シーモスグミはChondrus crispus(アイリッシュモス)から作られるサプリメントで、大西洋の岩場海岸線、特にアイルランド、カリブ海、北米の一部で成長する赤海藻を原料とする。ベラ・ハディッドなどのセレブが毎朝シーモスジェルを飲用するとSNSで発信していることなどで注目を集めている。
2025年8月30日に公開されたCNETの記事は、ジョシュア・コックス=スティーブが執筆、医学的監修を受けている。タイムレス・ヘルス・クリニック創設者のユレーナ・デシュコ博士、レベッカ・ビッツァー・アンド・アソシエイツの管理栄養士ガブリエラ・ノヴィッキー氏、認定栄養士承認栄養LLCのジェシカ・マカリスター氏が専門家として取材に応じている。
シーモスグミはヨウ素、マグネシウム、カルシウム、カリウムなどミネラルを豊富に含む。抗酸化作用、抗炎症作用、免疫力向上、消化サポート、スキンケア、髪の健康への効果が期待される。がん細胞との戦いに関するマウス研究でも成果が示されている。
一方で高レベルのヨウ素と重金属によるリスクが存在する。甲状腺疾患患者、妊娠中・授乳中の女性、子供は特に注意が必要である。TrueSeaMossとWild & Organicブランドが推奨製品として挙げられ、いずれもAmazonで25ドルで販売されている。
From: The 5 Benefits and Risks of Sea Moss Gummies, and Who Should Try Them
【編集部解説】
今回取り上げたシーモスグミについて、innovaTopia編集部では関連する科学的研究や市場動向を含めて詳しく調査いたしました。この記事が示すサプリメント業界の動向と、私たち読者が理解しておくべき重要なポイントをご説明します。
まず注目すべきは、シーモスグミ市場の急速な成長です。業界レポートによると、2025年の4億1,979万ドルから2030年には5億5,485万ドルまで拡大し、年平均成長率は5.74%と予測されています。この数字は、単なる健康ブームを超えた持続的な市場トレンドを示しています。
より広範なシーモス市場では、National Geographicの報告によると2024年に21.8億ドル、2030年には26億ドルに達すると予測されており、これは「数十億ドル規模の健康トレンド」として確立されています。一方で、重金属やヨウ素の危険なレベルを含む可能性が指摘されており、記事で言及されたリスクを裏付ける重要な情報となっています。
特に興味深いのは、シーモスの生物学的作用メカニズムです。カラギーナンという硫酸化多糖類が乾燥重量の約3分の1を占め、これが腸内細菌によって短鎖脂肪酸に発酵され、代謝や炎症プロファイルを改善する可能性があります。これは単なる栄養補給を超えた、機能性食品としての側面を示しています。
甲状腺への影響については慎重な検討が必要です。自然なヨウ素源として期待される一方で、ヨウ素含有量のばらつきが大きく、一つのバッチから別のバッチで大幅に異なる可能性があります。特にJod-Basedow(ジョド・バセドウ)現象による甲状腺機能亢進症のリスクも報告されており、品質管理の観点で重要な課題となっています。
規制面での現状も注目点です。アメリカではFDAの食品安全近代化法(FSMA)の要件を満たす必要がありますが、生またはサプリメント形態では厳格な規制がありません。これは消費者が製品品質を判断する上で重要な情報不足を意味します。
最も重要なのは、研究の限界性です。多くの研究が試験管内または動物実験レベルにとどまっており、人間での臨床研究が不足しています。特にグミ製剤に関する臨床研究についてはその存在が確認できず、有効性は科学的に未確認の状態と言えます。
この事案は個人の健康管理におけるデータ不足とリスク評価の重要性を浮き彫りにします。将来的には、DNAバーコーディングや代謝プロファイリングなどの先端技術による品質保証が期待されており、消費者がより安全で効果的な製品を選択できる環境が整備される可能性があります。
現時点では、セレブリティの影響力による市場拡大と科学的エビデンスの間にギャップが存在することを認識し、慎重なアプローチが求められる分野と言えるでしょう。
【用語解説】
シーモス(Sea Moss)
アイリッシュモスとも呼ばれる赤海藻(Chondrus crispus)。大西洋の岩場海岸に自生し、最大92種類のミネラルを含むとされるスーパーフード素材。
生物学的利用能(Bioavailability)
体が食品から栄養素を分解・吸収する効率を示す指標。高いほど体内で利用されやすい。
カラギーナン(Carrageenan)
海藻から抽出される多糖類で、食品業界では乳化剤として使用される。一部で消化器系への影響が指摘されている。
プレバイオティクス
有益な腸内細菌の成長を促進する食品成分。消化されずに大腸まで到達し、腸内環境を改善する。
Jod-Basedow(ジョド・バセドウ)現象
ヨウ素過剰摂取により甲状腺機能亢進症が引き起こされる現象。グレーブス病患者などで特に危険とされる。
【参考リンク】
Timeless Health Clinic(外部)
ユレーナ・デシュコ博士創設の自然療法クリニック。トロントでIV点滴療法を提供
Rebecca Bitzer and Associates(外部)
メリーランド州の管理栄養士チーム。がん栄養学専門のノヴィッキー氏が所属
TrueSeaMoss(外部)
カリフォルニア州のアイリッシュシーモス専門会社。米国製造の多様な製品を提供
Wild & Organic(外部)
野生採取のシーモス、ブラダーラック、ゴボウの根を原料とした2000mgグミを製造
【参考記事】
Sea Moss Gummies Market – Forecasts from 2025 to 2030(外部)
2025年4.2億ドルから2030年5.5億ドルへの市場成長予測と年成長率5.74%を分析
Sea moss has become a billion-dollar health trend. Is it worth it?(外部)
2024年21.8億ドル、2030年26億ドル達成予測と重金属・ヨウ素リスクを検証
Irish Sea-Moss Resulting in Jod-Basedow Phenomenon(外部)
シーモス摂取によるJod-Basedow(ジョド・バセドウ)現象の症例報告。甲状腺機能亢進症リスクを証明
Does Eating Sea Moss Provide Health Benefits?(外部)
医学専門メディアによる科学的レビュー。カラギーナンの代謝メカニズムを詳細解説
Complete Guide to Sea Moss Testing and Analysis(外部)
シーモス製品の品質管理と検査方法。FDA規制現状と第三者検査の重要性を指摘
【編集部後記】
私たちが今回取り上げたシーモスグミを調査していて、興味深い発見をしました。実は日本の昆布、ワカメ、アオサなどの海藻も、シーモスと同様に92種類のミネラルを含み、同じヨウ素や重金属のリスクを抱えているのです。
つまり、これは日本の海藻グミの絶好のビジネスチャンスではないでしょうか?
市場データを見ると、日本の機能性グミ市場は2024年の90億4,684万ドルから2033年には245億6,828万ドルへと年成長率11.74%で拡大する予測です。一方で日本の海藻市場も2033年まで年成長率7.2%で成長が見込まれています。
何より、日本人の9割が海藻分解酵素を持つ腸内細菌を保有しているという生物学的優位性があります。昆布のフコキサンチンやアルギン酸など、シーモスと同等かそれ以上の機能性成分を含む日本産海藻を使った「和製スーパーフードグミ」は、国際市場でも十分に戦えるのではないでしょうか?
読者の皆さんは、「昆布グミ」「ワカメグミ」「アオサグミ」といった日本発の海藻サプリメントに魅力を感じられますか?Tech for Human Evolutionの視点で見ると、伝統的な食文化と現代の加工技術を融合させた新たなイノベーションの可能性を感じています。ぜひご意見をお聞かせください。