スマートウォッチがすでに日常のテクノロジーとなった今、その陰で次なる進化を遂げつつあるガジェットがあります。
それが『スマートリング』です。
まだ日本では一般的とは言いがたく、ごく一部の人々しか知らないかもしれません。しかし、指輪という洗練されたフォルムの中に、健康管理や決済、スマートホーム連携など──私たちの“未来的生活”を一歩先に進める数々の機能が集約されています。
今回innovaTopiaでは、スマートリングがもたらす未来とその可能性、“指先のテクノロジー”を紹介していきたいと思います。
Oura Ring 4(米国/フィンランド)

https://ouraring.com/ja (Oura Ring公式サイト)
Oura Health Oyは2025年7月17日、フィンランドとアメリカ合衆国に本社を置く企業として、第4世代スマートリング「Oura Ring 4」を日本で発売しました。
販売価格はSilverおよびBlackが52,800円、Brushed SilverおよびStealthが59,800円、GoldおよびRose Goldが74,800円です。
サブスクリプションサービスの月額は999円、年額は11,800円です。
リング本体はチタン製で、凹凸は0.3mm、重量は3.3〜5.2g、100m防水性能を備え、カラーは6色、サイズは4〜15まで12種類です。
バッテリーは最大8日間持続し、ヨドバシカメラ、ビックカメラ、Amazon、楽天市場で購入可能です。
これまでにOura Ringは世界179カ国で累計250万台以上が販売され、日本国内の利用者数は約18,000人です。
主な機能は以下のとおりとなります。
- 18経路のセンサーによる合計50項目以上の生体データ測定
- 血中酸素(SpO2)測定
- 心拍数計測
- 体表温度の計測
- ストレスレベルの測定
- 睡眠状態のトラッキング
Galaxy Ring(韓国/サムスン)

https://www.samsung.com/jp/rings/galaxy-ring/galaxy-ring-titanium-gold-size-11-sm-q501nzdaxjp/(SAMSUNG公式サイト)
Samsungが開発したスマートリング「Galaxy Ring」は、2024年2月のMobile World Congressで初めて披露されました。2024年7月24日に$399で販売開始され、日本国内でも2025年2月14日より発売されています。
Galaxy Ringは「毎日24時間つけても違和感のない軽量デザイン」と「チタンの堅牢性」「健康モニタリングへの特化」を強みとしています。睡眠スコアや心拍数・歩数等のデータはGalaxy AIが解析し、ユーザーの健康指標を分かりやすく可視化します。防塵・防水性能であり、カラーバリエーションは3種類。AndroidユーザーやGalaxy端末の愛用者にとっては有力な選択肢ですが、iOSユーザーは非対応、決済やディスプレイ等の多機能性よりもヘルスケア軸のウェアラブルを求めるユーザー向きです。
主な機能は以下の通りとなります。
- 光学式心拍数センサー
- 温度センサー(皮膚温度測定)
- 加速度センサー
- 24時間の健康モニタリング:心拍数・皮膚温度・睡眠状態・歩数・運動
- Galaxy AIによる健康スコア解析・詳細レポート(Samsung Health連携)
- 専用アプリ経由での詳細データ閲覧・振り返り
- ジェスチャー操作(ダブルピンチでカメラ撮影やアラーム停止が可能)
- Galaxy端末との連携による紛失時の位置確認(Find My Ring機能)
- 通信規格:Bluetooth 5.4
- ディスプレイ・決済機能は非搭載
EVERING(日本)

https://evering.jp/ EVERING(公式サイト)
EVERING(エブリング)は、日本発のプリペイド型スマートリングで、Visaのタッチ決済やスマートロック解錠などの機能を集約した次世代ウェアラブルデバイスです。指輪型でシンプルなデザインが特徴となっており、ジルコニアセラミック製で金属アレルギーのリスクを軽減しています。充電が不要でバッテリー切れの心配がなく、防水性能を備えているため日常生活の中で常時装着できます。
価格や有効期間はシリーズによって異なり、たとえばColorsシリーズは11,000円(3年有効)、MATTEシリーズは38,500円(4年有効)など複数の買い切り型モデルが用意されています。2025年7月現在、EVERINGは買い切り型に加え、月額395円~1,200円の定額プランも提供中です。利用やチャージ、残高確認、利用停止などは専用アプリで管理でき、紛失時もアプリから即時に利用停止可能です。
個人情報はリング本体に保存されていません。サイズは18種類以上が展開されており、公共交通機関の対応も拡大しています。たとえばVisaタッチ対応の改札ではサインや暗証番号なしで利用でき、有効期間が設けられているため期間満了や残高不足には注意が必要です。
世界的にも数少ない“完全充電不要”のプリペイド型スマートリングとして、日本のキャッシュレス・スマートホーム市場を牽引する存在となっており、今後はさらなるカラーバリエーションや新シリーズ展開、他スマートデバイスとの連携強化が進められています。
主な機能は以下の通りとなります。
- Visaタッチ決済対応
全国230万台以上のVisaタッチ決済端末(コンビニ・飲食店・スーパー・公共交通機関など)に対応。プリペイド方式でチャージ使用。 - 充電不要
ICチップ内蔵で決済時のみ電力が供給されるため、バッテリー切れの心配がない。 - 防水仕様
5気圧(50m相当)防水。手洗いや雨の日でも装着したまま利用可。 - 金属アレルギー配慮
ジルコニアセラミック製で軽量かつ低アレルギー上質素材。 - スマートロック対応
bitlock MINI/bitreader+、SESAMEなど主要スマートロックに対応し、指輪をかざすだけで解錠操作が可能。 - セキュリティ・サポート
紛失時はアプリから即座に利用停止。個人情報はリング本体には非保存。 - 公共交通機関利用可
Visaタッチ決済に対応した改札機で利用可能。暗証番号やサイン不要で乗降車可能。
SOXAI RING(日本)

https://soxai.co.jp/?srsltid=AfmBOopRs9zEYIkrErbN2I6T_vk0ztavmcnlShn-7vY71jO5amdrRT9V SOXAI RING(公式サイト)
SOXAI RINGは株式会社SOXAIが日本国内で開発・販売しているスマートリングです。2025年5月に発売された最新モデル「SOXAI RING 1.1」は、国内の主要家電量販店やオンラインショップなどで取り扱われており、特に健康意識の高い層を中心に支持を集めています。
リングは幅7.6mm、厚さ2.5mmで、外側はチタン、内側は合成樹脂を採用した軽量設計となっており、指にはめていても違和感が少ないと評判です。また、100m防水や−5℃〜45℃の耐環境性を持ち、サウナや入浴時でも安心して利用できます。バッテリーは非接触ワイヤレス充電に対応し、最大で約9日間使用可能とされていますが、実際の利用環境では4〜6日という声も見られます。サイズは12号から26号まで8種類がラインナップされており、購入前にはサイジングキットで適切なサイズを確認することが推奨されています。専用アプリはiOSとAndroidの両方に対応し、日本語でサポートが受けられるほか、アプリとの連携により生活リズムの最適化や健康データの可視化も可能です。
ビックカメラやヨドバシカメラ、Amazonなど全国の主要販売チャネルで購入可能で、国内メーカーならではのアフターサービスが充実している点も特徴です。決済機能などの拡張はなく、あくまで健康管理に特化したモデルとなっています。
主な機能は以下の通りとなります。
- 心拍数、心拍変動、血中酸素(SpO2)、体表面温度、活動量など多数の健康データを24時間常時モニタリング
- 睡眠トラッキング(各睡眠ステージ解析、睡眠偏差値・スコア算出、クロノタイプ提案)
- ストレス状態や体調、運動量をスコア化し、アプリで可視化
- 独自のアルゴリズムによりパーソナライズされた生活アドバイスや睡眠改善提案
- 高度な防水性(100m防水)、-5℃〜45℃の耐環境性でサウナや入浴でも装着可能
- 最大9日間バッテリー持続(サイズや使用状況で変動)、充電は約1〜2時間
- 日本語サポートと継続的なファームウェアアップデート
ORII(香港)

https://orii.io/ ORII(公式サイト)
ORIIは香港のOrigami Labsが開発した骨伝導スマートリング型デバイスで、2018年から日本を含めて販売されてきました。骨伝導技術とマイクを活用し、指を耳に当てることで通話や音声コマンドが使えるのが特長でした。当初はAmazonや家電量販店でも広く購入できましたが、2021年以降は公式サイトやメーカーの活動が見られなくなり、2025年7月現在、公式Webサイトやアプリも閉鎖または機能停止状態となっています。新品の一般販売やメーカー保証は既に終了しており、現在は中古品や在庫限り商品のみがフリマ等で流通する状況です。このため、ORIIは実質的に開発・販売が終了した製品であり、購入やサポートは事実上受けることができません。しかし、スマートリングとしては異色の機能を持っていたため、本記事にて紹介させていただきました。
主な機能は以下の通りとなります。
- 骨伝導で音声を耳に直接届け、装着した指を耳に当てるだけで通話や音声コマンドが可能
- スマートフォンのSiriやGoogleアシスタントに直接アクセス
- Bluetooth4.0接続でAndroid(6.0以降)/iOS(10以降)両対応
- ボタンを1回押して音声アシストを起動、「電話」「リマインダー」「メッセージ」「天気・アラーム」などの操作が音声で完結
- 各種着信やメッセージ通知はLEDライトとバイブ(最大5色×4パターン)でカスタマイズできる
- 通知アプリ例:電話/SMS/LINE/WhatsApp/Facebook Messengerなど
- IPX7相当の防水性能で日常利用に適している
- スピーカー/マイクはノイズキャンセリング付き
スマートリングの傾向
2025年現在、スマートリング市場ではヘルスケア機能が中心となっています。
その背景には、指輪型デバイスの小型・軽量という構造上の制約があり、バッテリー容量や内部スペースに限りがあるため、消費電力やサイズの小さい健康管理用センサーを中心とした設計が現実的だからと言われております。また、スマートウォッチやスマートフォンが既に通知や決済など多機能を担っているため、ユーザーはスマートリングに「日常的な健康データの記録と活用」を求めるという傾向がありました。さらに、決済や通知など新たな機能を加えるとコストや規制面でのハードルが高くなりますが、ヘルスケア分野は国際的にも受け入れやすく、医療・スポーツ分野との連携も進めやすいという利点があります。加えて、コロナ禍以降の健康意識の高まりも大きな推進力となりました。こうした理由から、スマートリングはヘルスケア特化型のウェアラブルとして進化しているのが現状です。
スマートウォッチとの差別化
スマートリングはスマートウォッチに取って代わる存在ではなく、それぞれが異なる強みを活かしながら共生する関係となっています。スマートリングは睡眠や心拍数などの長時間にわたる健康データの高精度な計測や、軽量・コンパクトで長いバッテリー持続といった利点があります。
一方で、スマートウォッチは通知や通話、アプリ操作、GPSなど多機能性を備え、インタラクティブな使い方ができる点が優れています。このため、実際には多くのユーザーが両者を場面ごとに使い分ける形で併用しており、両デバイスは補完し合う存在として受け入れられています。メーカーやアプリ側も共生・相互補完を前提とした設計・連携強化を進めており、今後も「共生」という方針が中心となると考えられます。
まとめ
スマートリングはOura RingやGalaxy Ring、EVERING、SOXAI RINGなど国産・海外の複数ブランドが展開されているものの、日本国内での認知度や普及率はまだ高いとは言えません。スマートウォッチと比較して市場への浸透度は限定的で、主な利用層も一部の健康志向ユーザーやテックアーリーアダプターにとどまっています。
一方で、スマートリング市場は世界的に急成長しており、技術革新とともに健康管理、キャッシュレス決済、スマートホーム操作など新しいライフスタイルの実現に向けて機能が拡大しています。日本市場でもOura Ringの本格展開やSOXAI RINGなど国産ブランドの登場、家電量販店での取り扱い拡大など、一般層への周知と普及に向けた動きが加速しています。
業界やメディア、メーカーは、“スマートリング=次世代ウェアラブル”としての認知向上を図るため、ユーザーの体験談の発信や具体的な利用価値の訴求、認知啓発イベントの実施などに取り組んでいます。一般消費者向けのプロモーションやメディア露出も増えており、今後数年が本格的な普及に向けた重要なタイミングとなると思われます。
現状、スマートリングは「知れ渡った存在」とは言い難いですが、その利便性やヘルスケア技術の進化を背景に、より幅広い層に価値が知られるよう各方面で普及活動が進められている状況です。