株式会社ジャストシステムは、日本語入力システム「ATOK Passport」に生成AIを活用した文章作成アシスタント「ATOK MiRA(My Intelligent Rewrite Assistant)」を搭載し、2026年2月2日から提供開始すると発表した。
「ATOK MiRA」はATOKの日本語処理技術と個人の入力傾向・設定に生成AIを組み合わせ、文章の推敲や要約、アイデア出し、書き換えを行う機能を備える。
ATOK for Windows向けは2026年2月に提供し、その他OS向けは2026年6月以降に提供する予定である。あわせてWindows、macOS、Android、iOSの4OSに対応した同期サービス「ATOK Sync One」を2026年6月に提供し、Arm版Windows 11向けにはSnapdragon Xシリーズプロセッサー対応のネイティブ版ATOKを2026年2月に提供する。
「ATOK Passport [プレミアム]」は月額660円(税込)、年額7,920円(税込)で最大10台まで利用可能である。
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日本語入力システム「ATOK Passport」に生成AIを活用した文章作成アシスタント「ATOK MiRA」を搭載し、2026年2月2日(月)より提供開始

【編集部解説】
ATOK MiRAは、日本語入力のレイヤーに生成AIを直接組み込むことで、「文章を書く」という行為そのものを変えにきているアップデートです。これまでのATOKは変換精度や辞書の賢さが中心でしたが、MiRAは推敲・要約・書き換え・アイデア出しまでカバーすることで、執筆プロセス全体を支えるアシスタントに進化しています。
特徴的なのは、汎用的なLLMではなく、ATOKが長年蓄積してきた日本語処理技術と、ユーザーごとの入力傾向・設定を掛け合わせている点です。「ビジネス文章形式に」「より丁寧に」といった定型指示から、自分の文体を大きく崩さずトーンだけを調整できる設計は、日本語ビジネス文書を日常的に扱う読者にとって現実的なメリットになります。
ATOK Sync Oneが4OS対応で投入されることにより、Windows・macOS・Android・iOSをまたいで、辞書や学習履歴だけでなく「AIアシスタント込みの書き心地」を揃えられるようになります。リモートワークやマルチデバイス環境が当たり前になった今、「どの端末でも同じように書ける」という体験は、テキストコミュニケーションが仕事の中心にある人ほど効いてくるはずです。
一方で、IMEと生成AIが一体化することで、入力中のテキストがどの範囲までクラウドに送信され、どのように処理・保存されるのかというプライバシーやセキュリティの懸念は確実に増します。とくに企業ユーザーにとっては、機密情報を含むドキュメントの一部がAIアシスタント経由で外部に送信されるリスク評価が不可欠であり、データ取り扱い方針の透明性がこれまで以上に重要になります。
Arm版Windows 11へのネイティブ対応やSnapdragon Xシリーズ対応は、ポストx86時代のPCトレンドとも整合しています。省電力かつモバイル性の高いArmノートで、ATOK+生成AIアシスタントがストレスなく動くようになると、日本語ユーザーにとっての「軽いけれど仕事で使えるマシン」の選択肢が広がります。ハードとソフトの両側から、日本語の生産環境をアップデートしていく動きだと捉えられます。
長期的には、ATOK MiRAとATOK Sync Oneの組み合わせが、「誰でも一定水準以上の文章を書ける」一方で、「その人らしさ」はどこに残すのかという問いを突きつけてきます。AIに任せる範囲を広げるほど文章は整いますが、声色が平準化されるリスクもあります。どこから先はAIに委ね、どこまでを自分の言葉で書くのか——その線引きを、読者とともに更新していくことが、これからのライティング環境では重要になっていきそうです。
【用語解説】
生成AI
大量のテキストや画像などのデータを学習し、新しい文章や画像などを自動生成するAI技術の総称である。
ATOK MiRA(My Intelligent Rewrite Assistant)
ATOKの日本語処理技術とユーザーごとの入力傾向・設定に生成AIを組み合わせ、推敲・要約・書き換え・アイデア出しを行う文章作成アシスタント機能である。
ATOK Sync / ATOK Sync One
ATOKの学習情報や確定履歴などをクラウドに保存し、複数端末間で同期するサービス群である。ATOK Sync OneはWindows・macOS・Android・iOSの4OS対応を前提とする新サービスである。
Arm版Windows 11 / ARM64
Armアーキテクチャ向けに最適化されたWindows 11および、そのネイティブ実行形式であるARM64バイナリを指す。従来のx86アプリとは別形式で動作する。
Snapdragon Xシリーズ
Qualcomm Technologiesが提供するArm系PC向けプロセッサシリーズであり、Arm版Windows PC向けに設計されたSoCである。
【参考リンク】
ATOK Passport 公式サイト(外部)
ATOKとATOK Passportの概要や新機能、対応OS、料金プランをまとめた公式ポータルサイトである。
ATOK Passport 新機能・追加機能 2026(外部)
ATOK MiRAやATOK Sync One、Arm版Windows対応など2026年に追加される新機能を紹介する公式ページである。
「ATOK Passport」は、2026年2月に進化します。(外部)
ATOK Passportのプラン変更やATOK MiRA提供開始、Sync One開始時期などを案内する公式アナウンスページである。
ATOK Sync クラウドサービス説明(外部)
ATOK Syncの概要や同期対象データ、利用方法を解説する公式ヘルプページであり、クラウド同期の仕組み理解に役立つ。
ATOK Passport 次期バージョン解説(窓の杜)(外部)
ATOK MiRA追加やATOK Sync One、Arm版Windowsネイティブ対応などのポイントを整理したニュース記事である。
生成AI搭載ATOK Passport 日経記事(外部)
ジャストシステムの生成AI活用戦略とATOK Passportの新機能をビジネスの文脈から紹介する日本経済新聞の解説記事である。
【参考記事】
「ATOK Passport」次期バージョンはARM64にネイティブ対応! AI文章生成も可能(外部)
ATOK Passportのアップデート内容を整理し、ATOK MiRAの概要、ATOK Sync One、Arm版Windows 11ネイティブ対応の意義をわかりやすく解説する窓の杜の記事である。
ジャストシステム、生成AIを活用した文章作成アシスタントを搭載した「ATOK Passport」を提供開始(外部)
日本経済新聞が、ATOK MiRA搭載ATOK Passportをビジネス面から取り上げ、生成AI活用やサブスクリプション戦略、Arm対応の背景を簡潔にまとめた記事である。
2026年に登場!ATOK Passportに搭載されるAIアシスタントで快適な文章作成(外部)
ATOK MiRAの具体的な活用イメージや、他のAIライティングツールとの違いをユーザー視点で紹介する国内ニュース記事である。
【編集部後記】
日本語入力の世界に、ついに「最初からAI前提のATOK」が出てきたという印象を持ちました。これまでもATOKは「人間が打った文字を、いかに正しく気持ちよく変換するか」にフォーカスしていましたが、MiRAの登場で「そもそも何を書くか」というところまで一緒に考えてくれる存在になりつつあります
一方で、AIに任せれば任せるほど、文章が整う代わりに自分の声が薄れていく感覚もあるはずです。今回のアップデートをきっかけに、「ここから先はAIに手伝ってほしい領域」と「ここだけは自分の言葉で書きたい領域」を一度言語化してみると、テキストとの付き合い方が少しクリアになるかもしれません。みなさんが実際にMiRAや類似のAIアシスタントを使ってみたとき、どこに安心感や違和感を覚えたのかも、ぜひ教えてもらえたら嬉しいです。
























