Googleは2025年10月13日、NotebookLMのVideo Overviews機能に画像生成AI「Nano Banana」(正式名称Gemini 2.5 Flash Image)を統合すると発表した。この統合により、Video Overviewsに6つの新しいビジュアルスタイルが追加され、計7つのビジュアルスタイルからの選択が可能になる。

スタイルはClassic、Whiteboard、Watercolor、Retro print、Heritage、Paper craft、Animeで、自動選択オプションがデフォルトで有効になっている。また、従来のExplainerフォーマットに加え、要点のみを簡潔に伝える新しいBriefフォーマットが導入された。
これらの機能は今週からGoogle AI Proユーザー(月額20ドル)向けに全対応言語で展開が開始され、無料ユーザーへは数週間後に提供される予定である。なお、Nano BananaはGoogle LensやAI Mode経由でSearchにも導入される。
From: Google’s Nano Banana Brings More Visual Flair to NotebookLM’s Video Overviews
【編集部解説】
今回のアップデートで注目すべきは、GoogleがAI研究ツールの「マルチモーダル化」を本格的に推し進めている点です。NotebookLMは2023年の登場以来、テキストベースのノート整理や要約機能で評価されてきましたが、2024年9月にAudio Overviews(音声要約)、そして2025年7月にVideo Overviews(動画解説)が追加され、わずか3ヶ月でさらなる進化を遂げました。

Nano Bananaという愛称で知られるGemini 2.5 Flash Imageは、瞬く間にバイラル化した画像生成モデルです。従来の画像生成AIと比較して、編集指示に対する理解力と実行精度が高く、ユーザーが「バナナのように簡単」に扱えることからこの名前が付けられたと言われています。このモデルをNotebookLMに統合することで、学習資料や研究ノートが視覚的に大きく変貌します。
特に教育現場やビジネスプレゼンテーションにおいて、7つのビジュアルスタイルは用途に応じた使い分けを可能にします。例えば、Animeスタイルは若年層向けの教材作成に、Heritageスタイルは歴史的テーマのプレゼンテーションに適しているでしょう。Briefフォーマットの追加も重要です。従来のExplainerが包括的な詳細解説を提供するのに対し、Briefは核となるアイデアを簡潔に伝える選択肢が加わったことで、用途に応じた使い分けが可能になります。
一方で、AI生成コンテンツの信頼性という課題も浮上します。Video Overviewsは入力されたソース資料を基に動画を自動生成しますが、視覚的な演出が加わることで、情報の正確性よりも「見栄えの良さ」が優先される懸念があります。特に学術研究や専門的な分野では、装飾的なビジュアルが内容の本質を歪める可能性も否定できません。
Google AI Proユーザーへの優先展開という戦略も興味深い点です。月額20ドルの有料プランを先行提供することで、フィードバックを収集しながら段階的に品質を高める意図が読み取れます。無料ユーザーへの展開が「数週間後」とされていることから、日本国内でも11月中には広く利用可能になると予想されます。
長期的には、このようなマルチモーダルAIツールが知識労働のあり方を根本的に変える可能性があります。テキスト、音声、動画という複数の形式で同じ情報を瞬時に再構成できる能力は、学習スタイルの多様性に対応するだけでなく、情報のアクセシビリティを飛躍的に向上させるでしょう。
【用語解説】
NotebookLM
Googleが開発したAI搭載のノート作成・研究支援ツール。ユーザーがアップロードした文書やWebページなどのソース資料を分析し、要約、質問応答、アイデアの整理などを支援する。2023年にGoogle Labsプロジェクトとして公開され、2025年に大幅な機能拡張が行われた。
Video Overviews(動画解説)
NotebookLMの機能の一つで、アップロードされたソース資料を基にAIが自動的に解説動画を生成する。スライド形式のビジュアルと音声ナレーションを組み合わせ、複雑な内容を視覚的に理解しやすく提示する。
Audio Overviews(音声解説)
NotebookLMが提供する音声形式の要約機能。2人のAIホストが対話形式で資料の内容を解説する「Deep Dive」形式が特徴。ポッドキャスト風の自然な会話で情報を伝えるため、通勤時や作業中のながら聞きにも適している。
Gemini 2.5 Flash Image
Googleが開発した高速画像生成・編集AIモデル。「Nano Banana」という愛称で親しまれている。従来のモデルと比較して、ユーザーの指示に対する理解力と実行速度が向上しており、画像の細部編集や複雑な合成作業を簡単に実行できる点が特徴である。
【参考リンク】
NotebookLM公式サイト(外部)
GoogleのAI研究支援ツールの公式ページ。無料でアカウント作成が可能で、文書のアップロードから動画・音声解説の生成まで各機能を確認できる。
Google AI Blog – Video Overviews with nano banana(外部)
今回のアップデートを発表したGoogle公式ブログ記事。Nano BananaのNotebookLM統合に関する詳細な説明と新しいビジュアルスタイルのサンプルが掲載されている。
Google AI Blog – Nano Banana in Google Products(外部)
Nano BananaがSearch、Lens、Photosなど複数のGoogle製品に展開されることを発表した公式記事。各製品での具体的な使用方法と活用例を紹介している。
Google Workspace Updates – NotebookLM Studio Panel(外部)
NotebookLMのStudioパネルのアップデート情報を提供する公式ページ。Video Overviews機能の初期リリース時の詳細とインターフェース改善点を説明している。
【参考記事】
NotebookLM Video Overviews with nano banana(外部)
Google公式ブログによる発表記事。ユーザーからの多様なビジュアル表現への要望を背景に、7つの新スタイルとBriefフォーマットの導入目的を説明している。
NotebookLM Video Overviews add Nano Banana visual styles(外部)
Google専門メディアによる分析記事。Google AI Pro会員向けに今週から展開が始まる段階的ロールアウト戦略と各ビジュアルスタイルの使用例を詳説している。
Google’s Nano Banana AI image editing is coming to Search, NotebookLM and Photos(外部)
Engadgetによる包括的な報道。Nano BananaがNotebookLMだけでなくSearch、Lens、Photosにも同時展開されるGoogleのマルチモーダル戦略を分析している。
Google Unleashes Nano Banana in NotebookLM, Lens, Photos Soon(外部)
PC Magazineによる技術解説記事。Gemini 2.5 Flash Imageの処理速度と精度の向上により、教育分野やビジネスプレゼンテーションでの活用範囲が広がると予測している。
【編集部後記】
NotebookLMを使ったことがある方も、まだ試していない方も、今回のアップデートは一度体験してみる価値があると感じています。7つのビジュアルスタイルから選べるというのは、単なる見た目の問題ではなく、情報をどう受け取るか、どう記憶するかという学習スタイルの多様性に直結するからです。
私自身、Animeスタイルで生成された動画とClassicスタイルでは、同じ内容でも理解のしやすさが変わる体験をしました。みなさんは、どのスタイルが一番自分に合っているでしょうか。そして、このツールを使って、どんな資料を動画化してみたいですか。