H3ロケット8号機×みちびき5号機、JAXAの挑戦――日本独自の測位技術が生み出す未来

[更新]2025年11月16日

H3ロケット8号機×みちびき5号機、JAXAの挑戦――日本独自の測位技術が生み出す未来 - innovaTopia - (イノベトピア)

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、2025年12月7日に種子島宇宙センターからH3ロケット8号機(H3・F8)を打ち上げ、準天頂衛星5号機(QZS-5)を軌道へ投入する予定である。

打ち上げ時刻は11時30分から12時30分で、予備期間は2025年12月8日から2026年1月31日までとされている。

ロケットはLE-9エンジン2基とSRB-3型固体ロケットブースタ2本を搭載する。責任者はJAXA理事岡田匡史であり、関連施設は種子島宇宙センター、牧川追跡所、内之浦宇宙空間観測所、小笠原追跡所、キリバス共和国クリスマス島が挙げられている。

From: 文献リンクH3ロケット8号機による「みちびき5号機」の打上げ(JAXA公式プレスリリース)

【編集部解説】

今回のH3ロケット8号機による「みちびき5号機」打上げは、日本の宇宙開発の新たな局面を示しています。H3ロケットはJAXAと三菱重工業が2014年から開発を進めてきた大型ロケットで、民間衛星市場への参入を目指し、高い柔軟性とコストダウンを重視しています。以前のH3初号機の打ち上げは失敗に終わりましたが、再挑戦によって安定運用に近づいてきています。​

準天頂衛星システム「みちびき」は、日本だけでなくアジア太平洋全体の測位精度と災害対応力向上に貢献する技術です。衛星数の増加は、従来よりも広範囲で高精度な位置情報サービスや災害対応メッセージ配信を可能にします。欧米やアジア各国でも日本の高精度測位技術や衛星運用拡張への関心が強まっています。​

打ち上げの成功は、ウクライナ危機以降ロシア製ロケットを使えなくなった欧州・米国にとって、日本の大型ロケットが新たな選択肢となるという意味があります。SpaceXの他にも信頼できる商業ロケット市場の選択肢を提供できることから、世界の衛星産業における日本の存在感を高める契機になるでしょう。​

一方、衛星測位インフラの拡充は災害情報やセキュリティ分野にも影響を与えます。今後、厳格な運用基準や国際的な協力態勢の構築が求められることになると予想されます。新たな衛星運用が、社会や産業の発展、国際的な宇宙利用の秩序形成にも寄与する点に注目しています。​

【用語解説】

準天頂衛星(QZSS)
日本独自の衛星測位システム。GPSの補完や測位精度・安定性向上に寄与

H3ロケット
最新型大型ロケット。LE-9エンジン搭載、民間市場向け設計が特徴

LE-9エンジン
H3ロケット用新型主エンジン。国内最大の推力性能

SRB-3
H3ロケット用固体ロケットブースター。発射初期に推力強化

JAXA
日本の宇宙開発を担う国立研究開発法人
種子島宇宙センター:JAXAの主要ロケット打上げ施設(鹿児島県南種子町)

【参考リンク】

JAXA公式サイト(外部)
JAXAの宇宙関連プロジェクト情報全般を網羅する公式ウェブサイト。最新ロケット、衛星、探査情報を掲載。

QZSS(みちびき)公式サイト(外部)
日本の準天頂衛星システム情報やサービス概要、技術資料を提供する公式ポータル。

H3ロケット公式情報ページ(外部)
H3ロケットの技術仕様やプロジェクト背景、打ち上げ情報などの公式解説。

【参考記事】

Editorial: Successful launch of H3 rocket a boost for Japan’s global reputation(外部)
H3の打ち上げ成功が宇宙ビジネスや国際評価に与えた影響について解説。

Japan forced to destroy flagship H3 rocket in failed launch(外部)
H3初号機の打ち上げ失敗とその後の技術改善・再挑戦について報道。

Japan’s plans to expand CLAS coverage and to launch augmentation services(外部)
QZSSによる高精度位置情報サービス拡充や技術発展について海外から解説。

【編集部後記】

最先端の宇宙技術は日々進化し続けていますが、その成果が私たちの日常生活にどう届くのかは未知数でもあります。「みちびき」やH3ロケットは、災害時や新しい産業分野、日常の位置情報サービスに新しい可能性を広げます。

みなさんはこの技術や未来の社会にどんな期待や関心を持ちますか?innovaTopiaでは、みなさんの気持ちや疑問に寄り添いながら、これからも“未来を感じられる”情報発信を続けていきます。

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TaTsu
『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。

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