ジェームズ・ウェッブ望遠鏡が捉えた星間天体3I/ATLAS 異常なCO2放出で科学者困惑

[更新]2025年8月30日09:59

ジェームズ・ウェッブ望遠鏡が捉えた星間天体3I/ATLAS 異常なCO2放出で科学者困惑 - innovaTopia - (イノベトピア)

8月13日に報じた星間天体3I/ATLASの「エイリアン探査機説」から約半月が経過し、NASAのジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡とSPHERX観測所による詳細な化学分析結果が新たに公表された。

今回は、この直径12マイル(約19キロメートル)の天体が従来の推定を大幅に上回る規模を持ち、通常の彗星とは全く異なる化学組成を示していることが判明。水の放出量がCO2のわずか5%という異常な特徴が科学界に衝撃を与えている。

前回報道時点では理論的推測に基づく議論が中心だったが、今回は世界最高峰の宇宙望遠鏡による実際の観測データに基づく具体的な化学分析結果となっており、ハーバード大学のアヴィ・ローブ氏が提唱した「設計された軌道」仮説により強固な科学的根拠を提供する形となった。

特に注目すべきは、この天体が二酸化炭素の雲に完全に覆われており、その内部構造の解析を困難にしている点である。

From: 文献リンクManhattan-sized interstellar object is covered in a layer of CO2, shocking scientists, NASA images reveal

【編集部解説】

今回の3I/ATLAS発見は、天文学界において極めて重要な意味を持っています。これまでに発見された星間天体はわずか3つしかなく、2017年の1I/オウムアムア、2019年の2I/ボリソフに続く貴重な発見です。

この天体の最も興味深い特徴は、その化学組成にあります。通常の彗星では水の放出が主体となるのに対し、3I/ATLASは大量のCO2を放出している一方で、水の放出はCO2のわずか5%という極めて異常な比率を示しています。NASAのSPHEREx観測所による詳細な分析では、CO2コマが少なくとも34万8千マイル(約56万キロメートル)まで広がっていることが確認されました。

技術的な観点から見ると、今回の発見はジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡とSPHERExの観測能力の高さを実証するものでもあります。特にSPHERExの分光観測技術により、CO2の明確な検出が可能となり、広視野により大規模なコマの構造を詳細にマッピングできました。

この発見が持つより深い意味は、他の恒星系の形成過程の理解につながることです。3I/ATLASの化学組成を太陽系の天体と比較することで、約46億年前の太陽系形成時の条件と、他の恒星系の形成条件の違いを解明できる可能性があります。

観測上の制約も重要な要素です。10月30日の太陽最接近時に、この天体は太陽の裏側を通過するため、最適な観測機会を逸してしまいます。そのため、現在から9月末までが貴重な観測期間となっており、世界中の天文台が集中的に観測を行っています。

ハーバード大学のアヴィ・ローブ氏が指摘する「この天体が自然物ではない」という仮説は、科学界で議論を呼んでいます。この大きさの星間天体が地球にこれほど接近する確率は統計的に極めて低く、偶然を超えた何らかの要因が関与している可能性も考えられています。

長期的な視点では、この発見は星間天体の探査技術向上への道筋を示しています。将来的に同様の天体がより頻繁に発見されれば、銀河系内の恒星系間の物質交換や、生命の構成要素となる化学物質の宇宙における分布について、より深い理解が得られるでしょう。

【用語解説】

3I/ATLAS
これまでに発見された3番目の星間天体で、太陽系外から飛来した彗星である。2025年にチリ上空で初めて観測された。直径約12マイル(約19キロメートル)の大きさを持つ。

アウトガス
彗星が太陽に近づく際に、表面の氷や固体物質が昇華して気体となり放出される現象である。通常の彗星では水蒸気が主体となるが、3I/ATLASでは二酸化炭素が主要成分となっている。

星間天体
太陽系外の恒星系から飛来し、太陽系を通過する天体である。これまでに発見されたのは2017年の1I/オウムアムア、2019年の2I/ボリソフ、そして今回の3I/ATLASの3つのみである。

コマ
彗星の核から放出されたガスや塵が形成する雲状の領域である。3I/ATLASの場合、CO2コマが約34万8千マイル(約56万キロメートル)にわたって広がっている。

【参考リンク】

NASA James Webb Space Telescope(外部)
NASAが運用する世界最大の宇宙望遠鏡の公式サイト。赤外線観測により宇宙の初期から現在までの歴史を研究している

NASA SPHEREx Mission(外部)
2025年3月に打ち上げられたNASAの全天赤外線分光観測衛星の公式サイト。102の異なる波長で全天を観測

NASA JPL(外部)
NASAジェット推進研究所の公式サイト。SPHERExミッションの管理を担当し、深宇宙探査や宇宙望遠鏡の開発・運用を行う

【参考記事】

SPHEREx Discovers Extended Carbon Dioxide Coma in Interstellar Comet 3I/ATLAS(外部)
SPHEREx観測所による3I/ATLASのCO2コマの詳細観測結果。コマが56万キロメートルまで広がることを報告

James Webb telescope images reveal there’s something strange with interstellar comet 3I/ATLAS(外部)
ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による3I/ATLASの初回観測結果。通常の彗星とは大きく異なる化学組成を詳細に分析

NASA’s Webb Space Telescope Observes Interstellar Comet(外部)
NASA公式ブログによる3I/ATLAS観測の技術的詳細。ウェッブ望遠鏡の赤外線観測能力により星間天体の化学組成分析が可能に

As NASA Missions Study Interstellar Comet, Hubble Makes Size Estimate(外部)
ハッブル宇宙望遠鏡による3I/ATLASのサイズ推定結果。複数のNASAミッションによる協力観測体制と包括的な天体分析手法を詳述

【編集部後記】

今回の3I/ATLAS発見は、私たちが宇宙における「隣人」について知る貴重な機会を与えてくれました。他の恒星系から来た天体の化学組成を調べることで、太陽系とは異なる環境で形成された物質の特徴を知ることができます。

みなさんは、この発見をきっかけに、どのような宇宙の謎に興味を持たれるでしょうか。星間天体の軌道が本当に「設計された」可能性があるのか、それとも私たちがまだ理解していない自然現象があるのか。10月の最接近時には観測が困難になってしまいますが、この短い観測期間に得られるデータが、私たちの宇宙観をどのように変えていくのか、一緒に見守っていけたらと思います。

投稿者アバター
omote
デザイン、ライティング、Web制作を行っています。AI分野と、ワクワクするような進化を遂げるロボティクス分野について関心を持っています。AIについては私自身子を持つ親として、技術や芸術、または精神面におけるAIと人との共存について、読者の皆さんと共に学び、考えていけたらと思っています。

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