JPYC株式会社は2025年8月18日付で資金決済法第37条に基づく資金決済法第37条に基づく第二種資金移動業者として登録され、登録番号は関東財務局長第00099号である。
同社は2025年10月27日午後1時より、国内初となる日本円建てステーブルコイン「JPYC」の正式発行を開始する。
JPYCは資金決済法第2条第5項に基づく電子決済手段であり、日本円と1対1で交換可能で、発行価値の裏付け資産は日本円の預貯金および国債によって発行残高の100%以上を保全する。
発行・償還を行う専用プラットフォーム「JPYC EX」も同日公開され、対応ブロックチェーンはAvalanche、Ethereum、Polygonである。
同社は電算システム、アステリア、HashPort、double jump.tokyo、ナッジ、ユーツーテック、クリプトリンクなど複数企業との連携を進めており、今後3年で発行残高10兆円を目指すとしている。
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PRTIMES【国内初】日本円ステーブルコイン「JPYC」および発行・償還プラットフォーム「JPYC EX」を正式リリース

【編集部解説】
今回のJPYC正式リリースは、日本の金融テクノロジー史において極めて重要な転換点です。2022年に改正され2023年6月に施行された資金決済法により、日本は世界でも先駆的にステーブルコインの法的枠組みを整備しました。この法改正では、ステーブルコインを「電子決済手段」として定義し、銀行・信託銀行・資金移動業者のみが発行可能と制限することで、利用者保護を最優先にした制度設計となっています。
JPYCの最大の特徴は、発行価値の100%以上を日本円の預貯金および日本国債で保全する点にあります。この仕組みは、過去にアルゴリズム型ステーブルコインTerraUSDが崩壊した教訓を活かしたものです。さらに、マイナンバーカードによる公的個人認証(JPKI)を本人確認に採用することで、犯罪収益移転防止法にも完全準拠しています。
興味深いのは、JPYCが「オープンAPI」として設計されている点です。従来の決済サービスでは加盟店契約が必要でしたが、JPYCは開発者が数行のコードで自由に組み込めるため、導入障壁が大幅に下がります。すでに電算システムによる全国6.5万店舗のコンビニ決済統合や、大阪・関西万博の公式ウォレット対応など、リアルとデジタルを横断するエコシステムが形成されつつあります。
一方で、日本の規制は自国通貨建てを優先する設計となっています。USDTやUSDCといったグローバルステーブルコインは現行法では日本の取引所で取り扱いが制限されており、円ベースのステーブルコインに限定されることで、日本の金融主権は強化される反面、グローバルなDeFiやWeb3エコシステムとの分断リスクも指摘されています。
また、国内では既存のキャッシュレス決済(PayPay、楽天Pay、Apple Payなど)が普及している中で、消費者がステーブルコインを積極的に利用する動機は必ずしも明確ではありません。実際の普及には、企業間決済や国際送金といったB2B領域での実需が鍵を握るでしょう。
同社が掲げる「3年で発行残高10兆円」という目標は野心的ですが、これが実現すれば日本国債市場の新たな買い手として存在感を示すことになります。低金利環境が続く日本において、国債需要の多様化は金融政策にもポジティブな影響を与える可能性があります。
JPYCの成功は、他国における自国通貨建てステーブルコイン発行を加速させる可能性があります。特にアジア太平洋地域では、ドル依存からの脱却と金融主権強化の文脈で注目されています。

【用語解説】
ステーブルコイン
法定通貨や金などの資産に価値を連動させた暗号資産である。価格変動が激しいビットコインなどと異なり、1コイン=1ドルや1円といった固定レートを維持する設計となっている。主に決済や送金、価値保管の手段として利用される。
資金移動業者
資金決済法に基づき、銀行以外の事業者が為替取引(送金サービス)を行うための登録制度である。第一種から第三種まで分類され、送金限度額や規制内容が異なる。JPYC株式会社は第二種資金移動業者として登録されており、1回あたりの送金額は100万円以下に制限される。
電子決済手段
2023年6月施行の改正資金決済法により新設された概念で、ステーブルコインを法的に位置づけるための分類である。発行者は銀行、信託銀行、資金移動業者に限定され、利用者保護と価値の安定性が法律で担保されている。
JPKI(公的個人認証)
マイナンバーカードに搭載された電子証明書機能を用いた本人確認システムである。政府が発行する電子証明書により、オンライン上で確実な本人確認が可能となる。
オンチェーン送金
ブロックチェーン上で直接行われる送金取引を指す。銀行などの仲介機関を経由しないため、24時間365日即座に送金でき、手数料も低コストである。
裏付け資産
ステーブルコインの価値を担保するために発行者が保有する資産である。JPYCの場合、発行残高の100%以上を日本円の預貯金および日本国債で保全している。
【参考リンク】
JPYC株式会社 公式サイト(外部)
日本初の資金移動業者として日本円ステーブルコインを発行するJPYC株式会社の企業情報、サービス概要、最新ニュースを掲載
JPYC公式サービスサイト(外部)
日本円ステーブルコインJPYCの発行・償還を行う「JPYC EX」プラットフォームへのアクセスとサービス利用方法を提供
JPYC SDK(GitHub)(外部)
開発者向けに無償公開されているソフトウェア開発キットで、JPYCの発行・償還、送受信などの機能を数行のコードで実装可能
アステリア株式会社 – ASTERIA Warp(外部)
10,000社以上に導入されているノーコードSaaSプラットフォームで、JPYCとの連携により資金移動の自動化を実現
株式会社HashPort – HashPort Wallet(外部)
大阪・関西万博の公式デジタルウォレット運営企業。万博後に「HashPort Wallet」としてリニューアルしJPYCに対応予定
【参考記事】
Japan Takes Lead In Stablecoin Regulation As Bill Passes Through Parliament(外部)
2022年改正・2023年施行の日本ステーブルコイン規制法を詳述。世界先駆的な利用者保護枠組みを構築と分析
Japan’s stablecoin law set global standards for consumer protection(外部)
日本規制が消費者保護の国際標準確立も、グローバルDeFiエコシステムとの分断リスクを指摘する分析記事
Japan’s JPYC Stablecoin and Its Implications(外部)
3年で10兆円目標実現時の日本国債市場への影響を分析。低金利環境で国債需要多様化の可能性を示唆
How Yen-Pegged JPYC is Transforming Japan’s Financial Landscape(外部)
オープンAPI設計による革新性を解説。コンビニ決済、企業間精算、万博アプリなど多様なユースケース形成を分析
How the JPYC Stablecoin Could Lead Japan’s Digital Finance Comeback(外部)
JPYCが日本デジタル金融復権を牽引する可能性を考察。アジア太平洋地域でドル依存脱却の文脈で注目と指摘
メガ3行がステーブルコインを発行へ(外部)
野村総研による分析。JPYC個人決済、メガバンク企業間決済という棲み分け予測。送金上限制約を指摘
【編集部後記】
JPYCと言えば個人的に、かつてTwitter上でポリゴン上のトークンのJPYCを使って「短い落語大会」を開催したり、inktoberの商品として投げ銭に使用していた頃が懐かしく感じられます。innovaTopiaのデスクといろいろと企画をしていたあの頃のコミュニティの熱気が思い出されます。
ついに明日からの正式発行という形でJPYCが社会に実装されると思うと、感慨深いものがありますね。
見かけ上の手数料をゼロにするために複雑なポイント還元に頼る決済サービスとは異なり、JPYCはブロックチェーン上で直接送金を行うため、本質的に低コストかつ高速です。
まずは私自身がこの新しい金融インフラを体験し、その可能性と課題を皆さんと一緒に探っていきたいと考えています。この新しい「円」の形が私たちの未来をどう変えるのか、ぜひ一度触れてみませんか?























