台湾のデジタル防衛力強化に向けた取り組みが、国際的な注目を集めています。特に、米海軍大学校が主導し、テクノロジー専門家やハッカーが参加するウォーゲームが実施され、台湾のインフラ脆弱性とその対策が議論されました。この演習は、台湾のサイバーセキュリティ強化に向けた重要なステップとなっています。
米国での経緯
演習の概要
- 実施時期:2024年8月
- 場所:ラスベガスのBlack HatとDEF CONセキュリティカンファレンス
- 主催:米海軍大学校
- 参加者:テクノロジー専門家、インフラ専門家、ハッカー
- 想定シナリオ:2030年、台湾が国連に独立国家としての認定を申請したことで中国が侵攻を決定
演習の内容
- 実施時間:3時間
- 検討シナリオ:
- オンライン攻撃による電力・データ・重要インフラへの攻撃
- 軍事攻撃とサボタージュを組み合わせた攻撃
主な発見事項
- 台湾の現在のインフラの脆弱性
- 国内データの97%が16本の海底ケーブルに依存
- そのうち3本が中国を経由
- 1本は最近切断
提案された対策
- 65の提言を作成
- 主な対策案
- ハッキングとネットワーク修復のための民間人核の育成
- 携帯電話基地局やケーブルなどの重要機器の備蓄
- Bluetoothメッシュネットワークの活用
- マイクロ波通信技術の活用
次回の予定
- 時期:2025年4月
- 場所:台湾
- 形式:非公開
- 参加者:台湾の政府関係者とハッカー
from:Hackers game out infowar against China with the US Navy
【編集部解説】
台湾のデジタル防衛力強化への新たな取り組み
米海軍大学校が主導する「台湾レジリエンス・プロジェクト」の一環として実施された今回のウォーゲームは、単なる軍事演習の域を超えた、重要な意味を持つ取り組みとなっています。
特筆すべきは、このプロジェクトが従来の軍事的な視点だけでなく、デジタルインフラの防衛という現代的な課題に焦点を当てている点です。台湾のインターネットインフラの97%が16本の海底ケーブルに依存しており、そのうち3本が中国を経由しているという現状は、深刻な脆弱性を示しています。
サイバーセキュリティの専門家との協働
今回の演習では、Black HatやDEF CONという世界最高峰のサイバーセキュリティカンファレンスの場で、ハッカーやインフラの専門家を交えた実践的なシミュレーションが行われました。このアプローチは、実際の攻撃シナリオをより現実的に検証する上で非常に効果的だったと評価できます。
三つの防衛戦略
専門家たちが提案した3つの防衛戦略は、それぞれに特徴的なアプローチを示しています
- クラスター型防衛:重要インフラを西海岸から離れた場所に集中配置する戦略です。しかし、一極集中のリスクも伴います。
- 徹底的な分散化:小規模な通信設備を分散配置し、市民による維持管理を前提とする戦略です。コストは高いものの、攻撃に対する耐性が高いとされています。
- 地形活用戦略:台湾の山岳地形を活かし、重要設備を分散配置する方法です。
今後の展望
特に注目すべきは、この演習の結果を受けて台湾デジタル省が4月に台湾での演習実施を要請した点です。これは、理論的な演習から実践的な防衛体制の構築へと移行する重要な一歩となります。
また、衛星通信インフラの整備も進められており、特にEutelsat OneWebとの協力関係の構築は、通信の冗長性を高める重要な取り組みとなっています。
技術的な課題
Bluetoothメッシュネットワークの活用や、マイクロ波通信技術の応用など、革新的な技術的解決策も提案されています。これらは、従来の通信インフラが機能しなくなった場合の代替手段として期待されています。
社会的影響
この取り組みは、単なる軍事的な防衛策を超えて、台湾社会全体のデジタルレジリエンス(回復力)を高めることを目指しています。これは、現代社会においてインターネットが基本的人権として認識されている台湾の特徴を反映したものと言えます。