JA共済アプリに防災訓練機能追加|スマホで災害疑似体験、LINEで「防災を贈る」新機能

[更新]2025年9月2日11:26

JA共済アプリに防災訓練機能追加|スマホで災害疑似体験、LINEで「防災を贈る」新機能 - innovaTopia - (イノベトピア)

JA共済連は2025年8月28日、スマートフォンで災害発生時の行動から生活再建までを疑似体験できる『デジタル防災訓練』をJA共済アプリ内で公開した。

これは防災の日である9月1日に合わせた公開で、防災意識を高めることを目的としている。JA共済連において、全国の20歳~60歳の男女計5,000人を対象に実施した『防災に関する意識調査』で約9割が防災訓練の重要性を認識する一方で、約7割が3年以上防災訓練を行っていないとの調査結果があり、防災訓練休眠人口が約6,500万人であると推計されている。災害リスク評価研究所代表の松島康生氏は、デジタル防災訓練の公開により防災が集団型から個人型へ移行すると指摘する。

2025年8月28日から10月31日までの期間中に訓練を体験しアンケートに回答した利用者には防災用品カタログギフトが抽選で2,000名に当たるキャンペーンも実施している。

From: 文献リンク『デジタル防災訓練』をJA共済アプリで公開

【編集部解説】

今回のJA共済連による『デジタル防災訓練』の公開は、防災教育のデジタルトランスフォーメーション(DX)における重要な転換点として捉える必要があります。

従来の防災訓練といえば、学校や地域コミュニティが主催する集団参加型が主流でした。しかし、この新しいアプローチは「個人型防災訓練」という概念を実現しています。スマートフォンというインフラを活用することで、時間や場所の制約を取り払い、防災訓練のアクセシビリティを劇的に向上させた点は特筆すべきです。

注目すべき技術的特徴として、このシステムは単なる知識習得にとどまらず、「災害発生から生活再建まで」という一連のプロセスを疑似体験できる設計になっています。これは従来の避難経路確認や初期対応に留まっていた防災訓練から、復興フェーズまでを含む包括的な災害対応能力の育成への進化を意味します。

特徴的なのは、LINEを通じた「防災訓練を贈る」機能です。この仕組みは、防災を個人の問題から社会的なコミュニケーションツールへと変換しています。心理学的な観点から見ると、「自分のため」より「誰かのため」という動機の方が行動変容につながりやすいという知見を活用した優れたUXデザインといえるでしょう。

一方で、デジタル化に伴う潜在的な課題も考慮する必要があります。スマートフォン操作に不慣れな高齢者層や、デジタルデバイドによって取り残される可能性のある層への配慮が重要です。また、仮想体験と実際の災害時の対応には大きな差があることも認識しておく必要があります。

このイニシアチブの社会的インパクトは相当なものです。約6,500万人という「防災訓練休眠人口」の存在は、日本の防災体制における深刻な課題を浮き彫りにしています。この数字は日本の総人口の約半数に相当し、従来の防災教育アプローチの限界を明確に示しています。

長期的な視点で見ると、このような個人型デジタル防災訓練の普及は、防災教育の標準化と品質向上に大きく寄与する可能性があります。AIやVRといった次世代技術との融合により、さらにリアルで効果的な防災教育プラットフォームへの発展も期待されます。

【用語解説】

デジタル防災訓練
スマートフォンなどのデジタルデバイスを用いて、災害発生から復旧までの一連のプロセスを仮想的に体験できる訓練システムである。従来の集団型防災訓練とは異なり、個人が任意の時間・場所で実施可能な新しい防災教育手法として注目されている。

災害リスク評価研究所
松島康生氏が代表を務める防災コンサルティング機関である。地震被害想定調査やハザードマップ作成、地域防災計画策定などの業務を手がけており、企業や自治体向けに災害リスク調査・対策支援を提供している。

【参考リンク】

JA共済連 公式サイト(外部)
全国共済農業協同組合連合会の公式ウェブサイト。共済商品の案内や災害対応情報、今回のデジタル防災訓練に関する詳細情報を提供している。

JA共済 防災総合サイト(外部)
「大切な人につなげる 防災のわ」をコンセプトに、防災に関する体験・知識・学習コンテンツを集約したサイト。親子向けの自由研究キットも無料公開されている。

デジタル防災訓練 専用ページ(外部)
JA共済アプリ内で提供されるデジタル防災訓練の詳細説明や体験方法、キャンペーン情報を掲載している専用ページ。

【参考記事】

What Japan can teach the world about disaster preparedness(外部)
世界経済フォーラムが発表した記事で、日本の災害対策技術とデジタル化の取り組みについて詳述。日本の先進的なアプローチが世界のモデルになると評価。

Japan Disaster Risk Reduction(外部)
米国商務省による日本の災害対策投資に関する分析記事。日本政府が年間総額130億ドル以上を災害関連予算に充てている実態を報告。

Impact of virtual reality training on nurses’ preparedness(外部)
2025年8月発表の医療従事者向けVR災害訓練の効果に関する学術論文。VR訓練が災害準備能力と自己効力感の大幅な向上をもたらすことを証明。

Japanese Survey on Disaster Preparedness Reveals(外部)
日本の防災意識に関する大規模調査(20万人対象)の結果を報告。災害時の安否確認に対する懸念が回答者の3分の2に上ることを明らかに。

Disaster Response Researchers Test Virtual Reality Tool With Older Adults(外部)
米国国立科学財団から54万9,943ドルの資金を得て実施されている高齢者向けVR災害訓練プロジェクトについて報告。

【編集部後記】

今回のJA共済連のデジタル防災訓練を見て、皆さんはいつ最後に防災訓練に参加されたか覚えていますか?もしかすると、私たちの多くが「防災訓練休眠人口」に含まれているかもしれません。

スマートフォンで気軽に防災を学べる時代になったとはいえ、実際の災害時に本当に役立つのかという疑問もあります。皆さんは、デジタル技術を活用した防災教育と従来の集団訓練、どちらがより効果的だと思われますか?

また、「誰かのために防災を学ぶ」という新しいアプローチについて、大切な人に防災訓練を「贈る」という発想をどう感じられるでしょうか?テクノロジーが人と人をつなぐツールとして防災分野でも活用される未来について、一緒に考えてみませんか。

投稿者アバター
omote
デザイン、ライティング、Web制作を行っています。AI分野と、ワクワクするような進化を遂げるロボティクス分野について関心を持っています。AIについては私自身子を持つ親として、技術や芸術、または精神面におけるAIと人との共存について、読者の皆さんと共に学び、考えていけたらと思っています。

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