Mayo Clinic解説──コーヒー・スポーツドリンク・脱水の誤解を科学で解明

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2025年7月8日、CNETは水分補給に関する誤解について報じた。Mayo Clinicの管理栄養士Katherine Zeratskyと登録栄養士Marisa Mooreが専門家としてコメントしている。コーヒーや紅茶などのカフェイン飲料は、日常的な摂取であれば脱水を引き起こさないとZeratskyは述べる。野菜や果物、スープなどの食品も水分補給に有効であり、ナッツや豆類、乳製品、緑色野菜などはマグネシウム、カリウム、カルシウムなどの電解質を含む。高強度で45〜60分以上の運動や大量発汗時には、スポーツドリンクなどで電解質と炭水化物の補給が必要である。水分必要量は体格、健康状態、活動量、気候、年齢によって異なる。呼吸や会話でも水分は失われる。喉の渇きは水分補給の遅れを示すため、1日2リットルを目安に、早めかつこまめな摂取が推奨される。

From:
文献リンクExperts Clear Up This Summer’s Confusing Dehydration Myths

【編集部解説】

水分補給に関する誤解や固定観念は、私たちの健康行動に長く影響を与えてきました。コーヒーやカフェイン飲料の脱水作用については、近年の研究で日常的な摂取(例:1日3〜4杯程度)であれば水分補給に寄与することが明らかになっています。カフェインの利尿作用は体が慣れることで限定的となり、適量であれば問題ありません。ただし、極端な多量摂取や水分摂取の全てをカフェイン飲料で賄うことは推奨されません

「1日8杯の水」という目安は、個人差や環境要因を無視した単純な指標です。体格や活動量、気候、年齢、健康状態によって必要な水分量は大きく異なります。特に高温環境や運動時には、発汗による電解質の損失も考慮が必要です。

スポーツドリンクは、日常生活では不要ですが、長時間・高強度の運動や大量発汗時には電解質と炭水化物の補給が有効です。一方で、糖分の過剰摂取には注意が必要です。

喉の渇きは水分補給の遅れを示すサインであり、特に高齢者や子どもは渇きの感覚が鈍くなりやすいため、こまめな水分摂取が重要です。

近年の大規模な疫学調査や生理学的研究の進展により、年齢・体格・活動量・環境(高温・高地など)による水分代謝の個人差が定量的に明らかになっています。たとえば、23カ国・5,600人超を対象とした国際共同研究では、成人で体水分量の約10%、乳児で約25%が1日で失われること、また個人によっては5%から20%まで大きな差があることが示されています。こうしたエビデンスの蓄積により、「一律の水分摂取目安」ではなく、個人や状況に応じた柔軟な水分管理の重要性が科学的に裏付けられています。

今後はウェアラブルデバイスやAIによる体調管理の進化により、より精緻な水分・電解質バランスのモニタリングが可能になるでしょう。これにより、熱中症や慢性脱水の予防、パフォーマンス向上、健康寿命の延伸が期待されます。一方で、過剰な水分摂取による低ナトリウム血症などのリスクも存在するため、科学的根拠に基づいたバランスの良い水分補給が今後ますます重要です。

【要点】

  • コーヒーやカフェイン飲料は、日常的な摂取(1日3〜4杯程度)であれば脱水を引き起こさない。
  • 「1日8杯の水」という目安は、個人差や環境要因を考慮して柔軟に調整する必要がある。
  • 食事(野菜・果物・スープなど)からの水分摂取も重要で、電解質補給にも役立つ。
  • スポーツドリンクは、長時間・高強度の運動や大量発汗時に有効だが、日常生活では必須でない。
  • 喉の渇きを感じた時点で、すでに水分補給が遅れている場合が多い。こまめな摂取が大切。
  • 年齢・体格・活動量・環境によって、必要な水分量や代謝回転率は大きく異なる。
  • 科学的エビデンスの進展により、個人や状況に応じた水分管理の重要性が明確になっている。
  • ウェアラブルデバイスやAIの進化で、今後はよりパーソナライズされた水分管理が可能になる見込み。
  • 過剰な水分摂取によるリスク(低ナトリウム血症)にも注意が必要。

【用語解説】

  • 脱水(Dehydration)
    体内の水分が不足した状態。発汗や尿、呼吸などで水分が失われ、補給が追いつかない場合に起こる。
  • カフェイン(Caffeine)
    コーヒーや紅茶、エナジードリンクなどに含まれる成分。中枢神経を刺激し、利尿作用がある。
  • 利尿作用(Diuretic Effect)
    腎臓の働きを促進し、尿の排出を増やす作用。カフェインやアルコールなどにみられる。
  • 電解質(Electrolytes)
    体液中に存在するナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどのイオン。水分バランスや神経伝達、筋肉の収縮に重要。
  • スポーツドリンク(Sports Drink)
    運動時の水分・電解質・炭水化物補給を目的とした飲料。発汗によるミネラル損失を補う。
  • ナトリウム(Sodium)
    主要な電解質の一つ。体液の浸透圧や神経・筋肉の機能維持に不可欠。
  • マグネシウム(Magnesium)
    体内の酵素反応や筋肉・神経の働きに関与する電解質。
  • カリウム(Potassium)
    細胞内液の主要な電解質。心臓や筋肉の正常な機能に必要。
  • カルシウム(Calcium)
    骨や歯の構成成分であり、筋肉の収縮や神経伝達にも関与する。
  • 慢性脱水(Chronic Dehydration)
    長期間にわたり軽度の脱水状態が続くこと。パフォーマンス低下や健康リスクを高める。
  • 低ナトリウム血症(Hyponatremia)
    血液中のナトリウム濃度が低下した状態。過剰な水分摂取などで発生する。
  • 水の代謝回転率
    体内の水分が1日でどれだけ入れ替わるかを示す指標。年齢や体格、活動量、環境によって大きく異なる。

【参考リンク】

  1. Mayo Clinic(外部)
    世界最大級の非営利医療機関。臨床・研究・教育を通じて質の高い医療情報を提供している。
  2. CNET(外部)
    テクノロジーや健康、ライフスタイルなど幅広い分野のニュースやレビューを発信する米国の大手デジタルメディア。
  3. Marisa Moore(公式サイト)(外部)
    米国の登録栄養士。メディア出演やレシピ開発、健康情報の発信を行っている。

【参考動画】

【参考記事】

  1. 体内の水分量は1日で1割が失われる 23カ国 – スポーツ栄養 Web(外部)
    23カ国・5,600人超を対象にした国際共同研究で、成人は体水分量の約10%、乳児は約25%が1日で失われること、個人差や環境要因による違いが大きいことが明らかになった。
  2. ヒトの体の水の代謝回転量を予測する式を世界で初めて発明 – 筑波大学(外部)
    年齢・体格・活動量・環境(高温・高地など)による水分代謝の個人差を定量化し、予測式を開発。個人や状況に応じた水分管理の重要性を科学的に裏付けた。
  3. Seasonal fluctuation of total water intake and hydration status among young adults in Baoding, China(外部)
    中国の若年成人を対象に、季節ごとの水分摂取量と水分状態の変動を追跡。夏季は水分摂取量が増加し、尿や血液のバイオマーカーも季節で大きく変動することが示された。

【編集部後記】

日々の生活や仕事の中で、水分補給について意識する機会は意外と少ないかもしれません。昔仕入れた情報は「固定観念」となってアップデートされにくく、誤った状態のまま放置されてしまうことがあります。今回の記事を通じて、ご自身の水分補給の習慣や、体調の変化に敏感になって頂ければ幸いです。本格的な暑さが到来し今よりもっと厳しい環境になっていくと思われますが、より快適で健やかな毎日を迎えていただければ嬉しいです。

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