ナレンドラ・モディ首相は土曜日、ET World Leaders Forum 2025での講演で、インドが間もなく独自の宇宙ステーションを持つと発表した。
モディ首相は過去11年間で60以上の宇宙ミッションが完了したと述べ、2025年に宇宙ドッキング技術を習得したと明かした。現在インドはガガンヤーン計画を通じて宇宙飛行士を宇宙に送る準備を進めており、シュブハンシュ・シュクラ群司令の経験を活用する予定である。
インドの宇宙スタートアップ企業数は2014年の1社から現在350社を超えている。モディ首相は半導体工場の建設についても言及し、2025年末までに初のメイド・イン・インディア・チップが市場に投入されると発表した。
ジテンドラ・シン連邦科学技術大臣は先にバーラト・マンダパムでの国家宇宙の日プログラムで、2040年までにインド人が月面からViksit Bharat 2047を発表すると述べた。
【編集部解説】
モディ首相の宇宙ステーション構想発表は、インドが宇宙開発において新たなフェーズに入ったことを示す重要な転換点です。現在、独自の宇宙ステーションを運用している国は中国のみで、国際宇宙ステーション(ISS)は国際協力の産物です。インドが独立して宇宙ステーションを運用すれば、世界で4番目の国になります。
特筆すべきは、具体的なタイムラインが示されている点です。ISROのV・ナラヤナン議長によると、「バラティヤ・アントリクシュ・ステーション(BAS)」の第1モジュールは2028年に打ち上げられ、2035年までに完全運用開始予定となっています。これは決して遠い未来の話ではありません。
宇宙ドッキング技術の習得は、宇宙ステーション建設に不可欠な技術です。この技術により、複数のモジュールを軌道上で連結し、段階的に宇宙ステーションを拡張できます。現在、この技術を持つのは米国、ロシア、中国のみで、インドは4番目の国となったのです。
ガガンヤーン計画の進展も見逃せません。2025年12月に実施予定の初回無人試験飛行では、約1万件のテストのうち既に80%が完了しています。成功すれば、インドは独自の有人宇宙飛行能力を持つ4番目の国になります。
スタートアップ企業の爆発的成長も注目に値します。2014年にわずか1社だった宇宙関連スタートアップが、現在は350社を超えています。Skyroot、Agnikul、Pixxelといった企業は、衛星打ち上げから地球観測まで幅広い分野でISROと協力しています。政府は1,000億ルピーのベンチャーキャピタルファンドを設立し、この成長を後押ししています。
半導体チップの国産化も戦略的に重要です。28-90ナノメートルのチップは通信、自動車、鉄道、電力システムに使用されており、インドの技術的自立に直結します。宇宙産業においても、高品質な半導体は人工衛星や宇宙船の制御システムに不可欠です。
しかし課題も存在します。技術的複雑性、巨額の資金調達、国際的な技術制裁のリスク、そして人材育成などです。また、2040年の月面着陸目標は野心的ですが、技術的ハードルは極めて高いのが現実です。
長期的な視点では、この計画はインドの地政学的地位を大きく変える可能性があります。宇宙技術は国防、通信、気象予測、災害監視など国家安全保障に直結する分野です。独自の宇宙ステーション保有は、インドが真の宇宙大国として認知される象徴的な意味を持ちます。
【用語解説】
宇宙ドッキング技術
軌道上で2つの宇宙船やモジュールを結合させる高度な技術。宇宙ステーション建設や補給ミッションに不可欠である。現在は米国、ロシア、中国、インドの4カ国のみが保有する。
Bharatiya Antariksh Station(BAS)
インドが計画する独自の宇宙ステーション。2028年に第1モジュール打ち上げ、2035年に完全運用開始予定。重量20トンで、3人の宇宙飛行士が15日間滞在可能な設計となっている。
Viksit Bharat 2047
モディ政権が掲げるインド独立100周年(2047年)までに先進国入りを目指す国家ビジョン。宇宙分野では月面からこのビジョンを発表する計画が示されている。
半導体ファブ(Fabrication)
半導体チップを製造する工場。インドでは現在建設中で、28-90ナノメートルプロセスのチップ生産を予定している。
【参考リンク】
インド宇宙研究機関(ISRO)(外部)
インドの国立宇宙機関。主要な宇宙ミッションを統括し宇宙ステーション建設計画も推進
インド首相官邸(外部)
モディ首相の公式サイト。国家宇宙の日での演説や宇宙政策の公式発表を掲載
【参考記事】
PM Modi, ISRO unveil India’s ambitious space plan(外部)
バラティヤ・アントリクシュ・ステーションの2028年第1モジュール打ち上げ詳報
National Space Day: India’s Space Startups Grow From 2 To 350(外部)
2014年の1社から350社超への宇宙スタートアップ急成長過程の詳細分析
ISRO to Conduct First Gaganyaan Test Flight in December 2025(外部)
1万件のテストうち80%完了、2025年12月初回無人試験飛行の進捗詳報
Made-in-India semiconductor chip coming by 2025-end(外部)
28-90ナノメートルプロセス国産半導体チップの2025年末市場投入計画
【編集部後記】
インドが宇宙ステーション建設を発表したこのタイミングで、皆さんは日本の宇宙開発の現在地についてどう感じられますか。インドの民間宇宙企業が2014年から350社へと爆発的に成長している一方、日本の宇宙スタートアップはまだ数十社規模にとどまっています。
また、2040年という具体的な年限を示してムーンショットを掲げるインドの政治的意志の強さも印象的です。私たちにとって、この動きは脅威なのか、それとも共創の機会なのでしょうか。皆さんのお考えをぜひお聞かせください。