Honorが「感情を持つカメラ」搭載スマホ発表、100億ドル投資で挑むAI戦略

honer - innovaTopia - (イノベトピア)

Honorは2025年10月15日、「Honor Robot Phone」と呼ばれるコンセプトスマートフォンを発表した。これは同社が今年3月に発表した100億ドル規模のAI戦略Alpha Planを具現化する後続のコンセプトとなる。

このデバイスの最大の特徴は、スマートフォン背面から展開するジンバル搭載のロボットカメラアームである。カメラアームは独立して動作し、スマートフォンをテーブルに平置きした状態でも複数のアングルから撮影が可能だ。

このコンセプトフォンはHonorのAlpha PlanというAI戦略の一環で、マルチモーダルインテリジェンスにより周囲の環境をスキャンし、分析して反応する。Honorはこのカメラアームを「感情的なコンパニオン」として位置づけており、詳細についてはバルセロナで開催予定のMobile World Congress (MWC) 2026で発表するとしている。

From: 文献リンクHonor’s concept phone includes an AI-powered camera arm that’s tailormade for vlogging

【編集部解説】

このHonor Robot Phoneが示すのは、スマートフォンカメラの概念そのものを再定義しようとする試みです。従来のポップアップカメラやフリップカメラは、単にレンズの位置を変えるだけの機構でした。しかし今回のロボットアームは、AIによる環境認識と組み合わされることで、撮影者の意図を理解し、自律的に最適なアングルを探すという新次元の機能を目指しています。

特筆すべきは「マルチモーダルインテリジェンス」の活用です。これは視覚情報だけでなく、音声や状況の文脈を総合的に理解する技術で、カメラが被写体の動きを予測したり、撮影シーンに応じた最適な構図を自動選択したりすることを可能にします。ティーザー映像で赤ちゃんとの「いないいないばあ」を演じているシーンは、単なる演出ではなく、AIが人間の感情や行動パターンを理解し、それに呼応する能力を暗に示しています。

vloggerやコンテンツクリエイターにとって、この技術は革命的かもしれません。現在、安定した映像を撮るにはDJI Pocket 3のような外部ジンバルが必要ですが、それがスマートフォンに統合されれば、機材の持ち運びや設定の手間が大幅に削減されます。自動追尾機能により、一人でのvlog撮影がより自然で高品質になる可能性があります。

しかし、懸念事項も無視できません。記事が指摘する耐久性の問題は重要です。可動部品が増えれば故障のリスクも高まり、防水性能の確保も困難になるでしょう。バッテリー消費も深刻な課題です。ジンバルの駆動、AIによる常時環境認識、カメラの自動追尾——これらすべてが同時に動作すれば、現行のスマートフォンより大容量のバッテリーが必要になります。

プライバシーの観点からも議論が必要です。常に周囲を認識し、人物を追跡するカメラを持ち歩くことは、意図せず他者のプライバシーを侵害するリスクを孕んでいます。特に公共の場での使用において、どのような制限やガイドラインが設けられるべきか、社会的な合意形成が求められるでしょう。

Honorが投じる100億ドルという投資額は、同社の本気度を示しています。これは単発のコンセプトデバイスではなく、AIエコシステム全体を構築する長期戦略の一環です。MWC 2026での詳細発表を経て、実用化に向けた具体的なロードマップが明らかになると予想されます。

この動きは業界全体に影響を与える可能性があります。AppleやSamsungといった大手メーカーも、AIとロボティクスの融合という新たな競争軸に対応を迫られるかもしれません。スマートフォンが単なる通信・撮影デバイスから、ユーザーの創作活動を能動的に支援する「パートナー」へと進化する——その転換点に私たちは立ち会おうとしているのです。

【用語解説】

vlogging(ブイロギング)
Video(動画)とBlog(ブログ)を組み合わせた造語で、日常生活や特定のテーマについて動画形式で記録・配信する活動を指す。YouTubeやTikTokなどのプラットフォームで人気のコンテンツ形式である。

マルチモーダルインテリジェンス(Multimodal Intelligence)
視覚、音声、テキストなど複数の異なる種類のデータを統合的に処理・理解するAI技術。人間のように複数の感覚情報を組み合わせて状況を判断できる。

MWC(Mobile World Congress)
毎年バルセロナで開催される世界最大級のモバイル関連技術の展示会。スマートフォンメーカーや通信事業者が最新技術や製品を発表する場として知られている。

Alpha Plan
HonorがAIエコシステム企業への変革を目指し、2025年3月に発表した長期的なAI戦略計画。今後5年間で100億ドルを投じることなどが含まれる。

【参考リンク】

Honor公式サイト(外部)
中国発のスマートフォンメーカーHonorの公式サイト。元Huaweiサブブランドで2020年に独立。製品情報を提供。

Honor Robot Phone コンセプトページ(外部)
Robot Phoneに関する公式情報を掲載。コンセプトデバイスの概要やティーザー映像を確認できる。

DJI公式サイト(外部)
ドローンやジンバルカメラで知られる中国企業。記事内で比較されているDJI Pocket 3を製造している。

【参考動画】

【参考記事】

Honor reveals a new smartphone with a fold-out robotic camera arm(外部)
Honorが100億ドルをAIエコシステムに投資する計画と、Robot Phoneの戦略的位置づけを解説。

Forget the DJI Pocket 4 – Honor’s ‘Robot Phone’ concept builds a gimbal-mounted camera into your smartphone(外部)
DJI Pocketとの比較を通じて、内蔵ジンバルがクリエイターにもたらす利点を分析。

Honor teases a curious AI-driven ‘Robot Phone’ with a flip-up camera(外部)
マルチモーダルAIの環境認識機能と、耐久性やバッテリー消費などの技術的課題を詳述。

Why is this concept phone packing a robot arm-mounted camera?(外部)
Robot Phoneがスマートフォン業界に与える影響と、AIとロボティクスの融合が描く未来を考察。

【編集部後記】

スマートフォンのカメラが「感情を持つコンパニオン」になる——この発想を、皆さんはどう受け止めますか。便利さとプライバシーのバランス、AIとの距離感について、正解はまだ誰も持っていません。

vlogを撮る方なら、このロボットアームがどれほど撮影を変えるか想像できるかもしれませんね。一方で、常に動くカメラに違和感を覚える方もいるでしょう。テクノロジーの進化は、私たち一人ひとりがどう向き合うかで未来が変わります。このニュースをきっかけに、あなた自身のスマートフォンとの関係を少し考えてみませんか。

投稿者アバター
omote
デザイン、ライティング、Web制作を行っています。AI分野と、ワクワクするような進化を遂げるロボティクス分野について関心を持っています。AIについては私自身子を持つ親として、技術や芸術、または精神面におけるAIと人との共存について、読者の皆さんと共に学び、考えていけたらと思っています。

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