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Ethereum10周年、ウォール街の見えないインフラに進化|BlackRockやRobinhoodが採用する4200億ドル基盤の未来

Ethereum10周年、ウォール街の見えないインフラに進化|BlackRockやRobinhoodが採用する4200億ドル基盤の未来 - innovaTopia - (イノベトピア)

Ethereumが2025年7月30日、ローンチから10周年を迎えた。10年前、Vitalik Buterinらのベルリンの開発者グループがベーシックな「Frontier」ネットワークをローンチしたところから、現在は4200億ドル規模のプラットフォームに成長した。

主要金融機関の参入が加速し、BlackRockのトークン化マネーマーケットファンドBUIDL、Robinhoodのトークン化米国株式サービス(Arbitrum経由)、ドイツ銀行のzkSync上トークン化プラットフォーム計画などが実現している。CircleのUSDCはその総取引量の約65%をEthereum上で決済しており、Ethereumは全ステーブルコイン活動の約50%を占めている。

2025年、Coinbaseがトークン化株式と予測市場、Krakenが24時間米国株トークン取引を海外で開始予定と発表。ドイツ銀行データでは、ステーブルコイン取引が昨年28兆ドルに達し、MastercardとVisaの合計を上回った。

2022年にプルーフオブワークからプルーフオブステークに移行し、エネルギー使用量を99%以上削減。現在、ゼロ知識証明技術による大幅な処理能力向上を目指している。

From: 文献リンクEthereum turns 10: From scrappy experiment to Wall Street’s invisible backbone

【編集部解説】

今回のEthereum10周年という節目で注目すべきは、技術的進歩以上に規制環境の劇的な変化です。特に2025年7月に成立したGENIUS法は、ステーブルコインを証券ではなく決済手段として明確に分類し、SECの管轄から外すことを明記しました。これによりEthereumベースのステーブルコインが法的確実性を得て、機関投資家の参入障壁が大幅に下がっています。

ドナルド・トランプ大統領の暗号資産に対する支持的スタンスも市場に大きな安心感をもたらしており、この政策変化がEthereumの価値上昇を後押ししています。法的不確実性の解消は、従来リスクを懸念していた金融機関が本格的にEthereumインフラへの投資を決断する重要な転換点となりました。

金融インフラとしての静かな浸透

記事で特筆すべきは「静かな革命」という表現です。Ethereumは派手な宣伝なしに、既存の金融システムの基盤として組み込まれつつあります。昨年のステーブルコイン取引高28兆ドルという数字は、これがMastercardとVisaの合計を上回る規模であることを示しており、決済インフラとしての地位が確立されていることを裏付けています。

この「見えない基盤」化こそが、Ethereumの真の成功要因です。ユーザーは必ずしもEthereumを意識することなく、より高速で低コストな金融サービスを享受できるようになっています。

技術的な挑戦と次世代への展望

Vitalik Buterin氏が語る今後の技術的ゴールは、分散化やセキュリティを犠牲にすることなく、スケーラビリティとスピードを向上させ「ゴールライン」に到達させることです。これはLayer1の根本的な改善を目指すものであり、ガスリミットの引き上げやステートレスクライアントの統合などがその核心となります。

ゼロ知識証明技術の実装により、スマートウォッチのような小型デバイスでも取引検証が可能になるという展望は、モバイル決済革命の次のステップを示唆しています。この技術進歩は段階的で慎重なアプローチを採用しており、安全性を最優先に置いています。

リスクと課題:中央集権化の懸念

一方で、Buterinが警告する「事実上のコントローラー」問題は深刻です。主要な発行者や仲介者が少数に集約されることで、表面的には分散化されているように見えても、実質的には中央集権的な管理下に置かれるリスクがあります。

特に金融機関の大規模参入により、Ethereumのサイファーパンク的な理念と企業の効率性追求の間で価値観の衝突が生じる可能性があります。この緊張関係をどう管理するかが、今後の重要な課題となるでしょう。

長期的インパクト:金融システムの再構築

記事が描く未来像で最も注目すべきは、金融契約そのものがブロックチェーン上で自動実行される世界です。これは単なる決済手段の変化ではなく、契約、資金管理、商品提供の全プロセスが統合されたシステムへの移行を意味します。

この変化により、従来の銀行や証券会社の仲介機能が不要になる可能性があり、金融サービスの根本的な再編が予想されます。ただし、この移行は段階的に進行するため、既存システムとの共存期間が長期間続くと考えられます。

【用語解説】

Layer 2(レイヤー2)
Ethereum本体(Layer 1)の処理能力を拡張するセカンダリブロックチェーン。主要なものにArbitrum、Optimism、zkSyncがある。高速・低コストでトランザクションを実行し、最終的にEthereumで決済する。

プルーフオブステーク(Proof of Stake)
2022年に導入されたEthereumの新しい取引検証方式。従来のプルーフオブワーク(計算競争)から、保有暗号資産をステークして検証権を得る方式に変更。エネルギー消費量を99%以上削減した。

ゼロ知識証明(Zero-Knowledge Proof)
情報の内容を開示せずに、その情報が正しいことを証明する暗号学的手法。Ethereumではトランザクション処理の高速化とプライバシー保護に活用される。

GENIUS法
2025年7月にトランプ大統領が署名した法律。ステーブルコインを証券ではなく決済手段として明確に分類し、SECの管轄から外すことを規定。機関投資家の参入障壁を大幅に下げた。

スマートコントラクト
事前に設定された条件が満たされると自動的に実行されるプログラム。銀行や仲介業者なしに契約履行が可能で、Ethereumの中核機能である。

トークン化
不動産や株式などの実世界資産をブロックチェーン上のデジタルトークンとして表現すること。分割所有や24時間取引が可能になる。

DeFi(分散型金融)
中央管理者なしにブロックチェーン上で提供される金融サービス。貸借、取引、保険などを自動化されたスマートコントラクトで実現する。

ステートレスクライアント
ブロックチェーンの状態データを完全に保存せずに検証作業を行えるクライアント。ストレージ要件を大幅に削減し、ネットワークの分散化を促進する技術。

【参考リンク】

Ethereum.org(外部)
Ethereum財団が運営する公式サイト。技術仕様、開発者向け情報、10周年記念の特設ページなどを提供

BlackRock(外部)
世界最大級の資産運用会社。11.5兆ドルの運用資産を持ち、BUIDL等のトークン化ファンドをEthereumで展開

Robinhood(外部)
手数料無料の投資プラットフォーム。2025年6月にArbitrumを介したトークン化米国株式取引を開始

Circle(USDC)(外部)
USDC発行元。第2位のステーブルコインプロバイダーで、その取引量の約65%をEthereum上で決済

Deutsche Bank(外部)
ドイツの大手投資銀行。zkSync上でのトークン化プラットフォーム構築を発表し、資産管理者向けサービスを展開

Kraken(外部)
2011年創設の大手暗号資産取引所。海外市場で24時間米国株トークン取引サービスを計画

Ethereum Foundation(外部)
Ethereum発展を支援する非営利組織。エコシステム支援プログラムやDevcon会議を運営

【参考記事】

10 Year Anniversary – Ethereum.org(外部)
Ethereum財団による公式10周年記念サイト。2015年7月30日のジェネシスブロック以来の技術的進歩と記念NFTの情報を提供

Ethereum Foundation | About(外部)Ethereum財団の理念と活動内容。開発者支援、エコシステム拡張、Devcon会議運営などの詳細情報

【編集部後記】

皆さんは今、普段使っている決済サービスがどんな技術で動いているか意識したことはありますか?Ethereumの「見えない革命」は、私たちが気づかないうちに金融の基盤を静かに変えつつあります。

10年前のベルリンの小さなオフィスから始まった実験が、今や28兆ドルの取引を支えるインフラになった事実は、テクノロジーが持つ変革力の大きさを物語っています。皆さんが次にクレジットカードで支払いをする時、その裏側でどんな技術革新が進行中なのか、少し想像してみませんか?この静かな変化の波に、私たちはどう向き合っていけばよいでしょうか。

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TaTsu
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