Vivo Vision Discovery Edition発表、Apple Vision Pro対抗で価格1,395ドル・重量398gを実現

 - innovaTopia - (イノベトピア)

中国のスマートフォンメーカーVivoが、ミックスドリアリティヘッドセット「Vivo Vision Discovery Edition」を発表した。同社は中国・東莞での30周年記念イベントで製品を公開し、中国のスマートフォンメーカーが開発した初のMR製品であると説明した。Vivo VisionはApple Vision Proと類似の湾曲ガラスバイザー、アルミニウム製外部バッテリーパック、下向きカメラを備える。一方で180度のパノラマ視野角と398グラムの重量を特徴とし、Vision Proの650グラムより軽量である。現在は中国本土での店頭体験に限定されている。

製品はOriginOS Visionで動作し、3D動画録画、空間写真・音声、120フィートのシネマティック画面体験をサポートする。中国での開始価格は1,395ドルで、Vision Proの3,499ドルと比較して安価である。テクノロジーインフルエンサーのJon Rettingerは165万人以上のYouTubeチャンネル登録者を持ち、VR/ARの現状について言及した。Austin Evansも同様にVR/ARヘッドセットについてコメントし、Meta QuestがApple Vision Proより優位であると述べた。

From: 文献リンクVivo Vision Mixed-Reality Headset Steps Up to Apple, but Still a Tough Sell

【編集部解説】

VivoのMRヘッドセット参入は、単なる「中国企業による模倣品発売」以上の重要な意味を持っています。これは空間コンピューティング市場における新たなフェーズの始まりを象徴する出来事です。

Apple Vision Proが2024年2月に発売された時点で、3,499ドル(日本では599,800円)という価格設定は明らかにアーリーアダプター向けでした。AppleのTim Cook CEOも「明日の技術を今日届ける」製品と表現し、実質的にニッチ製品であることを認めています。一方、Vivo Visionの予想価格1,395ドル(約10,000元)は、Vision Proの約40%という価格帯で市場に投入されます。

重量面での改善も注目すべき点です。Vision Proの650グラムに対し、Vivo Visionは398グラムと約40%の軽量化を実現しています。これは長時間装着における快適性という、現在のVR/ARヘッドセットが抱える最大の課題の一つに対する回答と言えるでしょう。

技術仕様においても、Vivo Visionは単純な模倣にとどまりません。8K Micro-OLED(3,840 × 3,552ピクセル/片眼)はVision Proをわずかに上回る解像度を提供し、180度のパノラマ視野角も競争力のある数値です。Qualcomm Snapdragon XR2+ Gen 2プラットフォームの採用により、GPU性能で2.5倍、AI性能で8倍の向上を実現しています。

このタイミングでの参入は戦略的に非常に興味深い判断です。現在のMR/VRヘッドセット市場は「ハネムーン期間の終焉」という課題に直面しています。Tech YouTuberのJon Rettingerが指摘する通り、「重く、侵襲的で、必須の使用例がない」状態が続いており、Austin Evansも「長期的な保持の問題」を懸念しています。

しかし、中国市場特有の要因も考慮する必要があります。中国政府は2022年11月にVR/AR技術の産業応用を推進する4年間の行動計画を発表し、国家レベルでのメタバース開発支援を開始しています。これはVivoの参入タイミングが政策的バックアップを受けていることを示唆しています。

現時点では中国本土の12店舗での体験に限定されており、実際の販売開始時期や海外展開については明言されていません。これは技術的完成度の確認と市場反応の測定を行っている段階と考えられます。

長期的視点では、Vivo Visionの登場は価格競争の激化を促し、MR/ARヘッドセット市場の民主化を加速させる可能性があります。Apple、Meta、そして中国勢が三つ巴で競争することにより、技術革新と価格低下の両方が期待できる環境が整いつつあります。

ただし、ソフトウェアエコシステムの構築という根本的課題は残っています。OriginOS Visionがどの程度のアプリケーション生態系を構築できるかが、Vivo Visionの真の成否を決定する要因になるでしょう。

【用語解説】

MR(Mixed Reality / ミックスドリアリティ)
仮想現実(VR)と拡張現実(AR)を組み合わせた技術で、現実世界とデジタルコンテンツをリアルタイムで融合させる。ユーザーは現実空間の中でデジタルオブジェクトを操作でき、物理世界と仮想世界が相互に作用する。

Micro-OLED
従来のOLEDディスプレイを極小化した技術で、ヘッドセット内での高解像度表示を可能にする。小型でありながら高い画素密度を実現し、VR/ARデバイスの軽量化に貢献している。

空間コンピューティング
3次元空間内でのコンピューター操作を可能にする技術。ユーザーの視線や手の動きを認識し、空間内に配置されたデジタル要素を直感的に操作できる新しいコンピューティングパラダイム。

OriginOS Vision
Vivoが開発したMR専用のオペレーティングシステム。13msの超低遅延を実現し、従来の「タップ操作」から「移動とピンチ」によるジェスチャーベースの操作体系へと転換し、空間内での自然な情報表示を実現する。

【参考リンク】

Vivo公式サイト(外部)
中国のスマートフォンメーカーVivoの公式グローバルサイト。同社の製品情報を提供している。

Apple Vision Pro公式サイト(日本)(外部)
Apple Vision Proの技術仕様や機能を詳細に解説した日本の公式ページ。

【参考動画】

【参考記事】

  1. Vivo’s $1,400 Apple Vision Pro Clone Launches Across China(外部)
    価格情報とApple Vision Proとの詳細比較を行った記事。正確な技術仕様を記載。
  2. Vivo’s Vision Pro clone costs $1400 and weighs 398g(外部)
    技術仕様の詳細比較に焦点を当てた記事。具体的な数値データを多数提供。
  3. Vivo Vision Is 40% Lighter Than Apple Vision Pro(外部)
    重量比較を具体的に示し、中国12店舗での体験デモについて報告した専門メディア記事。
  4. Vivo announces lighter, more affordable Apple Vision Pro rival(外部)
    Snapdragon XR2+ Gen 2チップの性能向上などの詳細な技術仕様を記載した包括的記事。

【編集部後記】

Vivo Visionの登場により、MR/ARヘッドセットが「実験的デバイス」から「実用的な選択肢」へ移行する転換点が見えてきました。価格競争の激化は消費者にとって朗報ですが、皆さんはどのような用途でMRヘッドセットを活用したいとお考えでしょうか。仕事での3D設計、エンターテインメント、それとも全く新しい使い方?また、現在のスマートフォンがそうであったように、MRデバイスが日常生活に溶け込む日は意外と近いかもしれません。この技術革新の波に、皆さんはどう向き合っていかれますか。

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乗杉 海
新しいものが大好きなゲーマー系ライターです!

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