富士通株式会社は、日本年金機構の年金相談に対応する「ねんきんチャットボット」に生成AIを導入するため、2025年11月よりAIチャットボットサービスの構築を開始し、2026年4月から本格運用を開始することを発表した。
導入される生成AIは、事業モデル「Uvance」を活用したもので、これによって問い合わせ対応用Q&Aデータの素案を自動生成し、月2回以上発生していたQ&Aのメンテナンスと更新業務の負担軽減を実現する。サービスは日本語のほか、英語・中国語・韓国語・ポルトガル語・ベトナム語・タガログ語の計7言語への対応拡大が同時に予定されている。
日本年金機構はこれまで全国312の年金事務所を拠点に、窓口・電話・チャットボットによる年金相談を行ってきており、2020年からは年間約60万人以上がチャットボットを利用している。今後はデジタルチャネルのさらなる拡大、業務効率化、利用者体験と満足度向上を推進していく構えである。
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日本年金機構様の「ねんきんチャットボット」の運用支援に生成AIを活用し、新たにAIチャットボットサービスの構築を開始
【編集部解説】
日本年金機構が「ねんきんチャットボット」に生成AIを導入する今回の事例は、公共分野でのAI活用が本格化する象徴的な動きです。
従来のチャットボットは膨大なQ&Aの事前設定が不可欠で、年金制度のように政策改正や運用変更が多発する領域では、月2回以上の頻度でデータの更新が必要となり、職員の大きな負担となっていました。生成AIの導入によって、このQ&Aデータの素案が自動生成されるため、専門知識を持つ担当者が一から全てを作る必要がなくなり、業務効率が大幅に向上します。職員はAIが生成した案を精査・修正するのみで済み、その分、利用者個別の相談対応など本質的な業務にリソースを振り分けられるようになります。
また今回、多言語対応が同時に拡大されたことは本質的な変革です。英語、中国語、韓国語、ポルトガル語、ベトナム語、タガログ語という日本語を含めた計7言語の導入は、日本の多国籍化・多様性社会推進を体現するものです。外国人居住者や多文化背景を持つ人々が年金制度の詳細を自国語で容易に理解できるようになることは、社会の包摂性・公平性を飛躍的に高める一手だといえるでしょう。
一方で、AIによる自動応答には「不正確な応答」のリスクや、制度解釈での判断誤り、情報のバイアスなどの潜在的課題も指摘されています。これに対し富士通と年金機構では「AIが生成した回答案は、必ず人間(職員)が精査・修正した上でシステムに登録する」運用フローを強調しており、ITガバナンス・セキュリティ強化に注力している点が特徴的です。また、今後は年金のみならず関連各種行政手続きもチャットボット経由で完結できるようデジタルチャネルの拡大が見込まれており、公共サービス全体のユーザー体験向上や業務のデジタル化加速に直結すると期待されています。
現場効率化・住民利便性向上・多様性社会実現・技術リスク抑制など、社会実装に必要な要素が高次元で接続されています。今回の事案はこの分野の「今」と「これから」を示すモデルケースとして、国内外の行政機関やICT業界から注目されています。
【用語解説】
Uvance
企業と生活者をつなぐ社会課題解決型の事業モデル。持続的価値創造を重視。
【参考リンク】
日本年金機構公式サイト(外部)
日本の年金制度運営機関。年金事務所情報や多言語情報を掲載。
富士通 Uvance(外部)
富士通のDX/社会課題解決モデルの公式ページ。サステナビリティ対応情報も充実。
富士通 CHORDSHIP(外部)
富士通のAIチャットボットサービス。FAQ応答やChatGPT連携機能を紹介。
【参考動画】
【参考記事】
Fujitsu to develop new chatbot for Japan Pension Service(外部)
公式発表。Q&A自動生成と多言語化、職員負荷軽減の詳細を掲載。
GenAI in government workflows: Risk vs. reward(外部)
公共機関におけるAI導入リスクとメリット、ガバナンス対策を解説。
The strategic guide to chatbot FAQ automation in 2025(外部)
FAQ自動化による効率化と応答品質向上の最新事例を掲載。
Multilingual Chatbot: Benefits, Challenges & How to Build(外部)
多言語チャットボットの利点・技術的課題・構築方法を説明。
【編集部後記】
AI化が進むことで、年金のような複雑な制度にも「質問しやすさ」や「理解しやすさ」が付加されていくと感じます。皆さんは最近、デジタルサービスを使って悩みを相談する機会がありましたか?年金制度の手続きは少し難しいものですが、このような仕組みにより、悩みや不安が減る方が今後も増えていくかもしれません。
自分自身や家族、周りの人たちの疑問がテクノロジーによるサービスでどのように解消されるのか、一緒に注目してみませんか。
























