は1件の侵害につき最大15万ドル」を求めており、これは従来の著作権侵害訴訟の水準を大きく上回っています。

将来への影響として考慮すべきは、この問題がクリエイティブ業界の根幹に関わることです。AI技術によって誰でも高品質な画像や動画を生成できるようになった一方で、その源泉となる創作物への対価が支払われない構造が生まれています。これは長期的にクリエイターの創作意欲や収益機会に深刻な影響を与える可能性があります。

規制面では、米国だけでなく世界各国がAI利用における著作権保護の枠組み作りを急いでおり、この訴訟の結果は国際的なルール形成にも大きな影響を与えることが予想されます。

【用語解説】

Midjourney:サンフランシスコを拠点とするAI画像・動画生成サービス企業。David Holz氏により設立され、Discordボット形式で運営している。テキストプロンプトから高品質な画像や動画を生成する生成AI技術を提供する。

レッドチーミング(Red Teaming):技術企業が使用する安全性評価プロセス。AIシステムの脆弱性や問題点を発見するため、意図的にシステムを攻撃・悪用しようとするテスト手法である。

フェアユース(Fair Use):米国著作権法における重要な概念。教育、研究、批評、報道などの目的で著作権のある作品を限定的に使用することを認める例外規定。AI学習における利用可否が現在争点となっている。

Warner Bros. Discovery:米国の大手メディア・エンターテイメント企業。Warner Bros.とDiscoveryが2022年に合併して誕生。映画、テレビ、ストリーミングサービスを運営する。

【参考リンク】

Midjourney公式サイト(外部)
AI画像生成サービスMidjourneyの公式ウェブサイト。月額$10〜$120でサービス提供

Warner Bros.公式サイト(外部)
米国の大手映画・エンターテイメント企業Warner Bros.の公式サイト

DC Comics公式サイト(外部)
DC Comicsの公式デジタルコミック配信サービス。バットマン等数千作品配信

Cartoon Network公式サイト(外部)
ワーナーグループのアニメーション専門チャンネル。子供向けアニメ番組を中心配信

Ziff Davis公式サイト(外部)
デジタルメディア企業でCNETの親会社。テクノロジー分野メディアブランド運営

【参考記事】

Warner Bros Discovery sues AI photo generator Midjourney(外部)
Reuters社による今回の訴訟報道。1件の侵害につき最大$150,000の損害賠償内容

Warner Bros. Discovery sues AI firm for Batman, Superman(外部)
Los Angeles Times社の詳細報道。DC映画シリーズの70億ドル興行収入等数値情報

Warner Bros. Joins Studios’ AI Copyright Battle(外部)
Variety誌による業界分析記事。汎用プロンプトでもキャラクター生成される具体事例

画像生成AI・Midjourneyに対する著作権侵害訴訟(外部)
日本のGIGAZINE による報道。ディズニーの「盗作の無限販売機」表現等日本読者向け視点

Warner Bros. Discovery Claims Midjourney Infringed Copyright(外部)
Deadline Hollywoodによるエンタメ業界視点の分析。数百万人サブスクリプション利用者情報

【編集部後記】

今回のMidjourney訴訟の報道を見ていて、みなさんはどのように感じられましたか?私たちも普段、SNSの投稿やブログの画像作成でAI生成ツールを使うことが増えています。便利さを実感する一方で、今回のような著作権問題が起こると「使っても大丈夫なのかな?」と不安になりませんか?

AI画像生成技術は確実に私たちの創作活動を変えつつあります。同時に、クリエイターの権利をどう守っていくかという根本的な課題も浮き彫りになっています。

みなさんは、AIツールと既存の創作者の権利のバランスについて、どのような未来が理想的だと思われますか?また、普段AI生成サービスを使う際に、どんな点に注意されているでしょうか?ぜひSNSで教えてください。一緒に考えていきましょう。

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TaTsu
『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。

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