カードパックサイズのチップでがん治療革新、SMARTが細胞療法製造を効率化

カードパックサイズのチップでがん治療革新、SMARTが細胞療法製造を効率化 - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2024-07-10 11:17 by admin

シンガポール-マサチューセッツ工科大学連携研究所(SMART)の研究者が、カードパックサイズのチップを用いた新しい方法で、従来の自動化製造プラットフォームよりも少ないリソースと小さなフットプリントで、手頃な価格の細胞療法製造を可能にする技術を開発した。この技術は、CAR-T細胞の製造に成功し、既存のシステムと同等の効果を持ちながら、より効率的かつ経済的な自家用細胞療法の製造方法を提供する可能性がある。この研究は、がん免疫療法の製造プロセスの一貫性の欠如、高コスト、時間のかかる問題を解決することを目指している。

さらに、SMARTの研究者たちは、臨床用CAR-T細胞の製造にマイクロバイオリアクターを使用する新しい方法を開発した。この方法では、マイクロバイオリアクターを用いて患者自身のT細胞を活性化、遺伝子修飾、増殖させることができ、既存の方法と同等の効果を持つCAR-T細胞を、より小さなスペースとリソースで製造することが可能である。この技術は、CAR-T細胞療法の製造における課題を解決し、より効率的で手頃な価格の治療法を実現する可能性がある。

また、マイクロバイオリアクターを使用したCAR-T細胞の製造プロセスの最適化に関する研究も行われている。この研究では、マイクロバイオリアクターを使用することで、より高いT細胞の増殖率と短い培養期間を実現し、従来の培養プレートで製造されたCAR-T細胞と比較して、細胞の品質にわずかな違いしかないことが示された。この研究は、CAR-T細胞療法の製造を効率化し、将来の臨床利用のために細胞の収量と品質を改善するためのプロセスパラメータと培養条件を最適化することを目指している。

【ニュース解説】

シンガポール-マサチューセッツ工科大学連携研究所(SMART)の研究チームが、がん治療における細胞療法の製造プロセスを効率化する新しい技術を開発しました。この技術は、カードパックサイズのマイクロフルイディックチップを使用して、自家由来のキメラ抗原受容体(CAR)T細胞を製造するものです。このチップは、従来の自動化製造プラットフォームよりも少ないリソースと小さなスペースを必要とし、より手頃な価格での細胞療法製造を可能にすることが期待されています。

CAR-T細胞療法は、がん細胞を攻撃するために患者自身のT細胞を遺伝子改変して増殖させる治療法です。この治療法は、特定のがんに対して非常に有効であることが示されていますが、製造プロセスが複雑で、コストが高く、時間がかかるという課題がありました。また、製造過程での汚染や人為的ミスのリスクがあり、小規模生産には不向きであるという問題もありました。

SMARTの研究チームが開発したマイクロバイオリアクターを使用した方法では、これらの課題を大幅に解決することができます。このマイクロバイオリアクターは、非常に小さなスペースで高密度にT細胞を活性化、遺伝子修飾、増殖させることが可能であり、従来の方法と比較して、より少ない細胞数と製造試薬を使用してCAR-T細胞を製造できます。これにより、製造コストの削減が期待され、特にT細胞数が少ない小児患者などにとって、治療の選択肢が広がる可能性があります。

この技術のもう一つの大きな利点は、病院や病棟などの臨床現場でのポイントオブケア(POC)製造が可能になることです。これにより、製造施設から患者への輸送時間が削減され、治療までの時間が短縮されることが期待されます。また、製造プロセスの自動化と閉鎖システムにより、汚染リスクの低減と製造の一貫性の向上が見込まれます。

しかし、この新しい技術には、臨床応用に向けたさらなる研究と最適化が必要です。細胞の収量と品質をさらに向上させるためのプロセスパラメータと培養条件の最適化、製造プロセスのさらなる自動化と簡素化が課題となります。また、この技術の安全性と有効性を確認するための臨床試験も必要です。

この技術の開発は、がん治療における細胞療法のアクセシビリティと実用性を大きく向上させる可能性を秘めています。将来的には、この技術によって、より多くの患者が効果的な治療を受けられるようになることが期待されます。

from A new way to miniaturize cell production for cancer treatment.

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