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中国X字型レールガンがマッハ7射程400km達成か、軍事バランスを揺さぶる

中国X字型レールガンがマッハ7射程400km達成、軍事バランスを揺さぶる - innovaTopia - (イノベトピア)

中国人民解放軍陸軍工程大学の呂清奥教授らは2025年7月、新型X字型電磁レールガンの構想を報告した。

60kg弾体をマッハ7で発射し、400km超を6分未満で到達できるとされる。米国は2021年末に海軍レールガンプログラムを中止し極超音速ミサイルに注力。防衛装備庁はJS Asuka(あすか)で300g砲弾をマッハ6.5で発射する小型レールガンを2025年7月に海上試験予定。

中国案は近接効果や電力供給など未解決課題を抱えるが、実用化されれば弾体コストが100万ドル超の巡航ミサイルより桁違いに低いと推定される。

From:
文献リンク“It Could Hit Targets Hundreds of Miles Away”: China Unveils a Terrifying Electromagnetic Cannon That Propels Missiles Beyond Mach 7

【編集部解説】

今回のX字型レールガンは、従来の直線2レール方式では相互干渉とレール損耗が顕在化した問題を、直角に配置した2系統の独立回路で分散させる設計です。理論上は出力を倍増しながら効率を高められる一方、回路間の近接効果が発熱や電力ロスを誘発する懸念があります。

海上配備には数十メガワット級の瞬間電力を供給できる統合電力システムが不可欠で、艦船の大型化や専用発電モジュールが前提です。米海軍が100発程度で砲身交換を余儀なくされた経緯を踏まえると、耐久性の裏付けとなる実射試験の実施がカギとなります。

戦略的には、誘導装置を持たない非弾道弾体を超高速・長射程で投射できる点がミサイル防衛の盲点になり得ます。コスト面でも、トマホークなど従来巡航ミサイル(1発100万ドル超)と比べ、誘導体や推進薬を要さないレールガン弾体は1発数万ドルに抑えられる見通しです。

ただし探知困難な高速発射兵器の普及は、誤警報やエスカレーションリスクを高める可能性もあります。国際的な軍備管理枠組みには現状、電磁兵器を直接規制する条項がなく、新たなルールメイキングが議論されると考えられます。平和利用としては、衛星発射の初速付与や高密度材料の高速成形など産業応用も期待されますが、軍事優先の開発が続く限り技術公開の範囲は限定的でしょう。

【用語解説】

レールガン(電磁砲)
火薬ではなく電磁力を利用して弾体を推進する兵器。2本の平行な導体レール間に強力な電磁場を発生させ、導電性の弾体を極高速で射出する。従来の火砲よりも射程距離と着弾速度が格段に向上する可能性がある。

X字型配置
中国が開発した革新的なレールガン設計。単一砲身内に2つのレールガンシステムを直角に配置し、それぞれが独立した電力回路を持つ構造。これにより電磁場の相互干渉を防ぎながら出力を向上させることが可能とされる。

近接効果
密集配置された電気回路間で発生する電磁干渉現象。回路同士が近距離にある場合、電磁場が相互に影響し合い、システムの効率低下や動作不良を引き起こす可能性がある。

マッハ数
音速に対する速度の比率を表す単位。マッハ1は音速(約343m/s)、マッハ7は音速の7倍(約2,400m/s)を意味する。

極超音速ミサイル
マッハ5以上の速度で飛行するミサイルの総称。従来のミサイル防衛システムでは迎撃が困難とされる次世代兵器。

統合電力システム(IPS)
艦船全体で電力を融通し高出力装置へ瞬時供給する技術。

【参考リンク】

中国人民解放軍陸軍工程大学(外部)
レールガン研究を含む軍向け工学教育・試験研究を行う中国の軍事大学

防衛装備庁(ATLA)(外部)
日本の次世代防衛技術を研究開発。JS Asukaで小型レールガンを試験

South China Morning Post(外部)
香港発の英字紙。中国科学技術・軍事動向を詳細に報道

Asia Times(外部)
アジア太平洋の軍事・技術ニュースを専門とするオンラインメディア

【参考記事】

China reloads railgun ambitions as Japan tests and US powers down(外部)
中国X字型レールガン詳細と日米の対応を比較分析した専門記事

Die-hard: two years after US killed the rail gun, China brings it back to life(外部)PLA研究論文と特許出願時期の詳細を報じたSCMP記事

China’s Railgun Has Reportedly Gone to Sea(外部)
2018年海洋山艦試験と弾体コスト推計を詳しく分析

【編集部後記】

レールガンに関しては、確かに日本が先行しているというイメージが長く定着していました。実際、防衛装備庁は2016年から着実に試験発射を重ね、JS Asuka(あすか)での海上試験も目前に控えています。しかし今回の中国のX字型コンセプトは、重量弾をマッハ7で投射できるという衝撃的な数値を掲げ、従来の「小型・防御用」路線とは一線を画しました。まだ設計段階とはいえ、野心的なスケール感と軍の資金投入は、日本の慎重な開発姿勢とは対照的です。

もっとも、実用化のハードルは依然として高く、耐久性・電力供給・命中精度といった課題は各国共通です。日本が積み重ねてきた高精度加工技術や電力制御ノウハウは依然として強みであり、「質」で勝負する伸びしろは十分にあります。今回のニュースは、レールガンが国際的な技術競争の主戦場へ移行しつつあることを示しています。日本が次の一手をどう打つか、引き続き注視していきます。

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TaTsu
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