株式会社スマイルズは2025年11月10日正午、JAXAによる火星衛星探査計画「MMX」の応援メッセージを募集する特設サイトを公開した。
メッセージは2026年度に種子島宇宙センターから打ち上げるMMX探査機に搭載され、2031年の地球帰還まで火星衛星探査を共にする。募集期間は2025年11月10日から2026年1月18日まで。MMXは火星の衛星フォボスの表面物質を採取し地球に持ち帰る世界初の火星圏サンプルリターンミッションである。
探査機は高さ約5メートル、全長約9メートルで、フォボスの地形・内部構造・組成・重力などを観測する。JAXA、NASA、ESA、CNES、DLRなど世界の研究機関が参加する国際プロジェクトである。
特設サイトでは菅野よう子、小川哲、矢野顕子、江﨑文武、松島倫明ら著名人からの応援メッセージも公開されている。
From:
JAXA火星衛星探査計画「MMX」への応援メッセージを大募集!2026年度打上げ時にメッセージを搭載します。#グッドラックMMX
【編集部解説】
このキャンペーンの背景には、日本の宇宙探査における大きな転換点があります。2020年の「はやぶさ2」による小惑星リュウグウからのサンプルリターン成功は、世界中に衝撃を与えました。MMXはその技術を火星重力圏という、より過酷な環境へ応用する挑戦です。
火星の衛星フォボスの起源を巡っては、長年2つの仮説が対立してきました。1つは「小惑星が火星の重力に捕獲された」とする捕獲説、もう1つは「古代の火星に天体が衝突し、その破片から形成された」とする巨大衝突説です。フォボスの外観は小惑星に似ていますが、軌道は火星赤道面に沿った規則的なものとなっており、どちらの説も決定的な証拠を欠いています。
MMXが持ち帰る10グラム以上のサンプルには、火星表面から隕石衝突で飛散した物質が含まれている可能性があります。つまり、フォボスの起源を解明するだけでなく、火星本体の化学組成や歴史も同時に明らかになる可能性があるのです。
2026年度の打ち上げから2031年の帰還まで約5年間、応援メッセージは探査機とともに火星圏を旅します。このキャンペーンは単なる広報活動ではなく、国民が宇宙探査に参加する新しい形と言えるでしょう。菅野よう子氏や小川哲氏といった著名クリエイターの参加は、科学とカルチャーの融合を象徴しています。
NASAやESAなど世界の研究機関が参加する国際プロジェクトとして、MMXは日本の宇宙開発における主導的地位を示すものでもあります。はやぶさ2で確立した惑星間往復飛行技術を、さらに遠い火星圏で実証することは、将来の有人火星探査に向けた重要なステップとなります。
【用語解説】
MMX(Martian Moons eXploration)
火星衛星探査計画の略称。JAXAが主導する国際プロジェクトで、火星の衛星フォボスからサンプルを採取し地球に持ち帰る世界初のミッションである。2026年度打ち上げ、2031年帰還予定。
フォボス
火星の2つの衛星のうち内側を公転する衛星。直径約22kmの不規則な形状を持ち、火星から約6,000km離れた軌道を周回している。その起源は小惑星捕獲説と巨大衝突説の2つの仮説があり、MMXの主な調査対象となる。
サンプルリターン
宇宙探査機が天体の物質を採取し地球に持ち帰るミッション形態。2020年のはやぶさ2による小惑星リュウグウからのサンプルリターン成功に続き、MMXは火星重力圏からのサンプルリターンに挑戦する。
準衛星軌道(QSO)
探査機が衛星の周りを周回する特殊な軌道。MMXはフォボスの準衛星軌道に入り、詳細な科学観測を行った後、表面に着陸してサンプルを採取する。
種子島宇宙センター
鹿児島県種子島にあるJAXAのロケット打ち上げ施設。日本の大型ロケット打ち上げの中心拠点であり、MMXもここから打ち上げられる予定である。
【参考リンク】
火星衛星探査計画MMX 公式サイト(外部)
JAXAによるMMXミッションの公式サイト。ミッション概要、科学目標、探査機の仕様、国際協力の詳細などを日本語と英語で提供している。
#グッドラックMMX 応援メッセージキャンペーン特設サイト(外部)
2025年11月10日に公開された応援メッセージ募集サイト。2026年1月18日まで募集を行い、送信したメッセージの搭載証明書をダウンロードできる。
JAXA 宇宙科学研究所(外部)
日本の宇宙科学研究の中核機関。MMXプロジェクトを含む惑星探査、天文観測、宇宙物理学の研究を推進している。はやぶさシリーズなど数多くの宇宙探査ミッションを成功させてきた実績を持つ。
スマイルズ株式会社(外部)
東京都目黒区に本社を置く企業。今回のMMX応援キャンペーンにおいて、JAXAからの委託を受けて企画・構成・WEBサイト制作、コミュニケーションデザインを担当している。
【参考記事】
Origin of Phobos and Deimos Awaiting Direct Exploration(外部)
フォボスとダイモスの起源に関する科学論文。2つの衛星の形成に関する捕獲説と巨大衝突説を詳しく比較検証し、MMXミッションの科学的重要性を論じている。
MMX, Japan’s Martian Moons eXploration mission(外部)
惑星協会によるMMXミッション解説記事。10グラム以上のサンプル採取目標、火星物質が含まれる可能性、ミッションの科学的意義を詳述している。
Preliminary design of Martian Moons eXploration (MMX)(外部)
MMX探査機の予備設計に関する技術論文。探査機システムの詳細仕様、推進システム、通信システム、サンプリング機構などの工学的設計について解説している。
【編集部後記】
2031年、5年間の火星圏への旅を終えたMMXが地球に帰還する日、あなたは何をしているでしょうか。もし今メッセージを送れば、その言葉は探査機とともに1億キロ以上の旅を経験し、未来のあなたへ届きます。
宇宙探査は遠い世界の話ではなく、私たち一人ひとりが参加できる物語です。菅野よう子さんや小川哲さんといったクリエイターたちも、それぞれの視点でMMXにエールを送っています。2026年1月18日までの募集期間、あなたも火星圏へ向かう旅の一部になってみませんか。
























