Google、AIキャパシティ倍増計画|Gemini 3とVeoが示す「インフラ主役の第2段階」

[更新]2025年11月25日

Google、AIキャパシティ倍増計画|Gemini 3とVeoが示す「インフラ主役の第2段階」 - innovaTopia - (イノベトピア)

2025年11月6日、GoogleのAIインフラ責任者アミン・ヴァダット氏は全社会議で、AIサービス需要に応えるためには推論処理能力(サービングキャパシティ)を6カ月ごとに2倍にし、4〜5年で1000倍に拡張する必要があると社員に示した。

親会社Alphabetは2025年の設備投資見通しを910億〜930億ドル(現在のレートで約13兆〜14兆円)へ引き上げ、2026年にはさらなる増加を見込んでおり、MicrosoftやAmazon、Metaなど他のハイパースケーラーとともに年間3800億ドル(約57兆円)超をインフラに投じる構図である。 Google Cloudは四半期売上152億ドル(約2.3兆円)、前年比34%成長、受注残(バックログ)1550億ドルと堅調だが、サンダー・ピチャイ氏はGemini 3や動画生成AI「Veoシリーズ」の展開で計算資源(コンピュート)不足がボトルネックになっていると説明した。

同社は第7世代TPU「Ironwood」による電力効率向上や、モデル・ハードウェア・ネットワークの共同設計を通じ、同等コストと電力で1000倍の処理能力提供を目指している。

From: 文献リンクGoogle must double AI serving capacity every 6 months to meet demand, AI infrastructure boss tells employees

【編集部解説】

今回、Googleの社内ミーティングから明らかになった「6カ月ごとの容量2倍」「4〜5年で1000倍」という数字は、モデルそのものの進化よりも、その裏側で動くインフラの厳しさを象徴しているように感じます。Gemini 3やVeoのような最前線のモデルがあっても、推論基盤が足りなければユーザーに届けられず、結果的に事業インパクトも頭打ちになってしまうからです。

Googleは910億〜930億ドルという規模の設備投資を掲げつつも、「競合より多く使うこと」ではなく、「より信頼性が高く、高性能でスケーラブルなインフラを作ること」が目的だと説明しています。ここには、汎用GPUだけではなく、自社設計のTPU「Ironwood」を含むフルスタック最適化で、同じ電力・同じコストで1000倍の計算能力を目指すという長期戦略が透けて見えます。

このスケールアップが進めば、高精細な動画生成や長時間のマルチモーダル対話、常時稼働するエージェント型AIなどが、より多くの人に届く可能性があります。一方で、データセンターの電力需要増加や、大手クラウドへの依存度の高まり、インフラ投資をめぐる「AIバブル」議論など、社会インフラや規制のレイヤーにも波及するテーマが増えていくはずです。

innovaTopiaとしては、「AIがすごい」ではなく、「この指数関数的なインフラ投資の先に、どんな体験が一般ユーザーや開発者に開放されるのか」「どのような条件でそれが持続可能になるのか」を一緒に考えていきたいと思っています。とくに、日本からサービスやプロダクトを作る立場にいる方にとっては、GPU調達だけでなく、どのクラウドスタックを選ぶか、どこまで自前で最適化するかといった戦略設計そのものが、数年単位で変わっていくタイミングだと感じます。

【用語解説】

AIインフラストラクチャ
データセンター、GPUやTPUなどの専用チップ、ネットワーク、ストレージ、管理ソフトウェアを含むAIサービス基盤全体を指す概念だ。

Hyperscaler(ハイパースケーラー)
Google、Microsoft、Amazon、Metaなど、巨大なクラウドインフラとデータセンター群をグローバル規模で運用する企業群を指す呼称だ。

CapEx(Capital Expenditures)
設備投資を意味し、データセンターや半導体チップ、ネットワーク設備など長期資産への投資を表す会計用語だ。

TPU(Tensor Processing Unit)
Googleが自社設計したAI向けアクセラレータであり、ニューラルネットワークの計算を高速かつ高効率に実行するための専用プロセッサだ。

Gemini 3
Googleが提供するマルチモーダルAIモデルシリーズ「Gemini」の第3世代モデルであり、より複雑な質問への応答精度向上をうたうモデルである。

Veo
Googleが開発する動画生成AIモデルであり、テキストや他の入力から高品質な動画を生成するサービスだ。

【参考リンク】

Google 公式サイト(外部)
Googleの企業情報や事業内容、ニュースリリースなどを掲載する公式コーポレートサイトである。

Google Cloud AI Infrastructure(外部)
Google Cloudが提供するAIインフラストラクチャの概要やアーキテクチャ、導入方法を紹介する公式ページである。

Google Cloud TPU 製品ページ(外部)
Googleのクラウド上で利用できるTPU製品群の概要、世代ごとの仕様や料金体系を説明する公式ドキュメントだ。

Google DeepMind 公式サイト(外部)
強化学習や大規模モデルなど、Google DeepMindの研究成果やプロジェクト概要を公開している公式サイトである。

Gemini 公式ポータル(外部)
Geminiモデルを利用したチャットや生産性機能など、ユーザー向けのGemini体験にアクセスできる公式サイトだ。

Nvidia 公式サイト(外部)
GPUおよびデータセンター向けAIプラットフォームを提供するNvidiaの製品情報やソリューションを掲載する公式サイトである。

【参考記事】

Google targets 1000x compute growth, aims to double capacity …(外部)
Googleが4〜5年でAIコンピュートを1000倍に拡張し、6カ月ごとに容量を倍増させる計画を報じた記事で、Amin Vahdat氏の発言やハイパースケーラー各社の設備投資動向を整理している。

Google plans a 1000x jump in AI compute over the next five years(外部)
Googleが5年間でAIコンピュートを1000倍にする計画について、エネルギー効率やデータセンター、専用チップの観点から実現可能性と課題を解説している。

As Google eyes exponential surge in serving capacity, analyst says …(外部)
GoogleのAIサービングキャパシティ拡張計画に対し、アナリストがCapExやフリーキャッシュフローへの影響、株式市場の期待と警戒を評価した記事である。

Google tells employees it must double capacity every 6 months to meet AI demand(外部)
社内ミーティングで共有された「6カ月ごとの2倍」目標を中心に、AIインフラ拡張やサービングキャパシティ不足の技術的な背景を解説する記事。

Google’s computing power target revealed: Doubling every six months.(外部)
6カ月ごとのコンピュート倍増と1000倍目標がGoogleおよびAIセクター全体の評価にどう影響するかを投資家向けに解説した記事。

【編集部後記】

AIインフラの話は、どこか遠い世界の数字のようにも見えますが、GeminiやVeoのようなモデルを日常的に触っていると、その裏側の負荷も少しずつ想像しやすくなってきた気がします。

「6カ月ごとに2倍」「4〜5年で1000倍」というスピードで世界が進むとき、自分はどのレイヤーで関わりたいか──インフラなのか、プロダクトなのか、あるいは使い手としてなのかを、一緒に考えていけたらうれしいです。

投稿者アバター
omote
デザイン、ライティング、Web制作を行っています。AI分野と、ワクワクするような進化を遂げるロボティクス分野について関心を持っています。AIについては私自身子を持つ親として、技術や芸術、または精神面におけるAIと人との共存について、読者の皆さんと共に学び、考えていけたらと思っています。

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