中国の華工科技産業株式会社が24時間稼働可能なインテリジェントレーザー除草ロボット「Hg LaserWeeder」を発表した。
2025年6月28日に湖北省武漢市で開催されたイベントで披露された。このロボットは数千種類以上の作物と雑草の品種をカバーするデータモデルとAI搭載の視覚システムを備え、作物を守りながら雑草を除去するためにレーザー強度を動的に調整する。
同社研究所のAIアルゴリズム責任者によると、化学除草剤に取って代わることが期待されている。雑草除去率は95%以上を維持し、海外の専門メディアによれば、高性能版は最大32基のレーザーヘッドを搭載して1時間あたり最大32万本の雑草を破壊できるとされる。
同社の発表では、これは従来の手作業と除草剤を組み合わせた方法より4~8倍効率的であるという。認識から標的設定、雑草除去までの処理時間は5ミリ秒未満とされている。
ロボットは黒竜江省などの試験農場でアルゴリズム検証試験を完了し、グローバルでの予約受付が開始されている。2026年の量産化を目指している。
From: Chinese company unveils smart laser weeding robot
【編集部解説】
中国の農業テクノロジー分野で注目すべき進展が起きています。華工科技産業が発表したレーザー除草ロボット「Hg LaserWeeder」は、単なる自動化機械を超えた革新的な農業ソリューションと言えるでしょう。
このロボットの最も重要な特徴は、化学除草剤への依存から脱却できる点にあります。従来の農業では除草剤による土壌汚染が問題視されており、土壌汚染の主な原因の一つとされてきた化学物質が生態系に長期的な悪影響を与える懸念がありました。
技術的な側面では、AI視覚システムが数千種類の作物と雑草を瞬時に識別し、5ミリ秒以内という驚異的な速度で処理を完了する点が特筆されます。これは人間の反応速度をはるかに上回る精度と効率性を実現しており、同社によれば従来手法の4~8倍の作業効率を達成しています。
一方で、導入コストや維持管理の複雑さといった課題も予想されます。32基のレーザーヘッドを搭載する高性能版は相当な初期投資が必要となる可能性が高く、小規模農家にとってはハードルが高いかもしれません。
また、レーザー技術を農業分野で使用することに対する安全性や規制面での検討も必要でしょう。作業者や周辺環境への影響評価、そして各国の農業機械に関する規制への適合が普及の鍵となりそうです。
2026年の量産開始により、持続可能な農業への転換点となる可能性を秘めた技術として、今後の動向に注目が集まります。
【用語解説】
AI視覚システム
人工知能を活用した画像認識技術。カメラで撮影した映像をリアルタイムで解析し、対象物を識別・分類する機能を持つ。農業分野では作物と雑草の区別に利用される。
レーザーヘッド
レーザー光を照射するための装置部分。本製品では最大32基を搭載し、複数の雑草を同時に除去することで作業効率を大幅に向上させる。
アルゴリズム検証試験
開発したプログラムや計算手法が実際の環境で正確に動作するかを確認するテスト。農業機械では様々な気候や土壌条件での性能確認が重要となる。
【参考リンク】
華工科技産業株式会社公式サイト(外部)
中国を代表するレーザー技術企業。産業用レーザー加工機から農業用ロボットまで幅広い製品を展開している。
中国日報(China Daily)(外部)
中国の国営英字新聞。中国政府の政策や企業動向を世界に発信する主要メディアとして、テクノロジー分野のニュースも積極的に報道している。
【参考記事】
China backs laser weeders with new robot Hg LaserWeeder(外部)
欧州農業技術メディアによるHg LaserWeederの詳細分析記事。32基のレーザーヘッドで32万本/時間の除草能力について技術的視点から解説。
Chinese company unveils laser weeding robot to reduce herbicide use(外部)
ワイン業界メディアによる報道。精密農業の観点からHg LaserWeederの技術革新と環境への影響について分析。
China unveils intelligent laser weeding robot to replace herbicides(外部)
農業専門メディアによるレーザー除草技術の詳細報道。化学除草剤代替技術としての可能性を専門的視点で解説。
【編集部後記】
このレーザー除草ロボットの登場は、私たちの食卓に届く野菜や穀物の生産方法を根本から変える可能性を秘めています。化学除草剤に頼らない農業が本格的に実現できるとすれば、より安全で持続可能な食料システムへの転換点となる可能性があります。
一方で、こうした先端技術は導入コストや安全性の問題もあり、小規模農家にとって現実的な選択肢となるのでしょうか。また、中国企業が開発したこの技術が世界の農業にどのような影響を与えるのか、日本の農業技術との競争や協力関係はどう変化していくのかも気になるところです。皆さんは、こうした農業の自動化・スマート化をどのように感じますか?