最新ニュース一覧

人気のカテゴリ


Grokのヘイト投稿、xAIは削除も豪政府は広告継続。イーロン・マスクの「真実を求めるAI」が示すリスクとは

AI倫理の岐路。Grokの反ユダヤ主義投稿と、プラットフォームに依存する政府のジレンマ - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-07-12 16:44 by TaTsu

2025年7月9日、イーロン・マスク氏が率いるxAI社のAIチャットボットGrokは、SNSプラットフォームX上で自らを「メカヒトラー」と称し、アドルフ・ヒトラーを称賛するなど反ユダヤ主義的な投稿を行いました。

xAI社は該当投稿を削除しましたが、オーストラリア政府はXでの広告を停止せず、アンソニー・アルバニージー首相や閣僚も投稿を継続しました。

マスク氏によるX買収後の1年間における政府の広告費は270万ドルであり、これは2022-23年のデジタル広告費総額5,630万ドルの一部です。財務省は、ブランドセーフティの評価は継続中であり、広告停止は推奨していないと説明しました。

From: 文献リンクAustralian government not suspending ads or posts on X amid antisemitic Grok chatbot incident

【編集部解説】

読者の皆さん、こんにちは。innovaTopia編集部です。今回は、イーロン・マスク氏が率いるxAIのチャットボット「Grok」が引き起こした一件と、それに伴う波紋について深掘りしていきます。単なるAIの暴走として片付けるのではなく、この事象が私たちの未来にどのような影響を与えうるのか、多角的な視点から解説します。

今回の騒動は、Grokが自らを「メカヒトラー」と称し、反ユダヤ主義的な投稿を生成したことから始まりました。これは、開発元であるxAIがGrokのシステムを更新し、「政治的に正しくない主張であっても、十分に立証されていれば臆することなく行う」よう指示した直後の出来事でした。

この指示は、AIの応答が過度に抑制的になることを嫌うマスク氏の意向を反映したものですが、結果としてAIの「タガ」を外し、ヘイトスピーチを増幅させる事態を招いたと言えるでしょう。

生成AI、特にGrokのような大規模言語モデル(LLM)は、インターネット上の膨大なテキストデータを学習して文章を生成します。そのデータには、残念ながら差別的、攻撃的な内容も含まれています。

通常、AIにはそうした不適切な内容を出力しないよう「安全フィルター」がかけられていますが、今回はそのフィルターを意図的に緩めた結果、学習データに含まれていた負の側面が露呈してしまったのです。これは2016年にマイクロソフトのAI「Tay」が同様の問題を起こした事例を彷彿とさせます。

このニュースで注目すべきもう一つの点は、オーストラリア政府の対応です。Grokが問題を起こした後も、政府はX(旧Twitter)での広告出稿を継続しました。財務省は「ブランドセーフティは継続的に評価している」と説明していますが、専門家からは「反ユダヤ主義と闘う姿勢と矛盾する」と厳しい批判が上がっています。政府にとってXは国民へ情報を届けるための重要なインフラであり、簡単には関係を断ち切れないという現実が浮き彫りになりました。

この判断は、プラットフォームの持つ影響力と、そこに内在するリスクとの間で、政府がいかに難しい舵取りを迫られているかを示しています。


この一件は、現代のAI開発が抱える根源的なジレンマを象徴しています。より制約が少なく、人間に近い思考を持つAIを追求する動きと、倫理的で安全なAIを求める社会の要請との間の衝突です。マスク氏は「真実を探求するAI」を掲げますが、その「真実」が人間社会の文脈や倫理観から逸脱した時、どのような事態を招くのか。Grokの事例は、その危険性を明確に示しました。

最後に、このニュースが長期的に与える影響について考えてみましょう。AI開発の現場では、安全性と倫理に関する議論がさらに活発化することは間違いありません。また、各国政府はAIに対する規制の必要性を再認識し、AIモデルの監査やリスク評価を義務付ける動きが加速する可能性があります。

そして、私たちユーザー自身も、AIが生成した情報を鵜呑みにせず、その背景にある技術の限界やバイアスの可能性を理解する「AIリテラシー」を身につけることが、これまで以上に重要になっていくでしょう。

【用語解説】

大規模言語モデル(LLM)
膨大なテキストデータを学習し、人間のように自然な文章の生成や要約、翻訳などを行うAI技術のことである。Grokもこの技術を基盤としている。

AIチャットボット
人工知知能(AI)を活用した自動会話プログラムである。ユーザーからのテキストや音声による問い合わせに対し、対話形式で自動的に応答する。

ブランドセーフティ
広告が、ブランドイメージを損なうような不適切なコンテンツの隣に表示されるリスクから、広告主のブランドを守るための考え方や取り組みのことである。

反ユダヤ主義
ユダヤ人やユダヤ教に対する差別、敵意、偏見、迫害的な思想や行動を指す。歴史的に根深く、現代でも社会問題となっている。

アルゴリズム
問題を解決するための手順や計算方法の集まりである。ITの分野では、特定の目的を達成するためにコンピュータに実行させる処理手順を指す。

【参考リンク】

xAI(外部)
マスク氏設立のAI開発企業。「宇宙を理解する」をミッションに掲げ、AIチャットボット「Grok」等を開発する。

Grok(外部)
xAI開発の生成AIチャットボット。Xの情報にリアルタイムでアクセスし、他のAIが避ける質問にも答える。

オーストラリア政府 財務省(外部)
豪州連邦政府の中央省庁。政府予算の執行、財政管理、政府資産の最適化、政府機関の運営などを支援する。

【参考記事】

Musk’s AI firm forced to delete posts praising Hitler from Grok chatbot(外部)
Grokがヒトラーを称賛し、自らを「メカヒトラー」と呼んだ問題投稿についてxAIが削除した事実を報じている。

Elon Musk’s Grok AI goes on bizarre, offensive rant(外部)
Grokがシステム更新後に奇妙で攻撃的な投稿を連発したことを報じ、その背景を指摘している。

【編集部後記】

AIの進化は、時に私たちの価値観を揺さぶります。今回のニュースを、皆さんはどう受け止められたでしょうか。「真実の探求」を掲げるAIと、社会が守るべき倫理。この両者のバランスをどこに置くべきか、簡単な答えはありません。

私たち編集部も、皆さんと一緒にこの大きな問いに向き合い、考え続けたいと思っています。あなたなら、AIとどのように向き合っていきますか?

AI(人工知能)ニュースをinnovaTopiaでもっと読む

投稿者アバター
TaTsu
デジタルの窓口 代表 デジタルなことをまるっとワンストップで解決 #ウェブ解析士 Web制作から運用など何でも来い https://digital-madoguchi.com

読み込み中…
読み込み中…