Last Updated on 2025-07-29 10:30 by さつき
Meta Reality Labsは2025年7月23日、16チャンネル・2 kHz・12ビットで筋電信号を取得する表面筋電図研究デバイス「sEMG-RD」をNature誌で発表した。
リストバンド型端末がBluetooth経由で信号を送信し、個別調整なしに手書き20.9語/分とピンチ操作を実現、モデル個人化で速度を約16%向上できる。数千人のデータを学習し、300人分・100時間超の記録が公開され研究を促進している。
From:
Meta demo sEMG wristband for UI breakthrough
【編集部解説】
人とコンピューターの境界を曖昧にする非侵襲型インターフェースとして、sEMG-RDは脳インプラントより安全で、カメラ依存のジェスチャー入力より場所を選ばない点が際立ちます。
今回のブレークスルーは、汎用モデルが装着直後に機能しつつ、任意の個人化で性能を16%伸ばせる「キャリブレーションの壁」の低減です。この柔軟性が量産時のサポート負荷を大幅に下げ、ARグラスなど他デバイスへの組み込みを容易にします。
ハードウエア面では、16電極・2 kHz・12ビットの高解像度で筋活動を捉え、従来の8電極200 Hz級コンスーマー製品を凌駕します。これにより手指がわずかに動く、あるいは動かないケースでも意図を捉えやすく、身体機能が制限されたユーザーの操作支援に直結します。
公開された300人・100時間超のデータセットは、外部研究者がアルゴリズムを改良できる開放戦略であり、AIコミュニティとの共創を促進しています。ただし筋電図は生体情報であるため、プライバシーとデータ管理のガイドライン整備は不可欠です。
将来的には、ARグラス「Orion」への接続デモが示すように、視覚情報と筋電入力を組み合わせた”ウェアラブルUI”が現実味を帯びます。一方で長期装着による肌トラブルや誤検出時の安全策など、商品化へ向けた検証も同時進行で進める必要があります。
【用語解説】
sEMG(表面筋電図)皮膚表面の電極で筋肉の電気信号を非侵襲的に計測する技術。
sEMG-RDMeta Reality Labsが研究用に設計した16チャンネル・2 kHz・12ビットのリストバンド型デバイス。
BCI(Brain-Computer Interface)脳や筋肉の電気信号で機器を制御する総称。侵襲型(脳インプラント)と非侵襲型(sEMGなど)に大別される。
【参考リンク】
Meta Reality Labs(外部)MetaのAR/VR・神経インターフェース研究部門の公式情報サイト
Meta Emerging Technology(外部)Metaによる次世代コンピューティング研究成果の発表ページ
【参考動画】
【参考記事】
New Reality Labs Research on sEMG Published in ‘Nature’(外部)研究背景、Orionグラス連携デモ、データ公開方針を詳細に説明
Meta wants to replace your mouse and keyboard with this bracelet(外部)sEMG-RDデバイスの技術仕様と従来技術との比較、実用化への課題分析
Meta researchers developing a gesture-controlled wristband(外部)ジェスチャー認識例とアクセシビリティ応用について重点的に報道
Meta’s Neural Interface Wristband Reads Your Muscle Signals(外部)16電極構成やドライ電極設計などハードウェア仕様を詳説
Advancing Neuromotor Interfaces by Open Sourcing(外部)emg2qwertyとemg2poseデータセットの公開とNeurIPS 2024発表内容
【編集部後記】
手をほとんど動かさずにPCやARグラスを操作できる――そんな未来が眼前に現れつつあります。もしこのリストバンドが試せるなら、皆さんはどんな場面で使ってみたいでしょうか?コメント欄やSNSで、日常や仕事での具体的なアイデアをぜひ教えてください。