American Heart Association最新調査:心房細動患者の62%が未認知

[更新]2025年9月26日20:31

 - innovaTopia - (イノベトピア)

新たな米国調査により、心房細動(エー・フィブ、AFib)患者の62%が、診断されるまで自身がこの病気にかかっていることを認識していなかったことが明らかとなった。

アメリカ心臓協会は2025年9月3日(現地時間)に、「オリンジャー・グループ」と共同で行った全国規模のオンライン調査結果を発表した。対象は米国内におけるAFib患者770名と介護者430名を含む計1,200名で、調査は2025年1月から3月に実施された。心房細動は現時点で米国内で約600万人が罹患しているとされており、この数値は2030年までに約1,200万人まで倍増する見通しである。AFib患者の多くが診断前に平均して3つの症状を経験していた。

主な症状は不規則な心拍、動悸や息切れ、倦怠感、めまい、胸痛、失神である。危険因子には高血圧、家族歴、2型糖尿病、過去の心筋梗塞、肥満、加齢などが含まれている。AFibは適切な治療や生活習慣の見直しによって管理可能であり、患者や介護者は「MyAFibExperience.org」で支援を受けることができる。調査のスポンサーは「アメリカ脳卒中協会」と「HCAヘルスケア財団」である。

from:文献リンクNew research finds 62% of AFib patients were unaware of the condition before diagnosis | American Heart Association Newsroom

【編集部解説】

近年、心房細動の世界的増加は、アメリカだけでなく日本を含む全世界において顕著です。国際的な統計によれば、2021年時点の世界の心房細動・心房粗動患者数は推計約5,250万人で、今後も人口高齢化に伴いさらに増えることが予測されます。日本でも、明確な把握は難しいながらも年々患者数は増加の傾向にあります。

心房細動は、心臓が正常に収縮せず、震えるように動く不整脈のひとつです。自覚症状のないことも多いですが、主な症状には不規則な心拍や動悸、息切れ、めまい、胸痛、極度の疲労感などがあります。この病気により、血栓ができやすくなり、脳卒中リスクは通常の約5倍にも上昇します。また、心不全、認知症、突然死などにも関与するとされています。

診断の上で大きな課題となるのが、その症状のあいまいさと、発作が断続的に現れるためタイミングによっては心電図検査でも捉えにくい点です。そのため、確定診断には24時間ホルター心電図などの長期心電図記録が多く用いられています。しかし、こうした持続的な観察や医療機器へのアクセスは、医療環境や社会的要因による地域格差が大きいのが現状です。

世界的にも予防・診断・治療には多くの課題があります。特に所得格差や医療インフラの地域差によって、診断率・治療率に大きなバラつきが発生しています。脳卒中予防のための抗凝固薬管理や、アブレーション治療インフラの不足、早期発見や啓発活動の不十分さが指摘されています。

心房細動は、個人の健康リスクにとどまらず、社会的にも医療費の増大をもたらす疾患です。そのため、世界中で生活習慣の改善と、地域ごとに異なる医療リソースの配分も含めて、公正かつ十分な医療提供体制の整備と啓発・自己管理のサポートが重要視されています。

今回のアメリカ心臓協会の報告は、アメリカだけの現象という枠組みを超え、今後ますます重要性を増すグローバルな公衆衛生課題であることを私たちに示しています。

 【用語解説】

心房細動(Atrial Fibrillation, AFib):
心臓の心房が不規則に震え、脳卒中や心不全などのリスクを高める不整脈の一種。

抗凝固薬(Anticoagulant):
血液の凝固を防ぎ、血栓形成による脳卒中リスクを軽減する薬剤。

アブレーション治療(Catheter Ablation):
心房細動の原因となる心臓の部位を高周波などで焼灼し、正常なリズムに戻す治療法。

【参考リンク】

American Heart Association(外部)
心房細動の症状、予防、治療、啓発活動など幅広い公式情報を提供している米国最大の心疾患情報団体。

MyAFibExperience(外部)
AFib患者や介護者向けに体験談や情報交換ができるコミュニティ。米国心臓協会・脳卒中協会が運営。

StopAfib.org(外部)
患者・専門家による心房細動情報発信サイト。最新の治療、予防、管理方法について紹介。

HCA Healthcare Foundation(外部)
医療や福祉の支援事業を展開する米国財団。助成金や社会貢献の取り組みを紹介。

【参考動画】

【参考記事】

Global surge in serious heart rhythm disorders sparks urgent call to action from ESC | European Society of Cardiology
心房細動など重篤な不整脈の世界的増加傾向と予防・診断の重要性を解説する、欧州心臓病学会公式プレスリリース。

Atrial Fibrillation: Symptoms & Treatment | Cleveland Clinic
心房細動の症状、診断方法、治療手段を米国大手医療機関が分かりやすく解説。

Atrial fibrillation – Symptoms and causes | Mayo Clinic
心房細動の発症メカニズム、症状、リスク因子などを網羅した解説記事。

【編集部後記】

よく肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれることがあります。人間の肝臓は80%ほどを失っても、機能を保つことができるため、自覚症状が出にくいことを指しています。

ですが、意外と人の内臓はみな「沈黙」しているものです。私たちは手足を動かすときのような意識をしなくても、絶えず呼吸が行われ、血は全身を巡り、食べたものは消化されています。

そして、基本的に内臓には「痛覚」がありません。内臓の異変が周りの筋肉などを通る神経などに影響を及ぼして、初めて痛みを感じるのです。疲労感や些細な体調の変化を加齢のせいだと軽視していると、実は大きな病気の兆候だったということは珍しくないのです。

この機会に、精密な健康診断を受けてみてはいかがでしょうか。

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りょうとく
趣味でデジタルイラスト、Live2Dモデル、3Dモデル、動画編集などの経験があります。最近は文章生成AIからインスピレーションを得るために毎日のようにネタを投げかけたり、画像生成AIをお絵描きに都合よく利用できないかを模索中。AIがどれだけ人の生活を豊かにするかに期待しながら、その未来のために人が守らなけらばならない法律や倫理、AI時代の創作の在り方に注目しています。

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