Last Updated on 2025-08-01 09:55 by TaTsu
Dark Readingは2025年7月31日、Alexander Culafi記者の記事で、大規模言語モデルによる「バイブコーディング」に潜むセキュリティ課題を報じた。
Veracodeの「2025 GenAI Code Security Report」によれば、100件超のLLMが関与した80タスク中45%で脆弱実装が選択され、Javaは71%、XSS防止では86%が失敗した。
Wizは今週、生成AI開発基盤Base44の認証回避バグを発見し既に修正を確認。TracebitはGoogle Gemini CLIにデフォルト設定で機密流出を許すエクスプロイトを公開した。Black DuckのDrew Streib副社長は、技術は急拡大中だが依然初期段階で厳格な検証が不可欠と指摘する。
From: Getting a Cybersecurity Vibe Check on Vibe Coding
【編集部解説】
バイブコーディングは「テキストで願いを伝えればAIがコードを書く」という開発ワークフローを指し、2024年末ごろから急速に実運用事例が増えています。魅力は開発コスト削減とアイデア検証の高速化ですが、Veracodeの調査に示された45%という高い不安全率が示す通り、生成物は”動くが守れない”コードになりがちです。
Base44の認証迂回欠陥は、AIプラットフォーム層のバグが即座にユーザーアプリへ波及するリスクを露呈しました。一方、Gemini CLIの事例はプロンプトインジェクションを含む新種の攻撃面が実サービスで確認された初期例として重要です。
特に注意したいのは利用者とレビュー体制のギャップです。ノーコード志向の開発者ほどコード監査の専門知識を持たず、AI出力をそのまま採用しやすい傾向があります。静的解析や依存性スキャンをCI/CDに組み込み、人間のコードレビューを必須化するなど、既存パイプラインでの多層防御が不可欠です。
将来を見据えると、生成AIは開発フローの標準機能になる可能性が高いものの、「セキュア・バイ・デザイン」の思想をAI側にも適用し、モデル評価指標に”安全性”を組み込む産業横断の取り組みが急務となるでしょう。読者の皆さんが次にAI開発ツールを導入する際は、機能だけでなく更新頻度や脆弱性開示方針まで確認することを強く推奨します。
【用語解説】
バイブコーディング:
自然言語プロンプトでLLMにコード生成を任せる開発手法。
ASPM:
Application Security Posture Management。開発ライフサイクル全体でリスクを可視化する管理モデル。
OWASP Top 10:
OWASPが公表するWebアプリ主要脆弱性のリスト。
プロンプトインジェクション:
LLMへ悪意ある指示を混入し意図外の動作を引き起こす攻撃。
MDR:
Managed Detection & Response。外部委託型の運用監視・対応サービス。
【参考リンク】
Replit(外部)
ブラウザベースのIDEとAI支援コーディング機能を提供する米サンフランシスコ発のスタートアップ
Base44(外部)
ノーコードで生成AIがフル機能アプリを構築できるプラットフォーム
Bolt.new(外部)
StackBlitzのWebContainers上で動作するAI開発エージェント
Tracebit(外部)
クラウド環境向けに「セキュリティカナリア」を展開する英国企業
Legit Security(外部)
ASPMプラットフォームでソフトウェアファクトリー全体の攻撃面を可視化
Darktrace(外部)
機械学習ベースでリアルタイム脅威検知を行う英国発サイバーセキュリティ企業
Deepwatch(外部)
米国パロアルト拠点のMDRベンダー。24/365のセキュリティ運用監視を提供
Modus Create(外部)
米バージニア州レストン本社のデジタル製品開発コンサル企業
【参考記事】
Critical Flaw in Vibe-Coding Platform Base44 Exposes Apps(外部)
Base44の認証迂回バグを報じ、影響範囲とパッチ完了を解説
2025 GenAI Code Security Report(外部)1
00以上のLLMを対象に80タスクを評価し45%で脆弱実装となる結果を公表
AI-Generated Code Poses Major Security Risks(外部)
Veracode報告の詳細を解説し、言語別失敗率を補足
【編集部後記】
バイブコーディングという言葉を初めて聞いた時、多くの開発者が感じたのは「ついに来た!」という興奮だったのではないでしょうか。自然言語でアプリが作れる未来への期待と、同時に「本当に大丈夫?」という不安が混在していたはずです。
今回取り上げたVeracodeの調査結果は、その不安が的中していたことを数字で示しました。45%という失敗率は、決して無視できる数値ではありません。特に注目すべきは、時間が経っても改善されていないという点です。これは単なる初期の不具合ではなく、構造的な課題であることを意味しています。
私たちinnovaTopiaも、新しい技術には常にワクワクしながら向き合っています。しかし同時に、読者の皆さんが安全にイノベーションを楽しめるよう、リスクについても正直にお伝えする責任があると考えています。
皆さんの現場では、AIによるコード生成をどのように活用されているでしょうか。便利さに魅力を感じつつも、どこか不安を感じている方も多いのではないでしょうか。そんな率直なご感想や、実際に試してみた体験談があれば、ぜひコメント欄で共有していただければと思います。私たちも一緒に学びながら、この技術とうまく付き合っていく方法を見つけていきたいと思っています。
サイバーセキュリティニュースをinnovaTopiaでもっと読む
AI(人工知能)ニュースをinnovaTopiaでもっと読む