Huaweiが中国で厚さ6.6mmのスリムな筐体を持つMate 70 Airを発売した。価格は12GB RAM/256GBストレージのベースモデルが4,199人民元(約9万円)から、最上位の16GB RAM/512GBモデルが5,199人民元(約11万円)。RAMの容量に応じてKirin 9020AまたはKirin 9020Bチップを搭載し、HarmonyOS 5.1で動作する。7インチFull-HD+ AMOLEDディスプレイ、5,000万画素のメインカメラ、6,500mAhバッテリーを搭載。
66W有線高速充電に対応するが、ワイヤレス充電は非対応。IP68とIP69等級の防塵・防水性能を備え、重量は約208g。現在、同社オンラインストアで予約受付中である。
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Huawei Mate 70 Air With 6.6mm Slim Form Factor Launched
【編集部解説】
今回発表されたMate 70 Airは、スマートフォン業界で加速する「薄型化競争」の最新局面を象徴する製品となっています。AppleのiPhone Airをはじめ、各社が極薄デザインを競う中、Huaweiは6.6mmという厚みを保ちながら6,500mAhという大容量バッテリーを搭載する独自のアプローチを選択しました。この戦略の背景には、シリコンカーボンバッテリー技術の採用があり、従来のリチウムイオン電池よりも高いエネルギー密度を実現しています。
チップセット構成の差別化は、Huaweiの市場戦略において興味深い点です。12GB RAMモデルにKirin 9020B、16GB RAMモデルにKirin 9020Aを搭載するという区分けは、価格帯ごとに性能を最適化する試みと考えられます。米国の制裁下でも自社開発チップの製造を継続できる技術力を示すと同時に、複数のチップバリアントを用意することで生産リスクを分散している可能性もあります。
HarmonyOS 5.1の搭載は、Googleサービスへのアクセスが制限される中国市場において重要な意味を持ちます。このOSは衛星通信機能やAI写真編集ツールなど独自機能を統合しており、Huaweiのエコシステムから離脱しにくい環境を構築しています。特にBeidou(北斗)衛星通信のサポートは、中国国内での緊急時通信やナビゲーションの信頼性を高める要素です。
カメラシステムでは、1.5メガピクセルのマルチスペクトルカラーセンサーという独特な構成が注目されます。このセンサーは色精度を向上させるために設計されており、一般的なスマートフォンのカメラ構成とは異なるアプローチです。超薄型デバイスにもかかわらず、メインカメラと望遠カメラの両方に光学式手ブレ補正を搭載している点は技術的な成果といえます。
一方で、ワイヤレス充電の非対応は薄型設計のトレードオフとして理解できますが、プレミアム価格帯の製品としては機能の制約となる可能性があります。また、現時点では中国市場のみでの販売となっており、国際展開の予定は明らかになっていません。これは米国の輸出規制や、Googleサービスが利用できないことによる市場制約を反映していると考えられます。
【用語解説】
HarmonyOS
Huaweiが開発した独自のオペレーティングシステム。Androidからの脱却を目指し、スマートフォン、タブレット、ウェアラブル、自動車など様々なデバイスで動作するマルチプラットフォームOS。
Kirin(キリン)
Huaweiの子会社HiSiliconが設計するスマートフォン向けSoCシリーズ。米国の制裁により最先端プロセスでの製造が制限されているが、中国国内の製造技術で生産を継続している。
AMOLED
Active Matrix Organic Light Emitting Diodeの略。有機ELディスプレイの一種で、各ピクセルが自発光するため高コントラストと鮮やかな色表現が可能。薄型化にも適している。
シリコンカーボンバッテリー
シリコンと炭素を負極材料に使用したリチウムイオン電池。従来の黒鉛負極より高いエネルギー密度を実現でき、同じ体積でより大容量のバッテリーを製造可能。
BeiDou(北斗)
中国が独自に開発した衛星測位システム。GPSと同様の全地球測位機能を持ち、中国国内では特に高精度な位置情報サービスを提供している。
マルチスペクトルカラーセンサー
可視光線の複数の波長帯域を独立して測定できるセンサー。通常のRGBセンサーより正確な色情報を取得でき、より自然な色再現を実現する。
【参考リンク】
Huawei公式サイト(グローバル)(外部)
Huaweiの製品情報、企業情報、最新ニュースを提供する公式グローバルサイト。スマートフォン、ネットワーク機器、クラウドサービスなど幅広い製品ラインナップを紹介
Huawei中国公式サイト(外部)
中国市場向けの公式サイト。Mate 70シリーズをはじめとする中国国内で販売される製品の詳細情報や、HarmonyOSエコシステムに関する情報を掲載
HarmonyOS公式サイト(外部)
HarmonyOSの機能、開発者向け情報、対応デバイスなどを紹介する公式サイト。エコシステム全体のビジョンや技術仕様についての詳細情報を提供
【参考記事】
Huawei Mate 70 Air launches to surpass iPhone Air and other ultra-slim smartphones with massive silicon battery and triple cameras(外部)
Notebookcheckによる詳細レビュー。シリコンカーボンバッテリー技術と薄型デザインの両立、AppleのiPhone Airとの競合関係について分析
Huawei Mate 70 Air unveiled with 7-inch display, 6500mAh battery(外部)
GSMArenaの発表記事。7インチの大画面ディスプレイと大容量バッテリーの搭載、カメラシステムの詳細仕様について報じている
Huawei Mate 70 Air Launches In China(外部)
マレーシアのテックメディアLowyat.NETによる報道。中国市場での価格設定、カラーバリエーション、販売開始日について詳述
Huawei Mate 70 Air has two in-house Kirin chipsets(外部)
Huawei Centralの分析記事。Kirin 9020AとKirin 9020Bという2つのチップバリアントを採用する理由と、それぞれの性能差について考察
HarmonyOS 5.1 unlocks these camera, AI features for Huawei devices(外部)
HarmonyOS 5.1の新機能について解説。AI写真編集ツール、カメラ性能の向上、システム全体の最適化について詳細に紹介
Huawei Mate 70 Air – Full phone specifications(外部)
GSMArenaのスペック一覧ページ。Mate 70 Airの全技術仕様を網羅的にまとめており、他機種との比較検討に有用なデータベース
【編集部後記】
6.6mmという薄さに6,500mAhのバッテリーを詰め込むシリコンカーボン技術は、今後どこまで進化するのでしょうか。Googleサービスが使えないHarmonyOSのエコシステムは、中国国外の市場で受け入れられるのか。また、12GB RAMと16GB RAMでチップセットを変える戦略は、ユーザーにとって本当にメリットがあるのか、それとも在庫管理やコスト削減の都合なのか。現時点でMate 70 Airは日本国内での販売予定はありませんが、薄型化競争が激化する中、AppleやSamsungは次にどんな回答を出してくるのか、気になるところです。
























