VRアトラクションチェーンSandbox VRのフィラデルフィア店舗で、最新体験「Squid Game Virtuals」と「Deadwood Phobia」の2つがレビューされた。Sandbox VRは新型コロナウイルスのロックダウン後に復活し、現在世界約60店舗を運営、累計売上2億ドルを突破している。同社はNetflixとの契約によりSquid Game VirtualsやRebel Moon the Descent、今後予定のStranger Things体験などの認知度の高いIPコンテンツを提供している。
レビューでは4人のプレイヤーが両体験を試した。Squid Game Virtualsは最大6人でプレイ可能で、プレイヤー同士が対戦するミニゲーム形式となっている。Deadwood PhobiaはVRガンコントローラーを使用するアクション・ホラー体験で、約20分の実行時間でゾンビとの戦闘が中心となる。訪問した店舗では9つの異なるタイトルから選択可能だった。レビュアーはプレイヤー間の直接的相互作用があるSquid Game Virtualsをより高く評価した。
From: Sandbox VR Shows that ‘Social’ Beats ‘Spectacle’ at VR Attractions
【編集部解説】
今回のレビュー記事は、VRエンターテインメント業界における重要なトレンドの転換点を捉えています。Sandbox VRが2025年に累計売上2億ドルを突破し、世界60店舗近くを展開している背景には、単なる技術的進歩を超えた、根本的な体験設計の変化があります。
レビューで明確に示されているのは、VRアトラクションにおける「ソーシャル性」と「スペクタクル性」の価値比較です。グラフィックの美しさやアクションの激しさよりも、プレイヤー同士の自然な相互作用が生み出すドラマが、より深い満足感と記憶に残る体験を創出していることが実証されました。
この発見は、VR業界全体に大きな示唆を与えます。これまでVRコンテンツの多くは視覚的インパクトや技術的な驚きに重点を置いてきましたが、真に持続可能なエンゲージメントを生み出すのは人間同士のつながりです。Squid Game Virtualsが3千万ドルを超えるチケット売上を記録している理由も、まさにこの社会的相互作用の設計にあります。
特に注目すべきは、プレイヤー間の「共有知識」や「駆け引き」といった心理的要素が、VR技術と組み合わさることで現実では不可能な体験を創出している点です。これは従来のエスケープルームやボードゲームの要素を、物理的制約を超えた仮想空間で実現する新たなエンターテインメントの形態といえます。
長期的な視点で見ると、この「ソーシャルファースト」のアプローチは、VRが単なる個人的な没入体験から、共有可能な社会的活動へと進化していることを示しています。これは家庭用VRでは実現困難な価値提案であり、ロケーションベースVRの存在意義を明確に証明するものです。
一方で、技術的な完成度との両立が今後の課題となります。レビューでも指摘されているように、基本的なVR技術体験への改善余地は残されており、ソーシャル性を重視しつつも、プラットフォームとしての安定性や品質向上は継続的に必要です。
【用語解説】
ロケーションベースVR(Location-based VR)
専用の物理的施設でプレイする大規模VR体験。家庭用VRとは異なり、広いプレイスペース、高性能なトラッキング機器、ハプティックフィードバック機能を活用できる。
フルボディトラッキング
VRヘッドセットだけでなく、手首、足首、胸部などに装着されたセンサーにより、プレイヤーの全身の動きを精密に追跡する技術。Sandbox VRの特許技術でもある。
ハプティックフィードバック
触覚や振動を通じて物理的な感覚を再現する技術。VR体験において視覚・聴覚に加えて触覚も提供することで、より高い没入感を実現する。
フランチャイズモデル
本部が開発したビジネスシステムを、契約した加盟店が利用して事業展開する方式。Sandbox VRは2024年から本格的にフランチャイズ展開を加速している。
【参考リンク】
【参考記事】
【編集部後記】
VR体験における「技術的な凄さ」と「人とのつながり」のどちらにより魅力を感じるでしょうか。Sandbox VRの事例が示すように、最新技術の真の価値は、人同士の関係性を豊かにする場面で発揮されるのかもしれません。もしロケーションベースVRを体験される機会がありましたら、グラフィックの美しさだけでなく、一緒にいる人との何気ない相互作用にも注目してみてください。そこには、家庭用VRでは決して味わえない特別な瞬間が待っているはずです。