Cygames(サイゲームス)と東京藝術大学は、ゲーム制作およびゲームAI開発ツールに関する共同研究を開始した。研究では、仮想空間の映像表現と自律的に動くNPCの制御に焦点をあてている。両者は専門的知見を相互提供し、NPC制御ツールの共同開発ではLarge Language Model(大規模言語モデル)を活用したライブ・プログラミング環境構築を目指している。
将来的にアーティストがゲーム開発に携わりやすい環境の構築も目標で、生成AIによるゲーム制作体験の変革も意図している。
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株式会社Cygames、東京藝術大学とゲーム制作およびゲームAI開発ツールに関する共同研究を開始
【編集部解説】
サイゲームスと東京藝術大学による共同研究は、ゲーム開発のあり方を根本から変える可能性を秘めています。この取り組みの核となるのは、Large Language Model(大規模言語モデル)を活用したNPC制御システムの開発です。従来、NPCの行動は事前にプログラムされたスクリプトに依存していましたが、LLMを組み込むことで、プレイヤーとの対話に対してAIが動的に応答するようになります。
このアプローチにより、NPCはより人間らしい行動や会話が可能になるだけでなく、ゲーム開発のプロセス自体が大きく効率化されます。特に注目すべき点は、生成AIによって少人数のチームでも制作負荷が軽減される点です。従来は大規模チームでのみ対応できた高度なゲーム制作が、一人や数人のアーティストでも実現可能になる道が開かれることは、創造産業全体における民主化を意味します。
ライブ・プログラミング環境の構築は、開発者にとって試行錯誤のサイクルを劇的に高速化させます。コードを書く→テスト→修正というプロセスが迅速化されることで、イノベーションのペースが加速するでしょう。東京藝術大学側は映像表現の専門知識を提供し、サイゲームス側はゲーム商業化の実践知を提供することで、単なる技術開発にとどまらない創造的成果が期待できます。
2026年4月の大学院映像研究科「ゲーム・インタラクティブアート専攻」開設を控えたこの共同研究は、学生にとって実践的な環境を提供し、次世代の表現者を育成する教育的意義も大きいといえます。業界とアカデミアの連携が強化されることで、ゲーム開発の未来形がより明確に示されることになるでしょう。
【用語解説】
ライブ・プログラミング環境
コード修正の結果をリアルタイムで確認しながら開発を進める手法。従来の「コンパイル→実行」というプロセスを高速化し、開発効率と試行錯誤のサイクルを大幅に改善する技術的枠組みである。
大学院映像研究科ゲーム・インタラクティブアート専攻
2026年4月開設予定の東京藝術大学の新専攻。ゲーム制作やインタラクティブメディアを学術的に研究する初の試みで、産学連携によって教育と研究が融合する新しい高等教育の形態を示している。
Cygames Research
サイゲームスの研究開発部門。ゲーム表現やインタラクション、計算機科学領域での研究を実施し、創造支援技術の開発を推進している専門組織である。
【参考リンク】
Cygames 公式サイト(外部)
ウマ娘やグランブルーファンタジーなど複数タイトルを展開するCygamesの企業サイト。ニュースリリースでは共同研究の詳細や企業理念を確認できます。
東京藝術大学 公式サイト(外部)
日本を代表する国立芸術大学の公式ページ。2026年4月のゲーム・インタラクティブアート専攻開設に関する情報や、大学の研究成果が掲載されています。
【参考記事】
Cygames and Tokyo University of the Arts have started joint research!(外部)
英文でのニュース報道。共同研究の概要と、アート×テクノロジー融合の意義について国際的な視点から論述しています。
【編集部後記】
大手企業と国立芸術大学が手を組んでゲームAIを研究する動きは、産学連携の新しい形として注目されます。LLMによるNPC制御が実用化されれば、ゲーム内の会話がどこまで自然になるのか、また開発現場でシナリオライターの役割がどう変わっていくのか気になるところです。芸術系学生が生成AIツールを使いこなすことで、これまでにない表現が生まれる可能性がある一方、商業ゲームとアート作品の境界線がどう変化するかも興味深いテーマでしょう。AIが制作したNPCと、人間が丁寧に作り込んだNPCにどのような違いが出てくるのか、今後も注目していきたいです。
























