Rokid Glasses、医療・介護現場に進歩をもたらす49gスマートグラス – 認知症支援とハンズフリー診療を実現

[更新]2025年8月28日18:24

 - innovaTopia - (イノベトピア)

人間コンピューターインタラクションとAR分野のパイオニア企業Rokidは2025年8月27日、ニューヨーク市で医療・介護現場での実用化も重視した世界最軽量のフル機能AI & ARスマートグラス「Rokid Glasses」を正式発表した。同製品は重量49gで、12MP一人称視点カメラ、Micro LED waveguide(ウェーブガイド)ディスプレイ、統合オーディオを内蔵し、ハンズフリーでの医療情報アクセスを可能にする。

Qualcomm AR1プラットフォーム上に構築され、リアルタイム翻訳、物体認識、ナビゲーション、音声録音などのAI駆動機能を提供する。特に注目されるのは、40年以上のアルツハイマーケア実績を持つニューヨークの認知症支援機関CaringKindとの協力による介護応用で、認知症患者の記憶支援、徘徊防止、コミュニケーション補助機能の実証実験が進められている。多言語対応により外国人介護士との円滑なコミュニケーションも実現し、人材不足に悩む医療・介護現場の課題解決を目指している。Kickstarterでは発表後8時間で400,000ドルを達成し、医療分野でのウェアラブルAI需要の高まりを示している。

【関連記事】

From: 文献リンクRokid Officially Launches Rokid Glasses: The World’s Lightest Full-Function AI & AR Smart Glasses – Laotian Times

【編集部解説】

Rokid Glassesは、従来のタブレットやスマートフォンベースの情報システムでは実現困難だった、医療・介護現場でのハンズフリー情報アクセスを可能にします。49gの軽量設計により長時間装着が可能で、入浴介助や移動支援などの両手を使う介護業務中でも、必要な患者情報にリアルタイムでアクセスできることが最大の特徴です。

認知症ケア分野において、Rokid GlassesはCaringKindとの協力によって開発されている機能が特に注目されます。AR表示により服薬時間や日常スケジュールを視覚化し、患者の記憶を補助することで、独居高齢者の生活自立度向上に貢献する可能性があります。また、徘徊検知機能により家族や介護者への緊急通知が可能となり、認知症患者の安全確保と介護者の負担軽減を同時に実現できます。

現場での実証実験では、KDDI総合研究所が開発したARメガネシステムが既に介護施設で運用されており、職員が入居者の顔を認識するだけで即座に健康状態、血圧、体温、食事状況、排泄記録などの介護関連情報がARディスプレイに表示される仕組みが確立されています。Rokid Glassesの場合、これにGPT-4/4oのAI機能が統合されることで、より高度な状況判断や会話支援が可能となります。

医療現場における遠隔診療支援も重要な応用領域です。NECソリューションイノベータの事例に見られるように、スマートグラスを装着した現場の医療従事者と遠隔の専門医が視野を共有し、診断や治療指示を行うシステムが実用化されています。Rokid Glassesの高輝度Micro LEDディスプレイ(1,500ニット)により、手術室や病室の明るい環境下でも鮮明な情報表示が可能です。

プライバシーと法的課題については、医療・介護現場特有の配慮が必要です。患者の個人情報保護法、医療法に加え、介護保険法の規制下での運用となるため、データの暗号化、アクセス制御、録画・録音データの適切な管理体制構築が不可欠です。しかし、これらの課題を克服することで、人材不足に悩む医療・介護現場での業務効率化と質の向上に大きく貢献する可能性を秘めています。

多言語対応のリアルタイム翻訳機能は、外国人介護士や外国人患者との円滑なコミュニケーションを可能にし、介護現場の国際化にも対応できる点で実用性が高く評価されています。

【用語解説】

Rokid
中国のAR・人間コンピューターインタラクション分野のパイオニア企業で、10年以上にわたってARヘッドセットとエコシステムを開発している。中国最大のXR開発者コミュニティを有し、CES Innovation Awardを3年連続受賞。

Qualcomm AR1プラットフォーム
Qualcommがスマートグラス向けに開発した専用チップセット。3DoF対応、1280×1280解像度ディスプレイサポート、12MP写真・6MP動画撮影機能、Neural Processing Unit搭載でローカルAI処理が可能。

Micro LEDウェーブガイド
LED光源を光学導波路を通じて眼球に伝達する技術。従来の液晶プロジェクターと異なりMicro LEDの拡散光を導波路に結合させるため効率が低いが、小型化と高輝度表示を実現。

CaringKind
ニューヨークのアルツハイマー・認知症ケア専門機関で40年以上の実績を持つ。家族や患者へのトレーニング、リソース提供、アドボカシー活動を行い、RokidとAIグラスの介護応用について協力。

【参考リンク】

Rokid公式サイト(グローバル)(外部)
Rokidの最新AR製品情報、開発者向けSDK、企業情報を提供。Rokid GlassesやMax 2などの製品仕様、購入情報、開発者コミュニティへのアクセスが可能。

Rokid公式サイト(日本)(外部)
日本市場向けRokid製品の販売サイト。Rokid MaxやRokid Stationなどの既存製品を日本語で紹介し、オンライン購入とサポートを提供している。

Rokid開発者フォーラム(外部)
AR・AI ウェアラブル開発者向けの活発なコミュニティフォーラム。技術的な質問、SDK情報、プロジェクト共有、開発者同士の交流が行われている。

Qualcomm AR1技術資料(外部)
Snapdragon AR1 Gen 1プラットフォームの技術仕様書。ISP性能、AI機能、接続性、電力効率などの詳細な技術情報を提供している。

CaringKind公式サイト(外部)
ニューヨーク市のアルツハイマー・認知症ケア専門機関で45年以上の実績。Rokidとの協力でAIグラス活用を検討中。24時間ヘルプライン、個人相談、支援グループ、徘徊者安全プログラムなど包括的サービスを提供している。

【参考動画】

【参考記事】

Rokid takes on Meta with new AI-powered smart glasses – BetaNews(外部)
RokidがMetaに挑戦する新AI搭載スマートグラスについて報告。競合他社(Meta、Google、Alibaba、Xiaomi、Snap、Apple)の市場参入状況と、消費者受容の課題について分析している。

Qualcomm introduces AR1+ Gen 1 chip for local AI assistance on smart glasses – Heise(外部)
Qualcommの次世代AR1+ Gen 1チップについて詳細解説。ローカルAI処理能力、エネルギー効率向上、Metaの次世代グラス「Hypernova」への搭載予定など技術的進歩を報告。

Ray-Ban Meta Smart Glasses Review – Moor Insights & Strategy(外部)
Meta Ray-BanスマートグラスのAR1 Gen 1プラットフォーム採用について詳細分析。前世代との性能比較、IPX4防水機能追加、オンデバイスAI機能の技術的優位性について解説。

Rokid Glasses Kickstarter Tops $500K Amid Growing Demand – Road to VR(外部)
Kickstarterでの成功について報告。500,000ドルを突破した資金調達状況と、ディスプレイ付きスマートグラスへの市場需要の高まりを分析している。

One Year with Ray-Ban Meta: How the Snapdragon AR1 make these glasses truly Smart(外部)
1年間のMeta Ray-Ban使用経験を通じたAR1チップの実用性評価。デュアル14bit ISP、オンデバイスAI、低消費電力設計による日常使用での信頼性について詳述。

【編集部後記】

介護分野におけるアルツハイマー支援は、テクノロジーの進化とともに新たな可能性が生まれています。Rokid GlassesのようなAI搭載スマートグラスは、従来の介護現場で課題となっていたコミュニケーションや認知機能補助に直接働きかけることが期待されています。例えば、認知症患者に対して、ARによる音声・画像での案内や記憶サポート、徘徊時の通知機能などは、安全性の向上や家族・ケアスタッフの負担軽減に大きく寄与するでしょう。

Rokidはニューヨークの認知症支援団体CaringKindと協力し、実地でAIグラスの応用事例を検証していますが、こうした取り組みを通じて現場の声や海外の最新事例が日本にも共有されつつあります。今後、スマートグラスが介護現場における実用ツールとして普及した場合、個別ケアの質や生活のQOL向上だけでなく、記憶補助・言語支援・遠隔モニタリングなど多様な用途が広がる可能性があります。法・倫理面や個人情報保護の課題をクリアしつつ、より現場に根差した開発が進むことで、テクノロジーが人に寄り添う介護支援の在り方を考える契機になるのではないでしょうか。

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乗杉 海
新しいものが大好きなゲーマー系ライターです!

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