サポート終了―その日まで、もう15日しかありません。
多くのユーザーが「まだ普通に使えているのに、なぜ?」と疑問を抱く中、innovaTopiaではこの問題を継続的に追跡し、速報記事をお届けしてきました。しかし、サポート終了が目前に迫った今、当初は見えなかった重要な事実が明らかになっています。「無料で1年延命できる」はずのESUプログラムに、実は複数の選択肢と条件があったのです。
サポート終了を前に、もう一度情報を整理します
いよいよWindows 10のサポート終了が目前に迫り、多くの情報が出回っています。そこで今回は、これまでinnovaTopiaでお伝えしてきた情報を改めて整理し、皆さんがご自身の状況に合わせて次の一手を考えるための、シンプルな論点を提供できればと思います。
「まさか、そんな条件があるなんて」―ESU延命策の落とし穴
9月9日、innovaTopiaは希望に満ちた記事をお届けしました。
Windows 10 Home/Proユーザーを対象に、最初の1年間は無料でESU(拡張セキュリティ更新プログラム)を適用できるプログラムの提供が発表されました。これはWindows Updateを通じて簡単に登録でき、2026年10月13日までセキュリティ更新を受けられるようになります。
引用元: Windows 10に無料セキュリティアップデートを提供|OneDrive連携・ポイント交換・有料ESUの選択肢 (2025年9月9日公開)
多くの読者の方が「これで安心」と胸を撫で下ろしたことでしょう。しかし、その後の詳細調査で判明した事実は、決して楽観できるものではありませんでした。
ESUを無料で利用するには、以下の条件をすべて満たす必要があります:
- Microsoftアカウントでのログイン: 普段ローカルアカウントを使っている方は、アカウント作成または切り替えが必須
- 追加の”支払い”: 完全無料ではなく、以下のいずれかが必要
- OneDriveでPCの自動バックアップを有効化
- Microsoft Rewardsポイント1,000ポイントを消費
- 30ドルを支払う
- バージョン制限: Windows 10の最新版「22H2」のみが対象
「なんだ、結局何かしらのアクションが必要なのか」「OneDriveを使いたくない人はどうすればいいの?」―そんな声が聞こえてきそうです。Microsoftの発表は、確かに「無料オプションあり」と謳っていましたが、その実態はユーザーによる選択を伴うものだったのです。
想像以上に広がる”影響の輪”
8月30日の記事では、MicrosoftがWindows 11要件を満たさない約2.4億台のPCについて「使用中止を推奨」していることをお伝えしました。
約2億4000万台のアップグレード不可能なPCの使用中止とリサイクルを推奨しています。これらのデバイスはWindows 11に移行できないため、セキュリティリスクが高まります。
引用元: マイクロソフト警告:2億4000万台のPCが「デジタルの崖っぷち」に (2025年8月30日公開)
しかし、その後の調査で明らかになったのは、影響はWindows OSだけに留まらないということでした。
日常的に使っているあのアプリまで、具体的なサポート終了計画が発表され始めています。
- Microsoft 365(Word、Excelなど): Windows 10上でのセキュリティ更新は2028年10月まで継続されますが、機能更新は2026年後半に停止予定です。
- Google Chrome: 少なくとも法人向けESUプログラムに合わせて2028年10月まではサポートを継続すると発表しています。
- Zoom: OSサポート終了後の対応は未定ですが、セキュリティ上の理由から最新OSでの利用が推奨されます。
- プリンターなどの周辺機器ドライバー: メーカーは新OSへの対応を優先するため、Windows 10向けの新ドライバー提供は徐々に縮小される見込みです。
つまり、Windows 10が動いていても、その上で動くアプリや周辺機器が徐々に使えなくなっていく未来が具体的に見えてきたのです。さらに、システム全体の不安定化により、突然のクラッシュやデータ損失のリスクも増大します。これは、単なる「セキュリティの問題」を超えた、PCの基本的な実用性に関わる深刻な問題と言えるでしょう。
もう選択の余地は少ない
振り返ってみれば、この問題をinnovaTopiaで初めて取り上げた8月30日には、まだ1ヶ月半の時間がありました。9月9日の記事公開時でも1ヶ月。「まだ大丈夫」という空気が確かにありました。
しかし今日、2025年9月29日。残された時間は15日です。
新しいPCを選んで、購入して、データを移行して、環境を整える―。仮にWindows 11対応のPCへの買い替えを決断したとしても、もはや十分な準備期間は残されていません。多くのユーザーにとって、現実的な選択肢は事実上、ESUによる1年延命に絞られたと言ってよいでしょう。
今すぐできること、しなければならないこと
残り15日という限られた時間の中で、私たちができることを整理してみましょう。
【緊急対応】ESU登録への準備
まずは、10月14日以降も安全にPCを使うための最低限の準備です。
- 今すぐバージョンを確認: 設定→システム→詳細情報でWindows 10が「22H2」であることを確認してください。古いバージョンの場合は、まずアップデートが必要です。
- Microsoftアカウントの準備: ローカルアカウントしか持っていない方は、今すぐMicrosoftアカウントを作成し、PCにサインインできるようにしてください。
- 延命方法を決める: OneDriveでのバックアップ、Microsoft Rewardsポイント、現金支払いのいずれかを選択してください。
【中長期計画】1年間の猶予をどう活かすか
ESUで確保した1年間は、次のステップへの準備期間です。慌てず、じっくりと計画を立てましょう。
- Windows 11対応PCの検討: 予算と必要な性能を考慮し、来年の購入に向けて情報収集を始めてください。
- データバックアップ体制の強化: この機会に、重要なデータの保護体制を見直してください。
- 代替手段の学習: Linux系OSへの移行も視野に入れ、少しずつ知識を蓄積してください。
政府機関も警鐘を鳴らす深刻度
この問題の深刻さは、政府系機関であるIPA(情報処理推進機構)もWindows 10のサポート終了に関する注意喚起を行っていることからも明らかです。民間企業の決定が、社会インフラレベルでの対応を必要とする事態となっているのです。
【用語解説】
ESU(拡張セキュリティ更新プログラム):
Extended Security Updatesの略。OSの公式サポート終了後も、有償または条件付きでセキュリティ更新のみを提供し続けるMicrosoftのプログラムである。
Microsoftアカウント:
WindowsやOffice、OneDriveなどのMicrosoft製品・サービスを利用するために必要な個人用アカウント。メールアドレスとパスワードで管理され、複数のデバイス間でデータを同期できる。
OneDrive:
Microsoftが提供するクラウドストレージサービス。ファイルをインターネット上に保存し、複数のデバイスからアクセス・共有が可能。自動バックアップ機能も備える。
IPA(情報処理推進機構):
経済産業省所管の独立行政法人。正式名称は「独立行政法人情報処理推進機構」。日本のIT技術推進、情報セキュリティ対策、IT人材育成を担う公的機関である。
【参考リンク】
Microsoftアカウント (外部)
Microsoftの公式アカウント管理サイト。新規アカウント作成、サインイン、個人情報やセキュリティ設定の管理が行える。すべてのMicrosoft製品・サービスの入口となる重要なページである。
Microsoft OneDrive(外部)
Microsoftの個人向けクラウドストレージサービスの公式サイト。無料で5GBまで利用可能で、ファイルの自動バックアップや共有機能について詳しく解説している。
IPA 独立行政法人 情報処理推進機構(外部)
日本の情報処理技術とセキュリティ対策を推進する政府系機関の公式サイト。Windows 10サポート終了に関する注意喚起や、IT全般のセキュリティ情報を提供している。
Windows 10 拡張セキュリティ更新 (ESU)(外部)
Windows 10向けESUプログラムの公式情報ページ。無料・有料オプションの詳細、利用条件、登録方法について最新情報が掲載されている。
【編集部後記】
正直なところ、残り15日という状況で「今すぐWindows 11対応のPCを買いましょう」とは言えません。新しいPCを選んで、注文して、届くのを待って、セットアップして、データを移行して、使い慣れたアプリケーションを再インストールして…。これらすべてを安全に、確実に行うには、明らかに時間が足りないのが現実です。
だからこそ、多くの方にとって「まずは1年延命して、その間にゆっくり準備する」というのが最も現実的で賢い選択だと思います。OneDriveでのバックアップが条件なら、それはそれで重要なデータの保護にもなります。Microsoft Rewardsポイントをお持ちなら、それを活用するのも一つの方法です。
バックアップをしっかり取って、アプリの移行計画を立てて、新しいPCの情報収集をじっくり進める。そんな準備期間として1年間を使えれば、きっと満足のいく移行ができるはずです。焦って決断するより、ESUでワンクッション置いて、来年の春頃にベストなタイミングで新環境に移行する―そんなゆとりのあるデジタルライフの方が、結果的に良い選択になると思います。