Stellantis・NVIDIA・Uber・Foxconnが協業、2028年にロボタクシー5,000台展開を目指す

Stellantis・NVIDIA・Uber・Foxconnが協業、2028年にロボタクシー5,000台展開へ - innovaTopia - (イノベトピア)

Stellantisは2025年10月28日、NVIDIA、Uber Technologies、Foxconnとの協業を発表し、レベル4(無人運転)自律走行車をロボタクシーサービス向けに共同開発・展開する。

この協業では、StellantisがK0中型バンとSTLA Smallの自律走行対応プラットフォームを基盤に車両を設計・製造し、NVIDIAがNVIDIA DRIVE AGX Hyperion 10アーキテクチャとNVIDIA DRIVE AVソフトウェアを提供する。

Foxconnはハードウェアとシステム統合を担当し、Uberがロボタクシーサービスを運営する。Uberは世界の選定都市で5,000台のStellantis自律走行車を展開予定で、初期運用は米国で開始される。

量産開始は2028年を目標としている。この取り組みは、今月初めに発表された欧州でのPony.aiとの協業に続くもので、Stellantisのグローバルロボタクシー戦略を推進する。

From: 文献リンクStellantis Advances Global Robotaxi Strategy With New Collaboration With NVIDIA, Uber and Foxconn

【編集部解説】

今回のStellantisとNVIDIA、Uber、Foxconnの協業発表は、自動運転業界における複数の重要なシフトを示すニュースです。

まず注目すべきは、この提携が「レベル4自律走行」に焦点を当てている点です。レベル4とは、特定の条件下であればドライバーの介入なしに完全自動運転が可能な段階を指します。現在多くの車両に搭載されているレベル2やレベル2+の運転支援システムとは根本的に異なり、人間が常時監視する必要がありません。

技術的な核心となるのがNVIDIAのDRIVE AGX Hyperion 10アーキテクチャです。このシステムは安全認証を取得したNVIDIA DriveOSオペレーティングシステムと、レベル4自律走行専用に構築されたフルスタックNVIDIA DRIVE AVソフトウェア(NDAS)を統合しています。Stellantisの自律走行対応プラットフォームは、システムの冗長性、高度なセンサースイート、高性能コンピューティングなどのすべての主要コンポーネントを効率的に統合する設計となっています。

重要なのは、NVIDIAが生成AIやビジョン言語アクション(VLA)モデルといった最新のAI技術を自律運転に応用している点です。これにより、従来のルールベースのシステムでは対応困難だった予測不可能な人間の行動や複雑な都市環境での運転判断が、人間に近い推論能力で処理できるようになります。

Stellantisは10月中旬にPony.aiと欧州でのロボタクシー開発でも提携を発表しており、今回の協業はそれに続く動きです。これは同社が地域ごとに異なるパートナーと組む「マルチパートナー戦略」を採用していることを意味します。欧州ではPony.ai、グローバル展開ではNVIDIA・Uber・Foxconnという構図です。

Uberの役割も興味深いポイントです。同社は配車プラットフォームの運営者として、初期段階で5,000台の自律走行車を世界の選定都市に展開する計画です。これはStellantis製車両に関する数字であり、Uber全体としては2027年から2030年にかけて複数の自動車メーカーから合計10万台規模のロボタクシーを展開する大規模計画の一部を構成しています。2028年の量産開始を目標としており、これはテスラやWaymoといった既存プレイヤーとは異なるアプローチです。

ただし、業界レポートによれば、レベル4自律走行の大規模展開は当初の予測よりも遅れる見込みです。2035年時点でもレベル4機能を搭載する車両は販売台数のわずか4%程度と予測されており、技術的課題、規制、経済性の観点から慎重な展開が続くと考えられます。

今回の覚書は法的拘束力を持たないMoU(覚書)であり、各社は他の自律運転プロジェクトにも参加する柔軟性を保持しています。実際の量産と展開には、さらなる技術検証、規制当局との調整、安全性の実証が必要です。

この協業が実現すれば、自動車製造、AI技術、配車サービス、エレクトロニクス製造という異なる専門性を持つ企業が統合され、ロボタクシーという新しいモビリティサービスの基盤が構築されることになります。

【用語解説】

レベル4自律走行(Level 4 Autonomy)
自動運転技術の分類における段階で、特定の条件下(地理的エリアや天候など)であれば人間の介入なしに完全自動運転が可能なレベルを指す。レベル5が完全自動運転であるのに対し、レベル4は限定的な条件での完全自律走行を実現する。

ロボタクシー(Robotaxi)
自律走行技術を活用した無人タクシーサービス。ドライバーが不要なため、運用コストの削減と24時間稼働が可能となる。配車アプリで呼び出し、目的地まで自動運転で移動するサービス形態を指す。

AV-Ready Platform(自律走行対応プラットフォーム)
自律走行機能を搭載できるよう設計された車両プラットフォーム。センサー、コンピューティングシステム、冗長性のある制御システムなどを統合できる柔軟な設計が特徴。

MoU(Memorandum of Understanding / 覚書)
企業間の協力関係における基本的な合意内容を文書化したもの。法的拘束力を持たない場合が多く、今後の正式契約に向けた意向表明の性質を持つ。

TOPS(Tera Operations Per Second)
AIプロセッサの演算性能を示す単位で、1秒間に実行できる演算回数を兆(テラ)単位で表す。自律走行システムではリアルタイム処理能力の指標として重要。

LiDAR(Light Detection and Ranging)
レーザー光を用いて周囲の物体までの距離を測定するセンサー技術。自律走行車において、カメラやレーダーと併用して3次元の環境認識を実現する。

【参考リンク】

Stellantis公式サイト(外部)
Fiat、Jeep、Peugeot、Chryslerなど14の自動車ブランドを擁する世界有数の自動車メーカー。2021年にPSAグループとフィアット・クライスラーが合併して誕生。

NVIDIA DRIVE(外部)
NVIDIAが提供する自律走行車向けのAIコンピューティングプラットフォーム。ハードウェアとソフトウェアを統合したエンドツーエンドのソリューションを展開。

Foxconn(鴻海精密工業)(外部)
台湾を拠点とする世界最大のエレクトロニクス製造サービス企業。近年はEVや自律走行車向けのシステム統合とハードウェア製造に注力している。

Pony.ai(外部)
中国・米国で自律走行技術を開発するスタートアップ企業。中国の主要都市でロボタクシーサービスを既に展開しており、レベル4自律走行の実用化を進めている。

【参考記事】

NVIDIA Makes the World Robotaxi-Ready With Uber Partnership to Deploy AVs Starting in 2027(外部)
NVIDIAがUberとのパートナーシップを発表し、2027年から自律走行車の展開を開始する計画を明らかにした内容。NVIDIA DRIVE AGX Hyperion 10アーキテクチャ搭載車両の詳細。

Stellantis ties up with Nvidia, Uber to advance robotaxi development(外部)
ロイターによる報道で、Stellantisが自律走行車の開発を加速させるためにNVIDIAとUberと提携したことを伝えている。この協業により2028年の生産開始を目指す。

Stellantis and Pony.ai Partner to Advance Robotaxi Development in Europe(外部)
Stellantisが10月16日に発表したPony.aiとの欧州におけるロボタクシー開発パートナーシップ。2026年に欧州でのテスト走行を開始する計画の詳細。

Uber to launch 100,000 robotaxis with Nvidia from 2027(外部)
日本経済新聞アジア版の報道。UberとNVIDIAの提携により、2027年から2030年にかけて10万台規模のロボタクシーを展開する計画が明らかになった内容。

Stellantis Partners With Nvidia, Uber and Foxconn to Develop Robotaxis(外部)
Morningstarによる報道。4社の協業の詳細と、法的拘束力を持たないMoUの性質、各社が他の自律運転プロジェクトにも参加可能であることを解説。

【編集部後記】

自動運転タクシーが街を走る未来が、思っているよりも早く実現しそうです。みなさんは、ロボタクシーに乗ってみたいと思いますか?それとも、もう少し様子を見たいでしょうか。

日本でも2025年は「レベル4社会実装元年」と呼ばれ、限定エリアでの無人運転サービスが始まっています。一方で、今回の発表のように2028年の量産開始を目標とする動きもあり、技術と現実の距離感を考えるきっかけになりそうです。みなさんの街に自動運転車が走るようになったとき、どんな使い方をしてみたいですか?通勤や買い物、それとも深夜の移動手段として?ぜひ想像してみてください。

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Ami
テクノロジーは、もっと私たちの感性に寄り添えるはず。デザイナーとしての経験を活かし、テクノロジーが「美」と「暮らし」をどう豊かにデザインしていくのか、未来のシナリオを描きます。 2児の母として、家族の時間を豊かにするスマートホーム技術に注目する傍ら、実家の美容室のDXを考えるのが密かな楽しみ。読者の皆さんの毎日が、お気に入りのガジェットやサービスで、もっと心ときめくものになるような情報を届けたいです。もちろんMac派!

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