LINEヤフー株式会社は2025年11月13日、法人向けサービス「LINE公式アカウント」の有料オプション「チャットProオプション」に新機能「AIチャットボット(β)」を追加した。
本機能は生成AIがチャット内容を判別し、事前に設定したQ&Aの中から最適な回答を自動で返信する。PDFファイルや画像データ(JPEG、PNG)から生成AIが自動でQ&Aを生成することも可能で、管理画面で追加・編集できる。
テンプレートやCSVファイルにも対応。OpenAIのAPIを利用し、月額3,000円(税別)の「チャットProオプション」契約者が利用可能。2025年11月12日以降、未契約アカウントへの順次提供も開始されている。
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LINEヤフー、「LINE公式アカウント」有料オプションに生成AI活用の新機能「AIチャットボット(β)」追加

【編集部解説】
このニュースで最も注目すべきは、日本のメッセージングプラットフォームにおける生成AI活用の新しいフェーズへの移行です。LINEヤフーは2025年3月に「チャットProオプション」を開始し、わずか8カ月でAI自動応答機能を実装しました。この速度感は、企業の顧客対応における生成AI活用が実験段階から実用段階へと急速に移行していることを示しています。

技術的な観点から見ると、OpenAIのAPIを基盤とした本機能は、単なる定型文返信ではなく、文脈を理解した上での応答を可能にしています。PDFや画像からQ&Aを自動生成できる点は、導入障壁を大幅に下げる工夫と言えるでしょう。既存の業務マニュアルや商品カタログをそのまま活用できるため、中小企業でも比較的容易に導入できます。
月額3,000円(税別)という価格設定も戦略的です。従来のチャットボット構築には数十万円から数百万円のコストがかかるケースが多く、それと比較すると圧倒的に低価格です。有人対応のコストを考えれば、月に数十件の問い合わせがあるだけで元が取れる計算になります。
ただし、いくつかの課題も残されています。ユーザー側で「LINE公式アカウントAI機能での情報利用」設定をオンにする必要があるという点は、プライバシーに敏感なユーザーにとっては利用のハードルになる可能性があります。また、β版という位置づけは、精度や安定性にまだ改善の余地があることを示唆しています。

企業側にとっては、24時間365日の即時対応が可能になる一方で、AIが誤った情報を提供するリスクも存在します。Q&Aの精度管理や定期的な更新作業は引き続き人間が担う必要があり、完全な自動化には至っていません。特に複雑な問い合わせや感情的な配慮が必要なケースでは、依然として有人対応が不可欠でしょう。
長期的な視点では、この機能は日本における対話型AIの普及を加速させる可能性があります。LINEの国内MAU9,500万人という圧倒的なユーザー基盤を持つプラットフォームでAI対応が標準化されれば、消費者側のAIとの対話に対する抵抗感も徐々に薄れていくはずです。それは同時に、企業の顧客対応のあり方そのものを変革していく契機となるでしょう。
【用語解説】
AIチャットボット(β)
生成AI技術を活用した自動応答型チャットボットのβ版。チャット内容を解析し、事前登録されたQ&Aから最適な回答を選択し返信するシステム。
チャットProオプション
LINE公式アカウントで導入可能な有料追加機能。保存データの拡張やチャット管理機能を強化。
OpenAI API
米OpenAIが提供するAIエンジンへの外部アクセス用プログラミングインターフェース。自然言語処理や対話機能などを他社製品に組み込める。
Q&A自動生成
提供されたファイルを基にAIが問い合わせと回答を自動作成する技術。
LINE公式アカウント
企業や団体が顧客とのコミュニケーション、情報配信、問い合わせ対応をLINE上で実現する公式サービス。
【参考リンク】
LINEヤフー株式会社公式サイト(外部)
企業情報・サービス概要・プレスリリースが掲載されている公式ページです。
LINE公式アカウント(外部)
企業向けLINE公式アカウントの導入概要や活用事例、料金案内を紹介する公式サイトです。
OpenAI公式サイト(外部)
米OpenAIが運営する公式ホームページ。各種AIプロダクトやAPIの詳細情報があります。
【参考記事】
AIが問い合わせ内容を判別して自動応答!「AIチャットボット(β)」(外部)
LINEヤフーの公式ビジネス情報サイトによるAIチャットボット(β)の機能紹介。生成AIがユーザーからの問い合わせ内容を自動判別し、事前に設定したQ&Aから最適な回答を選択して返信する仕組みを解説している。
LINE公式アカウント:チャットProオプションAIチャットボット(外部)
チャットProオプションに追加されたAIチャットボット機能の詳細を紹介。PDFや画像からQ&Aを自動生成できる点や、管理画面での編集機能、月額3,000円という価格設定について説明している。
【編集部後記】
私たちのまわりにも、日々さまざまなチャットボットやAIサービスが増えていますが、「LINE公式アカウント」とOpenAIのAPIによる自動応答の仕組みは、これからのビジネスや暮らしにどんな変化をもたらすのでしょうか。便利になる一方で、AIの応答がどこまで信頼できるか、みなさんはどんな点が気になったり、期待したりしますか?
アカウントを運営する立場でも、利用する立場でも、もし感じていることや体験があれば、ぜひ率直な意見を聞かせていただけると嬉しいです。「こうなったら良いな」「ここは少し不安…」といった声が、今後のAI活用の大切なヒントになると感じています。Mac派のデザイナーとして、日々変わるテクノロジーの現場から、読者のみなさんに寄り添えるような情報発信をこれからも目指していきます。
























