WordPress Post SMTP 脆弱性|未認証攻撃で管理者アカウント乗っ取りが可能に

[更新]2025年11月7日08:48

WordPress Post SMTP 脆弱性|未認証攻撃で管理者アカウント乗っ取りが可能に - innovaTopia - (イノベトピア)

Post SMTPプラグインの脆弱性CVE-2025-11833が攻撃対象となっている。同プラグインは400,000件以上のアクティブインストール数を持つWordPress用のプラグインで、デフォルトのPHPメール関数をSMTPメーラーに置き換える機能を提供している。この脆弱性は、セキュリティ研究者として活動する “netranger” というハンドルネームの人物によって発見・報告され、同氏には発見に対する報奨金として7,800ドルが贈られた。Wordfenceは10月11日にバグ報酬プログラムを通じてこの脆弱性を受け取った。

11月1日から攻撃が開始され、すでに4,500件以上の攻撃がブロックされている。脆弱性はCVSSスコア9.8と評価され、バージョン3.6.0まですべてのバージョンが影響を受ける。原因はPostmanEmailLogsクラスのコンストラクタにおけるケーパビリティチェック欠落で、認証されていない攻撃者がログに記録されたパスワードリセットメールにアクセス可能となり、管理者アカウントの乗っ取りを実現できる。

Post SMTPは10月29日にバージョン3.6.1をリリースし、脆弱性に対応した。脆弱性報告者のnetranger氏は7,800ドルの報酬を獲得した。

Wordfenceは大規模なキャンペーンが数日以内に開始される可能性があると警告している。Premium、Wordfence Care、Wordfence Responseユーザーには即座にファイアウォールルールが配布され、無料版ユーザーは11月14日に同様の保護を受け取る予定である。

From: 文献リンクCritical Site Takeover Flaw Affects 400K WordPress Sites

【編集部解説】

WordPressのセキュリティは、デジタル社会全体の信頼基盤に直結する重要なテーマです。今回のPost SMTP脆弱性CVE-2025-11833が急速に悪用される理由は、単なる技術的な脆弱性ではなく、攻撃の容易さと影響範囲の広さにあります。

認証なしでメールログにアクセスでき、パスワードリセットメールを盗聴できるという攻撃メカニズムは、従来のセキュリティ体系の盲点を突いています。WordPressの管理者権限を奪取すれば、サイト全体が攻撃者の支配下に置かれます。マルウェアの注入、訪問者のリダイレクト、データ盗聴など、あらゆる悪用が可能になるのです。10月29日のパッチ公開から数日で、観測されている40万超のサイトのうち依然として21万サイト以上がアップデート未完了である現状は、デジタルインフラの脆弱性を象徴しています。

Post SMTPは400,000以上のサイトで使用される必須級プラグインです。このような広範な採用率を持つツールに単一の脆弱性が存在すれば、その影響は指数関数的に拡大します。innovaTopia読者の皆さんが関心を持つテクノロジー分野でも、WordPressの重要性は変わりません。多くのスタートアップやテック企業もWordPressを基盤としており、このリスクは他人事ではありません。

技術的には完全なセキュリティは存在しません。重要なのは、脆弱性発見から修正・更新までの対応速度です。Wordfenceは10月11日に脆弱性を受領、10月15日に検証を完了するとともに当日中にベンダーへ全面開示し、10月29日にはパッチをリリースしました。netranger氏への7,800ドルの報酬は、セキュリティリサーチを奨励するメカニズムの有効性を示しています。一方で、11月14日まで無料版ユーザーが保護されないというタイムラグは、セキュリティの階級化を示唆しており、将来的なガバナンスの課題を提起しています。

注目すべきは、Post SMTPプラグインは過去にも類似の脆弱性(CVE-2025-24000、2025年7月)を経験していることです。同一プラグインで繰り返し脆弱性が発生する背景には、セキュリティレビュープロセスの不備やオープンソース開発体制の課題が潜んでいる可能性があります。

IoT、クラウド、AI時代には、一つのプラグインやライブラリの脆弱性が国境を超えた大規模災害に転化します。innovaTopia読者が「未来を知りたい、触りたい、関わりたい」という欲求を満たすには、テクノロジーそのものだけでなく、その運用と安全保障の視点が不可欠です。Post SMTP脆弱性はセキュリティ技術の進化と、ユーザーのセキュリティ意識向上の両面が急務であることを教えてくれています。

【用語解説】

CVE(Common Vulnerabilities and Exposures)
脆弱性に付与される一意の識別番号。セキュリティコミュニティ全体で脆弱性を共有・追跡するための標準化されたシステムである。

CVSS(Common Vulnerability Scoring System)
脆弱性の重要度を0~10で数値化するシステム。9.8は最高レベルの危険度を示す。

ケーパビリティチェック
特定の操作を実行する権限をユーザーが保有しているかを事前に確認するセキュリティ機構。これが欠落すると、認証されていないユーザーも操作可能になる。

PostmanEmailLogsクラスのコンストラクタ
Post SMTPプラグイン内のPHPクラス。ログに記録されたメールメッセージを表示する際に実行される初期化関数。セキュリティチェック欠落により、未認証ユーザーもアクセス可能になっている。

SMTPメーラー
Simple Mail Transfer Protocolに基づいてメールを配信するシステム。WordPressのデフォルトPHPメール関数より信頼性が高い。

【参考リンク】

Wordfence公式サイト(外部)
WordPress向けのエンタープライズグレードセキュリティプラグイン。ファイアウォール、マルウェアスキャン、ログイン保護を提供する。

Post SMTP公式サイト(外部)
WordPress向けのSMTPメールプラグイン。Gmail、Office 365など主要サービスと連携し、メール配信の信頼性を高める。

WordPressプラグインディレクトリ(Post SMTP)(外部)
WordPressの公式プラグインストア。Post SMTP検索、インストール、評価が可能。4.7/5の評価獲得(2025年11月時点)。

NVD CVE-2025-11833詳細(外部)
米国立標準技術研究所(NIST)が管理する脆弱性データベース。技術詳細、対応方法、参考資料が掲載。

【参考記事】

Hackers exploit WordPress plugin Post SMTP to hijack admin accounts(外部)
Bleeping Computer報道。脆弱性悪用の経緯、報告から修正までのタイムライン、パッチ公開後の更新状況を詳細に記載。

CVE-2025-11833 Impact, Exploitability, and Mitigation Steps(外部)
Wiz.io提供の脆弱性分析。CVSS算出根拠、攻撃者が実行可能な操作範囲、組織レベルでのリスク評価情報を掲載。

Wordfence Blog: 400,000 WordPress Sites Affected(外部)
Wordfence公式ブログ。セキュリティ研究チーム直筆による技術解説。PostmanEmailLogsコンストラクタの実装ミス詳細、攻撃実績数値を記載。

SecurityWeek: Exploited Post SMTP Plugin Flaw(外部)
SecurityWeek報道。脆弱性の実装的背景、プラグイン開発体制の課題、業界全体への影響分析を記載。

ZeroPath: CVE-2025-11833 Brief Summary(外部)
ZeroPath提供の脆弱性要約。技術的詳細、実装のどの部分が脆弱か、修正方法を分かりやすく解説。

WordPress Security Stats 2025(外部)
Melapress提供の2025年WordPress セキュリティ統計。プラグイン脆弱性の傾向、業界全体のセキュリティ課題を数値で示唆。

【編集部後記】

今回のPost SMTPの一件は、単なるプラグインの脆弱性問題ではありません。これは、私たちが日々利用するデジタルインフラがいかに相互依存し、連鎖的なリスクを内包しているかを示す象徴的な出来事です 。

特に注目すべきは、同一プラグインで脆弱性が繰り返されたという事実です。これは、ツールの選定基準を「機能」や「人気」だけでなく、「開発元のセキュリティ体制」や「脆弱性対応の実績」といった観点から見直す必要性を示唆しています 。

未来のテクノロジーに関わる我々にとって、イノベーションの追求とセキュリティの担保は対立する概念ではありません 。むしろ、堅牢なセキュリティ基盤こそが、大胆な技術的挑戦を可能にします。今回の事例を、自社のシステム構成やサプライチェーンにおけるセキュリティリスクを再評価する機会として捉えるべきでしょう。

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TaTsu
『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。

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