Microsoft、Copilot秋期アップデートで新キャラ「Mico」とGroups機能を実装 ― 最大32名が同時協働

Microsoft、Copilot秋期アップデートで新キャラ「Mico」とGroups機能を実装 ― 最大32名が同時協働 - innovaTopia - (イノベトピア)

Microsoftは2025年10月23日(現地時間)、AIデジタルアシスタント「Copilot」の秋期アップデートをオンラインイベントで発表した。

Microsoft AI部門CEOのMustafa Suleymanらが12の新機能を公開し、Windows、Edge、Microsoft 365全体への統合を深めた。

主要機能には、最大32名が参加可能な共有セッション「Groups」、AI生成コンテンツ作成ハブ「Imagine」、表情豊かな新キャラクター「Mico」、ユーザーの会話スタイルに適応する「Real Talk」、長期記憶機能「Memory & Personalization」、OneDrive、Outlook、Gmail、Google Drive、Googleカレンダーとの統合「Connectors」、文脈ベースの提案機能「Proactive Actions」、Harvard Healthなどを情報源とする「Copilot for Health」、音声駆動型個別指導「Learn Live」、EdgeのAIブラウザ化「Copilot Mode in Edge」、Windows 11への深い統合、協働キャンバス「Copilot Pages」と統合検索「Copilot Search」が含まれる。

米国で即座に利用可能で、英国、カナダなどへ順次展開される。Microsoft独自のMAI-Voice-1、MAI-1-Preview、MAI-Vision-1モデルが基盤となっている。

From: 文献リンクMicrosoft Copilot gets 12 big updates for fall, including new AI assistant character Mico

【編集部解説】

今回の発表で最も注目すべきは、MicrosoftがOpenAI依存から脱却し、独自開発のMAIモデル群へと舵を切った点です。MAI-Voice-1、MAI-1-Previewといった自社モデルは、音声、テキスト、画像という異なるモダリティを統合的に処理できる設計になっています。

これまでCopilotはOpenAIのGPTモデルに全面的に依存していましたが、OpenAIが消費者向けブランドとしての展開を強化する中で、Microsoftは企業向けAIインフラとしての独自性を確立する必要に迫られていました。自社モデルを持つことで、更新の即時反映、レイテンシの予測可能性、そして何より企業向けコンプライアンス要件への柔軟な対応が可能になります。

Groups機能は、AnthropicのClaude ProjectsやOpenAIのChatGPT Projectsへの明確な対抗策といえるでしょう。ただし、これらとの決定的な違いは、Microsoft 365とEntra ID(旧Azure Active Directory)による既存のエンタープライズ認証基盤と完全に統合されている点です。つまり、新たなガバナンス体制を構築する必要がなく、既存のコンプライアンスポリシーがそのまま適用されます。

Micoという新キャラクターの登場は、単なるノスタルジアではありません。1995年のMicrosoft Bob、1997年のClippy、2014年のCortanaと続く「人格を持つアシスタント」の系譜において、Micoは生成AIの能力と結びついた初めての存在です。過去のキャラクターが定型応答しかできなかったのに対し、Micoはリアルタイムで学習し、ユーザーの感情に応じて表情や色を変える適応性を持ちます。

Real Talk機能も見逃せません。これまでのAIアシスタントは「おべっか使い」として批判されることがありましたが、この機能はユーザーの誤りや思い込みに対して適切に反論する設計になっています。特に技術的な意思決定の場面では、単に同意するのではなく、ソクラテス式の対話を通じて思考を深められる点が評価されるはずです。

セキュリティ面では、すべての処理がMicrosoft 365のテナント境界内で完結し、Microsoft Purviewによる機密ラベルとDLPポリシーが適用されます。これは規制産業にとって重要な要件であり、CopilotがエンタープライズAIとして信頼される基盤となっています。

今回のアップデートは、AIアシスタントが単なる生産性ツールから、組織のデータとプロセスを統合する「オーケストレーションレイヤー」へと進化していることを示しています。Windows 11との深い統合、EdgeのAIブラウザ化、そしてOffice製品全体での文脈認識は、Microsoftがプラットフォーム全体をAIファーストに再設計していることを物語っています。

発表から数時間後にOpenAIがShared Projects機能を無料・Plus・Pro層に拡大したことは、両社の競争が新たな段階に入ったことを象徴しています。投資家と被投資先という「フレネミー」関係の中で、それぞれが独自の道を歩み始めた2025年秋は、エンタープライズAIの歴史における転換点として記憶されるかもしれません。

【用語解説】

Microsoft Entra ID(旧Azure Active Directory)
Microsoftが提供するクラウドベースのID・アクセス管理サービスである。ユーザー認証、シングルサインオン、条件付きアクセスポリシーなどの機能を提供し、Microsoft 365やAzureなどのサービスと統合される。2023年7月にAzure ADから改称された。

MAIモデル(MAI-Voice-1、MAI-1-Preview、MAI-Vision-1)
Microsoft AI部門が独自開発した基盤モデル群である。音声生成、テキスト処理、画像認識をそれぞれ担当し、OpenAIのモデルに依存しない自社技術スタックを構築している。2025年8月から順次公開されている。

Claude Projects / ChatGPT Projects
AnthropicとOpenAIがそれぞれ提供するチーム向けAIワークスペース機能である。ファイル、プロンプト、会話履歴を一元管理し、チーム内での知識共有と協働作業を支援する。Microsoftの Groups機能はこれらの対抗機能として位置づけられる。

ソクラテス式対話
質問と回答を繰り返すことで、相手の思考を深め、自ら答えを導き出させる対話手法である。古代ギリシャの哲学者ソクラテスが用いたことから名付けられた。Real Talk機能ではこの手法を採用し、単なる回答提供ではなく思考プロセスの支援を目指している。

Microsoft Purview
Microsoftが提供するデータガバナンスおよびコンプライアンス管理プラットフォームである。機密情報の分類、データ損失防止(DLP)、情報保護ポリシーの適用などを一元的に管理する。

Clippy(クリッピー)
1997年にMicrosoft Office 97で導入されたアニメーション化されたオフィスアシスタントである。ペーパークリップの形をしたキャラクターで、ユーザーの作業を支援する目的だったが、求めていないアドバイスで中断することが多く、2001年に廃止された。

Cortana(コルタナ)
2014年に開始されたMicrosoftのデジタル音声アシスタントである。WindowsおよびモバイルデバイスでAppleのSiriやAmazonのAlexaと同様の自然言語インタラクションを提供したが、Microsoftがエンタープライズ生産性とAI統合に再注力したため、2023年にWindows版が正式に終了した。

【参考リンク】

Microsoft Copilot公式サイト(外部)
Microsoftが提供する生成AIアシスタントの公式サイト。無料版と有料版があり、テキスト生成、画像作成、コード支援などの機能を提供している。

Microsoft Entra ID公式ドキュメント(外部)
Microsoft Entra IDの公式技術ドキュメント。認証、アクセス制御、条件付きアクセス、ハイブリッドID管理などの実装方法が詳細に解説されている。

Microsoft AI – MAIモデル発表(外部)
MicrosoftがMAI-Voice-1とMAI-1-Previewを発表した公式ブログ記事。自社開発モデルの技術的特徴とビジョンが説明されている。

Microsoft 365 Copilotアプリ(外部)
Microsoft 365 Copilotアプリのログインポータル。エンタープライズ向けのCopilot機能へのアクセスポイントで、組織のMicrosoft 365環境と統合されたAI支援ツールを提供する。

Microsoft Copilot Blog – Human-centered AI(外部)
Mustafa Suleymanによる2025年秋のアップデート発表の公式ブログ記事。12の新機能と人間中心のAI設計思想が詳述されている。

MAI-Image-1発表記事(外部)
Microsoft初の画像生成モデルMAI-Image-1の発表記事。LMArenaでトップ10入りを果たした高品質な画像生成能力が紹介されている。

【参考動画】

【参考記事】

Human-centered AI | Microsoft Copilot Blog(外部)
Mustafa Suleyman CEOによる公式発表記事。MAIモデルへの移行戦略と12の新機能の詳細が説明されており、「技術は人々に奉仕すべき」という設計思想が強調されている。

Two in-house models in support of our mission | Microsoft AI(外部)
MAI-Voice-1とMAI-1-Previewの技術詳細を発表した公式記事。1秒未満で1分の音声を生成できる高速性能や、LMArenaでの評価結果が報告されている。

Microsoft’s In-House AI Move: MAI-1 and MAI-Voice-1 Signal a Shift from OpenAI(外部)
MicrosoftがOpenAI依存から脱却し、独自モデル開発に舵を切った戦略的意義を分析した記事。投資家と被投資先という複雑な関係性の変化を解説している。

Microsoft Copilot enterprise security: configurations and best practices in 2025(外部)
エンタープライズ環境におけるCopilotのセキュリティ構成とベストプラクティスをまとめた記事。Microsoft PurviewとEntra IDによるガバナンス体制が詳述されている。

Copilot is getting more personality with a ‘real talk’ mode and group chats(外部)
The Vergeによる新機能レビュー。Real Talkモードの実際の挙動やGroups機能のユーザー体験が報告されており、従来のAIアシスタントとの違いが明確にされている。

【編集部後記】

MicrosoftがOpenAI依存から脱却し、独自のAI戦略を推進する今回のアップデート。実は筆者も早速アクセスしてみたところ、「Copilot Fall Release」の新機能群がすでに使える状態になっていました。

 - innovaTopia - (イノベトピア)
おや?使えてる?

画面には「Copilot に新デザインがあります」というMicoのキャラクターカード、「グループの会話を開始する」というGroups機能、そして「Edge でブラウズを引き受ける」といった今回発表された12の新機能が整然と並んでいます。特に注目したいのは、最大32名で協働できるGroups機能です。チームでのブレインストーミングやプロジェクト管理が、AIを介してどう変わるのか。

そして、Real Talkモードのように「反論してくれるAI」は、本当に思考の質を高めてくれるのか。Micoというキャラクターの存在が、私たちとAIの関係性をどう変えていくのかも気になるところです。もし既にCopilotをお使いなら、今回の新機能で何を試してみたいですか。まだ触れていない方は、この機会にどんな可能性を感じられるでしょうか。

※上記は実際にcopilot.microsoft.comにアクセスした際の画面(2025年10月24日時点)

投稿者アバター
TaTsu
『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。

読み込み中…
advertisements
読み込み中…