前回に引き続き、弘栄ドリームワークス様(https://koeidreamworks.jp/)の記事になります。
今回は代表取締役社長である菅原康弘さんにインタビューさせていただきました。菅原さんは物理学のバックグラウンドやソフトウェア開発の経験があり、全く未経験のロボットや施工の分野に進んだバックグラウンドを持っています。
今回は菅原さんに配管くんができるまでと、菅原さんの素敵な人柄について紹介できればと思います。

野村「菅原さんも物理学を元々やられていたんですね。僕も大学では物理学に近いことをしていたんです」
菅原「そうなんですね。どんなものを扱っていたんですか」
野村「主に分子ですね」
菅原「デカいなあ(笑)。俺は原子核だったよ。加速器とかやってましたね」
野村「未経験者で色んなバックグラウンドの人が社内のほとんどって話がありましが、本当にそうなんですね」
野村「そういえば、こことは他の取材で、加速器の研究所に行ってきたのですが、土木工事が費用の大部分って聞いたことがあります。配管もそうですよね。最後は人と確かな技術ですよね。それだけは最後まで省略できないというか」
菅原「本当に最後は人ですね」
配管くんが生まれるまで
野村「70年前からある企業が突然ロボットの研究開発をするってなると、周りからいろんな反発とかを招かなかったのですか?」
菅原「2010年に船橋が会長が就任したときに、ロボット作るぞって言ったら周りの役員から『何考えてんだ』『馬鹿言ってんじゃねえ』とか言われたらしいですね。会社のために、会長は色々な改革を提案するのですが、やっぱり基本は反発がありましたね」
野村「どこもそうなんですね」
菅原「この時、僕は周りの意識とか何もわからないまま、配管くんの新規事業に関わって、少人数で仕事を進めていました。今思えば、干渉されずに新しい人と外部の人でいいサイクルを回すことができたのかなというところがあります」
野村「7年間かかっている中で、周りからの新しいビジネスに対する理解ってどう進みましたか?」
菅原「新規ビジネスなので去年やっと黒字になったんです!5年間ずっと赤字だったんですよ。市場創造って今までないものを作るので、あまりお金を出してくれなかったんですよね。いまだに『は?』っていう人もいるんですよ。一昨年ぐらいから、いいねって言ってくれるお客さんや社員さんも増えてきたんですよね」
野村「一昨年から反応が良くなった。それはなぜですか?」
菅原「よくわからないですが、潮目が変わったからですね。いまだにってところは無視してます。というよりも気にしていたらキリがなくて、、、」
野村「鈍感力って必要なんですね」
菅原「新しいことをするうえで鈍感力って必要だと思いますね。」
これからの配管くん
菅原「最近はAIを使った画像認識で、いろいろなことを配管君でできないかなって考えています。ただ正誤のデータをなかなか取りにくかったり綺麗なデータを取れたとしても、そのせいでお客さんの営業時間を長くしたら困るなとかで試行錯誤中です。整ったデータってすごく少なくて困っています」
野村「分かります。案外成型済みのデータってなくて膨大なデータをまずは整えるところから統計って始まりますよね。学習データはさらに大量のデータ数が必要なので難しいですね」
菅原「今は配管くんでデータマネジメントをして、次の手を打とうとして一生懸命データをとろうとしています。マップにしても何にしてもいろんなことができるのではないかと期待しています。まだそこまではできていないですが、実現したいです」
野村「そこまで来たら、国全体の配管問題が解決しそうですね。『国を挙げて配管くん導入!』ってなったらいいですね」
菅原「そうなれば、文章データの電子化にもつながるかと思います。役所仕事はいまだに見てて紙が多くて、そうなるとデータを整えるって膨大な作業量がかかって未だにアナログなところはあると思います」
菅原「個人的な意見なのですが。世の中の人って、データをとられることに少し拒否反応がありますね」
野村「すごくわかります。データは会社の財産ですしね。易々と開示したくない人はいるのではないでしょうか」
菅原「そうなると。規格化されていない世の中の方が幸せなのではとか思っちゃいますね。難しいですね」
基礎研究→社会実装ならではの苦労
野村「7年間研究していく中で一番つらかった時期っていつですか?」
菅原「いや~ずっとつらかったな(笑)。2019年に始めて、そこから2020年にコロナのせいでやろうと思っていたことができなくて、、、これがつらかったですね。開発も止まってしまって。あと、イレギュラーじゃない面でいうと、市場創出って本当に大変で。最初のうちは売っても売っても何の反応もなくて、2021年ぐらいが本当につらかったかなあ。大変だったことよりも大変だった時期のことの方が印象深いですね」
野村「市場を作るって、既存のビジネスって0から1を作るわけで、その中での特有の大変さって何ですか」
菅原「何もかも大変でしたよ(笑)。反省点としては私たちも下手くそだったなって思います。ユーザー目線で『こういう風に使ってください』って営業が出来てなくて、いつも製品のことばかり説明してしまって。そこが営業がうまくいかなかった原因なのかなと思います、本当は『これを使うと貴方ににこんないいことがあります』っていうのが営業だなと気づくまで時間がかかりました」
野村「確かにどんなに性能が良くても、要らないとほしくないですね」
菅原「料理と同じで、『これが食べたい』とか言われているのに、手の込んだ料理ばかり作って能書きを垂れていたというかそんな状態でした」
野村「これに気づいたのはいつですか?」
菅原「たぶん実際に使ってもらって試しに使ってもらったときに、『ありがとうございました』って言われたときとかですね。お客さんが嬉しがってくれているのを見て、気づいたんですかね」
野村「『そうじゃん!客喜ばすのが仕事じゃん!』って気づいたんですね」
菅原「だからその瞬間から顧客にはロボットの話をしなくなりましたね。お客さんが欲しいのはロボットじゃなくてソリューションが欲しいので」
野村「この新しいソリューションに逆風を感じる瞬間ってありますか」
菅原「今もですね。何なら当たり前ですね。最近は実績がついて自信がついてきましたね。私たちは世界初の物を作っているという自負はありますね」
野村「大事ですね。どこかで心が折れたりしそうな時、何か支えとかありましたか?」
菅原「社会的意義ですね。人類にとって必ず財産になるというか。あとは、さっきの(記事上部URL参照)健康診断の話がそうですけれども、分煙って30年前はない概念でしたね。それはあの当時にJTが分煙とか言っても総すかんだったと思うんですけど、今は違いますよね。それってやっぱり世の中にとっていい話だよねというところがあって、配管くんもそのうち言葉が浸透すれば見方も変わると思います」
配管くんの生みの親ってどんな人たち?
野村「ロボに詳しい人っていたり研究部署のバックグラウンドはどのような方が集まりましたか?」
菅原「車に搭載する機器のメーカーさんとかとやり取りしている。とかそういうバックボーンはありましたね。一応ものつくりのできる人はいたりしましたね。とはいえ、とにかくトライアンドエラーでした」
野村「配管君って上水道の点検とかもできたりするんですか?」
菅原「上水道は配管そのものも細いし、衛生基準の問題や製品の品質についても結構大変でその内というところですね」
野村「研究って楽しくてつらいですけど、研究をしていく中で一番感動した瞬間っていつですかね」
菅原「なんだろうなあ。やっぱり現場で動いた時ですね。実際に図面ができていたりそういうソリューションとして機能したときですね。やっぱり現場で使えてナンボですからね。」
野村「なるほどです」
菅原「お客さんの前で動きませんでしたとか結構あったりして、、、」
野村「それは焦りますね(笑)」
野村「現場にずっと目が向いてて、それが配管くんという技術につながっていたんですね」
菅原「料理と同じですね。やっぱり誰かがおいしいって言ってくれた時の方がうれしいですね。やっぱりユーザーさんからしたらプロダクトが起こす結果にしか興味なくてプロダクトそのものには興味がないというのはそうですね」
野村「なるほどわかります。これが真実の部分があるのかもですね。エンジニアリングをどんなに頑張っても営業がうまくいかないと人を喜ばせるのは難しいのかもですね」
菅原「色々やっていて思ったのが、エンジニアと営業の衝突ってどの会社でも常にあって、そういう時にちょうどいい立ち位置にいるのが大事ですね。」
菅原さんの実現したい世界
野村「最後に、菅原さんはどのような世界になったらうれしいとかありますか?」
菅原「シンプルな世の中になってほしいです。お腹が空いたら食べる。誰かが泣いていたら助ける。嬉しかったら笑う。そういうことがしにくい世の中だなと思うんですよね今って」
菅原「僕は高校生の時に『普通の人になりたい』って思っていたんですよね。普通って思ったよりも難しいんですよね」
野村「100個ぐらいあったら2個ぐらい普通じゃない自分の部分ってあるんですよね」
菅原「実は扇風機とかも使わないでうちわを使うようにしているんですよ僕。誰も賛同してくれないんですけどね。そういうことを言っていると老害って言われないか不安ですが」
野村「なるほどです。確かに『普通に』するって機械に頼らず、自分の手ができる範囲に生活を引き戻すってことかもしれないですね」
野村「扇風機の例もそうですが。個人の生活の上でそういう世界を作るための実践ってありますか?」
菅原「日々やっていることいっぱいあるけど、そういわれると思い浮かばないなあ。なんだろうなあ。ちゃんとしっかり考えることとか、目を見て人と話すとかですかね。なんだろうなあ。便利なものをなるべく使わないとかもそうですし、後は、人間らしい活動をしっかりするとか。本当にいろいろやっていますね」
日常を自分の手にひきもどす
菅原「昔は、30年ぐらい前は電話番号とかを300個ぐらい覚えていたんですよ。数字が好きで。ある時電話のプッシュ機能ができたときに使ったんですけど、頭に数字が入らなくなったかなり焦って、『やばい。便利なものは人をアホにするぞ』って思ったんですよ」
野村「確かに、思いっきり僕は携帯世代なので、友達の電話番号とかって俺知らないです」
菅原「便利な機能って弱者を救うのに使うのはいいんですけどね。CopilotとかAIとか便利なものを使ってないんですよね。意図しないように動いてほしくなくて、『俺が考えるから黙ってろよ!』『勝手に改行とかするな!』とか考えちゃいます」
菅原「自分が楽をすることはなるべくしないようにしてます。amazonとかもそうで、自分は楽ですけど配達員に負荷がかかっているじゃないですか。見えない場所にごみを捨てるようなもので目に見えるものがきれいに見えているだけというか。世の中にとって本当にいいのかなこれでとは思います。」
菅原「昔は必ず階段を上るときは必ず踵をつけて歩いたりしていましたね」
野村「おお、、、凄まじい徹底ぶりですね」
野村「どうしても僕は便利なものに頼って生活してしまいます。洗濯機を僕は使ってるのです菅原さんはもしかして、洗濯板で手洗いだったりするのですか?」
菅原「自分でも変だなあって思うけど、皿洗うの好きなんですよ。だから奥さんが食洗器を使うのに反対したりしていましたね、洗濯もシャツの襟とかは手もみしてますね。さすがに洗濯機は使いますが。手もみの方がきれいに洗えたりすると、こういう手間って大事なんだなって実感しますね」
菅原「EV車もそうだけど、便利なものに頼るってエントロピーを増大させている。トータルでは無駄では?って思っちゃうんですよね。だから自分の手の及ぶ範囲で自分で済ませることが大切なような気がしていますね」
【編集部後記】
上品な白髪と端正に着こなされたスーツ姿で、アナログ時代を彷彿とさせる細部への配慮が行き届いた装いと佇まいをお持ちの方でいらっしゃいました。温和な笑顔を絶やすことなく、終始気さくにご対応いただきました。この度は貴重なお時間を割いて取材にご協力いただき、誠にありがとうございました。
























