XR業界カンファレンス「XR Kaigi 2025」、12月1日開催 AI×バーチャル領域で「新たな時代」を見据えた約70セッションを展開

[更新]2025年11月21日

 - innovaTopia - (イノベトピア)

XR、メタバース、VTuberなどバーチャル領域に関わる最新情報と知識を共有するカンファレンス「XR Kaigi 2025」が、12月1日から3日まで東京ポートシティ竹芝 で開催される。今年のテーマは「AI × バーチャル」で、過去最大規模となる約70のセッションが実施される。

業界専門メディアMoguraが主催、7回目の開催へ

XR Kaigiは、2015年から業界に寄り添う専門メディア「Mogura VR」を展開している株式会社Moguraが企画を担当している。2019年から毎年12月に開催されており、今回で7回目の実施だ。開発者・クリエイターを中心に、本気でこの領域に取り組む”担い手”が集まる場として業界内で定着している。

初日のオープニングキーノートには、株式会社Mogura代表取締役社長の久保田瞬氏が登壇する。久保田氏は「2025年、バーチャル領域は未来へのワクワク感と苦しさが交じるなかで、新たな時代(New Era)へ向かう」と述べ、「今年のXR Kaigiは、まさにその新たな時代の幕開けを皆様と共に体験し、新しい仲間との出会い、知見の共有、そしてビジネスチャンスを創出する場」と位置づけている。

なぜ今年は「AI」がテーマなのか

2025年は初めてメインテーマに「AI」を設定。「Roblox」「VRChat」「3Dスキャン・デジタルツイン」「ライブエンタメ」「XRゲーム」を加えた計6つのテーマを通じて、バーチャル領域の現在地と未来を体系的に理解できる構成となっている。

生成AIの急速な進化により、3Dモデル生成や空間認識技術が飛躍的に向上している。AIグラスの実用化も視野に入り始めた今、XR業界はこれまでとは異なる局面を迎えている。本カンファレンスでは、こうした技術的転換点において、実務者がどのように新技術を取り入れ、ビジネスに活かしているのかという実践知が共有される。

開催日時: 2025年12月1日(月)~3日(水)
会場: 東京ポートシティ竹芝(東京都立産業貿易センター浜松町館、ポートホール)

注目セッション:技術と実践の交差点

12月1日(月)業界の方向性を示すキーノート

13:15-13:45には、XREAL株式会社の高天夫氏、尾崎大介氏による企業キーノート「日常を広げる新しい視界」が実施される。XREALはAR/スマートグラス市場で急成長を遂げている企業であり、デバイスの日常利用に向けた戦略が語られる予定だ。

16:00-16:45の「狂言とVRで紐解く、演出と音の仕掛け方」では、ヤマハ株式会社の広瀬健治氏、XRアーティストの伊東ケイスケ氏、株式会社万作の会の中村修一氏が登壇。伝統芸能である狂言とVR技術の融合という、一見異質な組み合わせから、空間演出と音響設計の本質に迫る。文化資産のデジタル保存やメタバース上での伝統芸能の再現可能性を探る上で、示唆に富む内容となるだろう。

17:00-17:45には「XR Kaigi Award 2025」の表彰式が開催され、この1年間の優れた取り組みが評価される。

12月2日(火)AIとXRの実践的統合

2日目は、AI技術をXR開発・運用に実装した具体例が数多く紹介される。

12:00からは株式会社MESONの清水岳氏による「実空間におけるXRの企画と体験―AIグラス時代を見据えて―」が第2会議室で実施される。現実空間でのXR企画と体験設計事例を紹介し、AIグラス時代の新しい可能性が示される。MESONは位置情報連動型ARなど、実空間とデジタル情報を結びつける技術開発で知られており、次世代デバイスへの対応戦略は注目に値する。

15:00からはTipatat Chennavasin氏による「Understanding World Foundation Models – the killer app on GenAI and XR」を開催。世界の基盤AIモデルの構造や主要プレイヤー、XRへの影響を分析する。大規模言語モデル(LLM)や画像生成AIの発展が、XRコンテンツ制作のワークフローをどう変えるのか、国際的な視点からの解説が期待される。

18:00からは株式会社STYLYの山口征浩氏が「AIでスタートアップ社長がエンジニア現役復帰した理由」と題して登壇。「次世代STYLY」開発におけるAI活用の実際を解説し、AI駆動開発の変化と課題を率直に語る。経営者がコーディングに復帰するほどAIがもたらした開発環境の変化とは何か。スタートアップならではの意思決定の実態に触れられる貴重な機会だ。

12月3日(水)商用化と産業応用の最前線

最終日は、研究開発から商用展開へと移行する過程での知見が共有される。

12:00からはクラスター株式会社メタバース研究所の柳川光理氏と廣井裕一氏が「商用メタバース空間におけるAIアバター導入の実践」を発表。商用メタバースでのAIアバター「AI Agent Flex」導入事例を紹介し、ユーザー行動や没入感への影響 を報告する。AIによる自律的な対話キャラクターは、メタバース空間の体験をどのように変えるのか。実証実験のデータに基づいた議論が行われる。

14:00-14:45には5Fエキスポステージで、コンセントのクリエイティブディレクター・イマーシブディレクターの渡邊徹氏が「ImmersiveVideoの撮影からAppleVisionProまで」と題したセッションを実施。AppleVisionPro向けの高精細なImmersiveVideoの撮影フローから公開までの制作プロセスが詳述される。Immersive Videoは空間コンピューティング時代のコンテンツ表現として注目されており、撮影時の設定から編集、配信までの実務的なノウハウが得られる。

キヤノン株式会社の畠山泰裕氏と名古屋市名古屋城調査研究センターの大村陸氏による「名古屋城をフォトリアルCGとEOS VR実写映像でどう魅せるか?」では、フォトリアルな3DCGとEOS VR SYSTEMによる3D180度映像を組み合わせたXR表現 が紹介される。文化財のデジタルアーカイブと観光体験の両立という、自治体が直面する実課題への解決アプローチが示される。

プラットフォーム活用の実例:VRChatがもたらす地域創生

GMOペパボ株式会社メタバース推進室の濱田璃空氏とVRChat Inc. Business Development Japanの北庄司英雄氏による「VRChatのビジネス・自治体活用について」では、ソーシャルVRプラットフォーム「VRChat」の活用事例をもとに、企業ブランディング、採用、地域振興などの事例が紹介される。

特に注目されるのが、「VRChat × 伝統文化を活用したシティプロモーション」のセッション。鹿児島県日置市と島根県江津市がVRChatを活用して伝統文化を発信している取り組みが報告される。日置市「ネオ日置担当」の重水憲朗氏、江津市創造力特区デザイナーの福山賢一氏が登壇し、人口減少に悩む地方自治体がメタバースを通じて新たな関係人口を創出する試みを語る。既存のプロモーション手法では届かなかった層へのアプローチとして、自治体のメタバース活用は今後さらに広がる可能性がある。

参加情報と展示エリア

チケットは一般、VIP、学割の3種類。一般チケットは8,800円、当日券は9,900円。VIPチケットは29,800円、学割チケットは1,980円。支払いはクレジットカードに対応しており、5名以上の申し込みでは請求書払いも利用可能となっている。

セッションに加え、3フロアにわたる展示エリアでは最新デバイスの体験や技術デモが行われる。また、12月1日18:30-20:30にはネットワーキングパーティーが開催され、業界関係者との直接的な交流の機会も設けられている。

業界の転換点を体感する3日間

久保田氏が述べるように、バーチャル領域は「ワクワク感と苦しさが交じる」状況にある。技術的な可能性は広がる一方で、持続可能なビジネスモデルの構築や社会実装には課題も多い。

XR Kaigi 2025は、こうした業界の現実を直視しながらも、新たな時代への道筋を共に探る場として設計されている。約70のセッションを通じて得られる実践知は、今後のビジネス展開や技術開発の指針となるだろう。

詳細なプログラムおよびチケット購入については、公式サイトで確認できる。

投稿者アバター
乗杉 海
SF小説やゲームカルチャーをきっかけに、エンターテインメントとテクノロジーが交わる領域を探究しているライターです。 SF作品が描く未来社会や、ビデオゲームが生み出すメタフィクション的な世界観に刺激を受けてきました。現在は、AI生成コンテンツやVR/AR、インタラクティブメディアの進化といったテーマを幅広く取り上げています。 デジタルエンターテインメントの未来が、人の認知や感情にどのように働きかけるのかを分析しながら、テクノロジーが切り開く新しい可能性を追いかけています。 デジタルエンターテインメントの未来形がいかに人間の認知と感情に働きかけるかを分析し、テクノロジーが創造する新しい未来の可能性を追求しています。

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