RLUSDが日本上陸決定、リップル・SBI提携で3000億ドル市場に挑戦

[更新]2025年8月22日20:49

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リップルとSBIホールディングス、子会社のSBI VCトレード株式会社は2025年8月22日、日本でリップルUSD(RLUSD)を流通させる覚書を発表した。SBI VCトレードは日本で電子決済手段等取引業のライセンスを持つ事業者である。

ステーブルコイン市場は現在約3000億ドルの価値を持ち、今後数年間で数兆ドル規模に成長すると予測されている。RLUSDは米ドル預金、短期米国債、その他の現金同等物による高品質な準備資産で完全に裏付けられており、第三者会計事務所による月次証明が行われる。

SBI VCトレードCEOの近藤智彦氏は、同社が日本で初めて電子決済手段等取引業のライセンスを取得したと述べた。リップルのステーブルコイン担当シニアバイスプレジデントのジャック・マクドナルド氏は、RLUSDが従来の金融と分散型金融の橋渡しを提供すると説明した。SBI VCトレードは今年度内(2025年度内)を目途に日本でRLUSDの一般取扱いを開始する計画である。

From: 文献リンクRipple and SBI Group plan to distribute RLUSD in Japan

【編集部解説】

今回のリップルとSBIグループによるRLUSD日本導入発表は、日本のデジタル金融エコシステムにおける重要な転換点を示しています。特に注目すべきは、このパートナーシップが単なる新しい暗号資産の導入以上の意味を持つことです。

実は、日本のステーブルコイン市場は2025年8月18日に歴史的な出来事を迎えました。金融庁(FSA)がJPYC株式会社を資金移動業者として登録し(2025年8月20日に公式発表)、日本円建てステーブルコインの発行を初めて認可したのです。この背景のもとで発表されたRLUSD導入は、日本が本格的なデジタル通貨時代に突入したことを象徴しています。

RLUSDの技術的側面について詳しく見ると、現在の市場規模は約6億6700万ドル(約667million)となっており、これは業界大手のUSDC(Circleが発行)と比較すると小規模ですが、企業向けの用途に特化した設計が特徴です。RLUSD は2024年12月に正式にローンチされたリップル初のステーブルコインで、最近では暗号資産取引所Bullishの株式公開(IPO)決済でも実際に使用されています。

このパートナーシップが金融業界に与える影響は多層的です。まず、従来の金融システムと分散型金融(DeFi)の「橋渡し」役としての機能が挙げられます。企業間取引や国際送金において、既存の銀行システムと同等の信頼性を保ちながら、ブロックチェーン技術による効率性とコスト削減を実現できる可能性があります。

規制面での意義も見逃せません。SBI VCトレードは日本で初めて電子決済手段等取引業のライセンスを取得した企業であり、これまでにCircle社のUSDCも扱ってきた実績があります。今回のRLUSD導入により、日本の規制当局が定めた厳格なコンプライアンス基準のもとで、複数のステーブルコインが競合する健全な市場環境が形成されることが期待されます。

一方で、潜在的なリスクも存在します。ステーブルコイン市場は急速に成長している分野ですが、規制の不確実性や技術的な課題が残されています。また、米ドル建てのRLUSDが日本市場でどの程度の受容性を持つか、円建てのJPYCとの住み分けがどう進むかは注視が必要でしょう。

長期的視点では、この動きは単に日本の金融インフラを変革するだけでなく、アジア太平洋地域全体のデジタル金融システムの発展を促進する可能性を秘めています。リップルの戦略的パートナーであるSBIグループとの協力により、日本が「デジタル通貨のハブ」として機能する未来も見えてきます。

2026年第1四半期の正式導入まで約1年半の準備期間がありますが、この間に日本の金融機関や企業がどのようにステーブルコインを活用していくか、その動向が世界の金融業界にとって重要な指標となるでしょう。

【用語解説】

RLUSD(リップルUSD)
リップル社が2024年12月に発行したUSドル建てステーブルコイン。米ドル預金、短期米国債、現金同等物により完全に担保されており、第三者会計事務所による月次証明を実施している。現在の時価総額は約6億6600万ドル(2025年8月時点)。

ステーブルコイン
法定通貨や他の資産に価値が連動するよう設計された暗号資産。価格変動を抑制し、決済手段や価値保存の手段として機能する。現在の世界市場規模は約3000億ドル。

電子決済手段等取引業
日本の金融庁が定めた暗号資産関連事業の許可制度の一つ。ステーブルコインの取り扱いに必要な許可で、厳格なコンプライアンス体制と財務基盤が求められる。

覚書(MOU:Memorandum of Understanding)
企業間での合意内容を記載した文書。法的拘束力は限定的だが、将来の正式契約に向けた意向表明として機能する。

XRPレジャー
リップル社が開発した分散型台帳技術。高速かつ低コストな国際送金を可能にするブロックチェーンプラットフォーム。

【参考リンク】

Ripple(リップル)(外部)
エンタープライズ向けブロックチェーン・デジタル資産ソリューションを提供する企業。RLUSDステーブルコインの発行元。

SBI Holdings(SBIホールディングス)(外部)
日本最大級のインターネット系金融コングロマリット。リップルとの長期パートナーシップを構築している。

SBI VC Trade(外部)
SBIグループの暗号資産取引所。日本初の電子決済手段等取引業許可取得企業。2026年第1四半期にRLUSD提供開始予定。

【参考記事】

Ripple News: RLUSD Stablecoin to be Distributed in Japan by 2026(外部)
CoinDeskによる詳細報道。RLUSDが2024年12月にローンチされ、2026年第1四半期の日本展開を計画。

Ripple teams up with TradFi giant SBI to distribute RLUSD stablecoin in Japan(外部)
Crypto Briefingの分析記事。RLUSDの時価総額が6億6600万ドルに達していることを報告。

Ripple and SBI Push RLUSD Stablecoin Into Japan’s $300B Market(外部)
Coinpediaによる市場分析。日本がステーブルコインの明確なライセンス枠組みを持つ数少ない国の一つと指摘。

Japan Approves First Yen-Backed Stablecoin for Fall 2025 Launch(外部)
AIインベストによる日本の円建てステーブルコイン承認に関する報道。JPYC株式会社による日本初の円建てステーブルコイン発行予定。

【編集部後記】

今回のリップルとSBIの提携について、読者の皆さんからよく「現物のドル円両替は必要なくなるのか?」という質問をいただきます。現実的には、完全な代替は起こりません。むしろ、既存の金融システムに新しいデジタル層が追加されることで、私たちの選択肢が広がると考えています。

興味深いのは、JPYCとRLUSDが普及することで、XRPの役割がより重要になる可能性があることです。複数のステーブルコインが存在する世界では、それらを繋ぐ「デジタル高速道路」としてのXRPの価値が高まります。これは、技術の進歩が既存のものを単純に置き換えるのではなく、新たな相乗効果を生み出す好例かもしれません。

では、銀行の役割はどう変わるのでしょうか?実は銀行こそが、この新しいデジタル金融システムの「信頼の橋渡し役」として重要性を増すと考えています。ステーブルコインの準備金管理、規制遵守、顧客サポートなど、デジタル通貨時代でも人間の信頼が必要な部分を担う存在として、むしろその価値は高まるかもしれません。SBIがこの分野で先行投資を続けている理由も、そこにあるのではないでしょうか。

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TaTsu
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