トヨタが次世代モビリティe-Palette発売、レベル4自動運転で2027年市場投入目指す

トヨタが次世代モビリティe-Palette発売、レベル4自動運転で2027年市場投入目指す - innovaTopia - (イノベトピア)

トヨタ自動車株式会社は2025年9月15日、多様なモビリティサービスに使用できるe-Palette BEVの販売を開始した。

同車は全長4,950mm、全幅2,080mm、全高2,650mmで、車両重量は2,950kg。定員は17名(着席4名、立席12名、運転手1名)である。リチウムイオン電池の容量は72.82kWh、最高出力150kWの交流同期電動機を搭載し、航続距離は約250km、最高車速は80km/hとなる。

急速充電では約40分で80%まで充電可能である。レベル2自動運転仕様に対応し、トヨタは2027年度中にレベル4自動運転システム搭載車両の市場投入を目指す。

TOYOTA ARENA TOKYOとその周辺エリア、Toyota Woven Cityで導入予定。メーカー希望小売価格は2,900万円から(税込)で、環境省の商用車電動化促進事業補助金1,583万5千円の対象となる。

From: 文献リンクToyota Launches Next-Generation New Mobility e-Palette

【編集部解説】

トヨタのe-Palette発売は、単なる新商品投入以上の意味を持っています。これは自動運転技術マルチユース機能を組み合わせた新しいモビリティプラットフォームの具現化であり、従来の「乗り物」という概念を根本から変えようとする試みです。

価格設定から見える戦略的意図も興味深い点です。2,900万円という価格は一般消費者向けではなく、明らかにB2B市場を狙った設定となっています。しかし環境省の補助金1,583万5千円を適用すれば実質1,316万5千円となり、商用車として考えれば現実的な投資額に落ち着きます。
※実際の補助適用は要件・申請・オプション構成等により変動。

技術的な観点では、現在のレベル2自動運転から2027年度のレベル4実現への移行計画が注目されます。日本政府は2025年度中に全国でレベル4自動運転サービスの条件付き開始を目指しており、トヨタの計画はこの国家戦略と歩調を合わせたものです。実際、政府は2025年に50カ所、2027年に100カ所での自動運転車両運用を目標に掲げています。

マルチユース機能の潜在的影響も見逃せません。朝夕はシャトルバス、昼間は移動販売車として運用できる柔軟性は、都市部の交通渋滞緩和と商業活動の効率化を同時に実現する可能性があります。72.82kWhのバッテリーによる給電機能は、災害時の非常用電源としても機能し、レジリエンス向上にも貢献します。

一方で課題も存在します。レベル4自動運転の実現には、技術的成熟度だけでなく法規制の整備も必要です。現在、自動運転許可の審査に11カ月かかっている状況を2カ月に短縮する政府方針もありますが、安全性と効率性のバランスが問われています。

長期的視点では、e-Paletteのような多目的EVプラットフォームが普及すれば、都市設計そのものに影響を与える可能性があります。固定店舗の必要性が減り、より動的で効率的な都市機能の配置が可能になるかもしれません。

【用語解説】

レベル4自動運転
SAE(米国自動車技術者協会)が定義する6段階の自動運転レベルのうち、「高度運転自動化」に分類される。特定の運行設計領域(ODD)内であれば、システムがすべての運転タスクを実行し、緊急時も人間の介入なしに安全停止できる。レベル3との違いは、運転者の監視義務がない点である。

WLTCモード
Worldwide harmonized Light vehicles Test Cycleの略。世界統一試験サイクルとして、市街地、郊外、高速道路の各走行パターンを組み合わせた国際標準の燃費・航続距離測定方法。低速(56.5km/h以下)、中速(76.6km/h以下)、高速(97.4km/h以下)、超高速(131.3km/h以下)の4段階で構成される。

ADK(Automated Driving Kit)
自動運転制御ハードウェア・ソフトウェア、カメラやLiDARなどのセンサーを含む自動運転システム一式。異なる企業が開発したADKを車両に搭載することで、自動運転機能を実現する。

VCI(Vehicle Control Interface)
車両制御インターフェース。トヨタが開発した、自動運転システムと車両の制御システムを接続する標準化されたインターフェース。これにより様々な企業のADKとの互換性を確保している。

ステア・バイ・ワイヤ・システム
従来の機械的なステアリング機構に代わり、電子制御でステアリング操作を車輪に伝達するシステム。運転者の操作負荷を軽減し、自動運転との親和性も高い。

【参考リンク】

Toyota Woven City(ウーブンシティ)(外部)
トヨタが静岡県裾野市に建設中の実証都市。自動運転車やパーソナルモビリティ、ロボット、スマートホーム技術を実際の生活環境で検証するモビリティのテストコース。

ウーブン・バイ・トヨタ(外部)
トヨタの子会社として、次世代車の開発とモビリティ社会の実現を担う。Woven Cityの開発・運営や、ソフトウェア・AI技術の研究開発を行う。

トヨタ自動車グローバルサイト – Beyond Zero(外部)
トヨタの環境・社会課題解決への取り組み「Beyond Zero」について説明。マイナス影響をゼロにするだけでなく、プラスの価値創造を目指す企業理念を紹介。

【参考記事】

Toyota releases e-Palette EV, aiming for full autonomous driving(外部)
日本経済新聞による報道。e-Paletteの商業展開と、トヨタの自動運転戦略について分析。2027年度のレベル4自動運転実現に向けた技術開発の進捗と市場戦略を詳述。

Toyota launches the e-Palette autonomous EV(外部)
米国の電気自動車専門メディアによる分析記事。e-Paletteの技術的特徴と価格設定について詳細解説。72.82kWhバッテリー、250km航続距離、マルチユース機能の潜在的影響を分析。

Japan govt eyes FY 2025 launch of full self-driving services(外部)
日本政府の自動運転推進政策について報じた記事。2025年度に50カ所、2027年に100カ所での自動運転車両運用目標や、審査期間短縮計画など、e-Paletteの市場環境となる政策動向を説明。

Toyota Unveils e-Palette EV with Autonomous Driving Plans(外部)
トヨタのe-Palette発表と自動運転計画について分析。マルチユース機能による新しいモビリティサービスの可能性と、2027年度のレベル4実現に向けた技術開発戦略を解説。

【編集部後記】

e-Paletteの発表を見て、皆さんはどのような未来を想像されたでしょうか?私自身、2,900万円という価格設定に込められたトヨタの本気度と、2027年のレベル4自動運転実現への具体的なロードマップに心が躍りました。

特に興味深いのは、朝はシャトルバス、昼は移動販売車として使えるマルチユース機能です。これは単なる技術革新ではなく、働き方や都市のあり方そのものを変える可能性を秘めていませんか?皆さんがもしe-Paletteを使えるとしたら、どのような用途で活用してみたいと思われますか?お住まいの地域で、このような多目的モビリティが導入されたら、日常生活がどう変わるか一緒に考えてみませんか。

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TaTsu
『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。

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