トレンドマイクロ株式会社は2025年10月28日、スマートフォン向け詐欺対策専用アプリ「トレンドマイクロ 詐欺バスター」の詐欺・迷惑電話ブロック機能などの一部機能が利用できる無料版の提供開始を発表した。
同社の調査によると、ネット・電話を介した詐欺や詐欺と思われる不審な体験をしたと回答した人は64.4%に達する。Androidスマートフォンにおいて、電話帳に登録がない番号の着信のうち、約4件に1件が詐欺・迷惑電話であることが明らかになった。
詐欺被害に遭った人への調査では、32.3%が「家族」に相談する一方で、31.5%が「どこにも報告・相談しなかった」と回答した。このアプリの無料版提供により、詐欺・迷惑電話への対策の普及を目指している。
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スマホ着信の約4件に1件が詐欺・迷惑電話と判明 – Trend Micro
【編集部解説】
スマートフォンが日常生活に深く根付く中で、詐欺・迷惑電話は私たちの情報セキュリティを脅かす最も身近な脅威の一つとなっています。トレンドマイクロが発表した「電話帳への登録がない電話番号からの着信のうち、約4件に1件が詐欺・迷惑電話」というデータは、単なる統計数字ではなく、このリスクの深刻さを如実に物語っています。
今回の無料版提供という決断の背景には、重要な課題があります。それは「技術格差による被害」です。有償のセキュリティソリューションは確かに高度な保護を提供しますが、それゆえに利用層が限定されてしまいます。一方で、詐欺師たちはターゲットを選びません。特に高齢者層など、セキュリティツールの導入が進まない層が狙われやすいという現実があります。無料化することで、より多くの層に最新技術による防御を提供できる意義は大きいのです。
注目すべきは、被害者が「どこにも報告・相談しなかった」という回答が31.5%に達している点です。これは単なる対策不足ではなく、詐欺被害に対する社会的な報告・相談体制そのものが十分に機能していない可能性を示唆しています。被害者が孤立し、二次被害へと進むリスクが高まっているわけです。
トレンドマイクロが警察機関との連携を強化している姿勢も重要です。2025年の「国民を詐欺から守るための総合対策2.0」において、政府が官民一体の連携を掲げている中で、このような技術企業による支援ツールの提供は、国家レベルの対策と民間セクターのイノベーションが交差する地点と言えます。
しかし、忘れてはならないのは、技術的な防御だけでは詐欺を完全に防ぐことはできないということです。ユーザー側のリテラシー向上が並行して必要なのです。着信元が不明の場合に応答しない、不用意に情報を提供しない、といった基本的な対策と技術的防御の組み合わせによってこそ、初めて実効的な保護が成立します。
【用語解説】
ディープフェイク
AIを用いて、実在しない映像や音声を作成する技術。詐欺の手口としても悪用されており、本人になりすましたビデオメッセージや音声により信頼性を装うケースが報告されている。
【参考リンク】
詐欺バスター|トレンドマイクロ(外部)
トレンドマイクロが提供する詐欺対策アプリの公式ページ。無料版・有償版の機能比較、動作環境、ダウンロード方法などが詳しく記載。
詐欺バスター:詐欺電話やネット詐欺を自動判定、ブロック(外部)
Google Playストアにおけるアプリダウンロードページ。ユーザーレビュー、機能詳細、インストール方法を確認できます。
【参考記事】
スマートフォンの着信の約4件に1件が詐欺・迷惑電話、注意を(外部)
トレンドマイクロの調査結果を報道。Androidスマートフォンの電話帳未登録番号において、約4件に1件が詐欺・迷惑電話という数値が記載。
令和7年上半期における特殊詐欺、SNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況について(暫定値)(外部)
警察庁公式。2025年上半期の特殊詐欺は認知件数13,213件(前年同期比+47.5%)、被害額597.3億円の記載があります。
警察官をかたる詐欺被害が20〜30代で激増(外部)
トビラシステムズのレポート。2025年の特殊詐欺累計被害額が5月時点で316億円。20~30代の若年層被害が増加し、携帯電話対策の急務を指摘。
トビラシステムズ 特殊詐欺・フィッシング詐欺に関するレポート(2025年5月)(外部)
迷惑電話番号の分析。国際電話番号57.7%、携帯電話番号17.7%と記載。北米やカンボジアからの詐欺が多発。
【編集部後記】
もし電話帳に登録のない番号から着信があったなら、その約4件に1件は詐欺・迷惑電話かもしれない――この数字について、皆さんはどのように感じられますか?私自身、デジタルデバイスの「接続の自由さ」と「リスク」が背中合わせになっていることを改めて認識させられました。
テクノロジーが進化し、私たちの生活がより豊かになる一方で、その隙をついた脅威も巧妙になっています。無料で利用できる対策ツールが広がること自体は素晴らしいことですが、私たちユーザーのリテラシーも同時に高めていかなければなりません。これからも皆さんと一緒に、「未来」の光と影の両面を見つめていきたいと思います。
























