Last Updated on 2025-03-21 10:05 by admin
オープンソースの画像編集ソフト「GIMP」が7年ぶりとなる大型アップデート「GIMP 3.0」を正式リリースした。GIMP(GNU Image Manipulation Program)は2018年以来の主要アップデートとなる。
主な変更点は以下の通りである
- GTK3グラフィカルユーザーインターフェイスライブラリへの移行(旧GTK2から)
- 非破壊編集機能の導入(フィルターや画像調整をリアルタイムでプレビュー可能)
- 複数レイヤーの同時選択機能
- テキスト処理の改善(輪郭、影、ベベルなどのスタイル適用が可能)
- LinuxシステムでのWaylandサポート
- HiDPIディスプレイサポートの改善
- ワコムタブレットとの統合強化
- プラグインエコシステムの拡張(Python 3、JavaScript、Lua、Valaによる拡張機能をサポート)
- ファイル形式の互換性向上(BC7 DDSファイルのサポート、PSDエクスポート機能の改善)
- カラーマネジメントの強化
GIMP 3.0は現在GNU/Linux、macOS、Windowsで利用可能で、公式ウェブサイトからダウンロードできる。
GIMP開発チームは3.Xシリーズのリリースサイクルを加速させる計画を持っており、GIMP 3.2は1年以内にリリースされる予定である。各バージョンで導入される新機能が少なくても、より頻繁にアップデートを提供する方針を示している。
from:Open source image editor GIMP makes comeback after seven years
【編集部解説】
7年もの開発期間を経て、ついにGIMP 3.0がリリースされました。この大型アップデートは、単なる機能追加にとどまらず、GIMPの根幹部分から刷新された画期的なバージョンアップと言えるでしょう。
まず注目すべきは、GUIライブラリがGTK2からGTK3へと移行したことです。これにより、高解像度ディスプレイでの表示が大幅に改善され、特にクリエイティブワークで重要となる細部の視認性が向上しました。また、LinuxユーザーにとってはWaylandのネイティブサポートが追加されたことで、最新のディスプレイサーバー環境でもスムーズに動作するようになっています。
非破壊編集機能の導入も大きな進化です。これまでのGIMPでは、フィルターを適用すると元に戻すことが難しく、試行錯誤が制限されていました。新バージョンでは、フィルターやエフェクトをリアルタイムでプレビューできるようになり、クリエイティブな作業の自由度が格段に高まっています。この機能はAdobe Photoshopなどの商用ソフトでは当たり前とされていた機能ですが、オープンソースソフトウェアでも同等の機能が実現されたことは、デジタルクリエイションの民主化という観点から非常に意義深いことです。
複数レイヤーの同時選択機能も、プロフェッショナルなワークフローにとって重要な追加機能です。これまでは各レイヤーを個別に操作する必要がありましたが、今回のアップデートでは複数のレイヤーをまとめて選択し、一括で移動や変形、エフェクトの適用ができるようになりました。これにより、複雑な合成作業や調整作業の効率が飛躍的に向上します。
テキスト処理の改善も見逃せません。テキストに輪郭、影、ベベルなどのスタイルを適用できるようになり、デザイン作業の幅が広がりました。これまでGIMPでテキスト処理を行う際には制限が多く、別のソフトウェアと併用するケースも少なくありませんでしたが、この改善によりGIMP単体でより多くの作業が完結できるようになります。
プラグインエコシステムの拡張も重要なポイントです。Python 3、JavaScript、Lua、Valaなど複数のプログラミング言語による拡張機能をサポートすることで、開発者コミュニティによる機能拡張の可能性が広がりました。オープンソースソフトウェアの強みは、まさにこうしたコミュニティによる継続的な改善にあります。
ファイル互換性の向上も実務的な観点から重要です。特にPSDファイルのエクスポート機能が改善されたことで、Photoshopユーザーとの協業がスムーズになります。また、カラーマネジメントが強化されたことで、印刷業界など色管理が重要な分野でも活用の幅が広がるでしょう。
今回のアップデートは、オープンソースソフトウェアが商用ソフトウェアと遜色ない機能を提供できることを示す好例となっています。特に画像編集ソフトは月額制のサブスクリプションモデルが主流となる中、無料で高機能なツールが選択肢として存在することは、クリエイターにとって大きな意味を持ちます。
GIMP開発チームは今後のリリースサイクルを加速させる計画を発表しており、GIMP 3.2は1年以内にリリースされる予定です。これまでの長いリリースサイクルから脱却し、より迅速な機能改善を目指す姿勢は、ユーザーフィードバックを重視する開発方針の表れと言えるでしょう。
テクノロジーの民主化という観点から見ると、GIMP 3.0のリリースは単なるソフトウェアのアップデート以上の意味を持ちます。高価な商用ソフトウェアに頼ることなく、クオリティの高いデジタルコンテンツを制作できる環境が整うことで、より多くの人々がクリエイティブな表現に挑戦できるようになるのです。
今後は、AIを活用した画像生成・編集機能の統合など、さらなる進化が期待されます。オープンソースコミュニティの力を結集したGIMPの発展に、引き続き注目していきましょう。
【用語解説】
GIMP(GNU Image Manipulation Program):
1995年に初版がリリースされた歴史あるオープンソースの画像編集ソフトウェア。商用の画像編集ソフトであるAdobe Photoshopの代替として広く利用されている。無料で利用できるのが最大の特徴である。
GTK(The GIMP Toolkit):
もともとGIMPのユーザーインターフェイスを構築するために開発されたオープンソースのGUIライブラリ。現在では多くのクロスプラットフォームアプリケーションで採用されている。GTK3への移行により、GIMPのユーザーインターフェイスは大幅に改善された。
非破壊編集:
元のデータを変更せずに画像編集を行う手法。例えるなら、原画に直接色を塗るのではなく、透明なフィルムを重ねて描き、必要に応じてフィルムを取り外したり調整したりできるようなもの。GIMPでは3.0からこの機能が導入され、フィルターの適用をリアルタイムでプレビューできるようになった。
Wayland:
Linuxシステムで使用される新しいディスプレイサーバープロトコル。従来のX11に代わるもので、より高速で安全な描画処理を実現する。GIMP 3.0ではWaylandのネイティブサポートが追加された。
HiDPI:
高解像度ディスプレイ技術。一般的なディスプレイよりも高い画素密度を持ち、より鮮明で詳細な表示が可能。GIMP 3.0ではHiDPIサポートが改善され、高解像度ディスプレイでの表示品質が向上した。
ワコムタブレット:
デジタルペンを使って直感的に描画や編集ができる入力デバイス。イラストレーターやデザイナーに広く使われている。GIMP 3.0ではワコムタブレットとの統合が強化され、より自然な描画体験が可能になった。
【参考リンク】
GIMP公式サイト(外部)
オープンソース画像編集ソフト「GIMP」の公式サイト。最新バージョンのダウンロードやドキュメント、チュートリアルなどが提供されている。
ワコム公式サイト(外部)
ペンタブレットの世界的メーカーであるワコムの公式サイト。GIMP 3.0との互換性が向上した各種タブレット製品の情報が掲載されている。
GTKプロジェクト(外部)
GIMPのインターフェースの基盤となっているGTKライブラリの公式サイト。開発者向けの情報が豊富に掲載されている。
【編集部後記】
みなさん、デジタル画像編集に興味はありますか?プロのデザイナーからホビーユーザーまで、画像編集は現代のデジタルライフに欠かせないスキルになっています。しかし、高価な商用ソフトウェアの価格に躊躇している方も多いのではないでしょうか。
今回紹介したGIMP 3.0は、そんな方々にとって絶好の選択肢となるでしょう。完全無料でありながら、プロフェッショナルな作業にも耐えうる機能を備えています。特に、非破壊編集やマルチレイヤー選択など、これまでGIMPに足りないと言われていた機能が追加されたことで、使い勝手が大幅に向上しています。
デジタルクリエイションの敷居を下げるオープンソースソフトウェアの進化は、より多くの人々が創造性を発揮できる環境を作り出します。この機会に、GIMP 3.0をダウンロードして、あなたのクリエイティブな可能性を広げてみてはいかがでしょうか。