中国GAC、ミュンヘンIAA Mobility 2025で欧州戦略公表 2028年に市場全面網羅目標

[更新]2025年9月15日08:02

中国GAC、ミュンヘンIAA Mobility 2025で欧州戦略公表 2028年に市場全面網羅目標 - innovaTopia - (イノベトピア)

中国の自動車メーカーGACグループが9月9日から14日にミュンヘンで開催された第56回IAA Mobilityで「GACソリューション」を発表し、欧州市場本格参入を宣言した。

同社はICM(ミュンヘン国際会議センター)のブースE01、B3で展示を行った。GACグループはAION UTAION V(2色)GAC S7GAC E9HYPTEC HL6台の車両を展示した。

これらの車両はバッテリー電気自動車(BEV)レンジエクステンダー電気自動車(EREV)プラグインハイブリッド(PHEV)の新エネルギーソリューションをカバーした。

AION Vの欧州正式発売も発表され、価格は35,990ユーロからとなる。同社は2025年9月からポーランド、ポルトガル、フィンランドへの参入を予定し、2028年までに欧州市場の全面網羅を目標としている。

展示会期間中、同社は都市航空モビリティのビジョンであるAircabGACエコシステム製品も披露した。

From: 文献リンクIAA Mobility 2025: What Can GAC Group Bring to Europe …

【編集部解説】

9月14日に閉幕したIAA Mobility 2025では、GACグループの欧州戦略が大きな注目を集めました。50万人超の来場者750社の出展者を記録した展示会において、中国メーカーの存在感は過去最大となりました 。

GACが発表した段階的な販売拡大計画は、中国メーカーの欧州進出戦略の新たなモデルケースとなっています。2025年に約3,000台、2026年に15,000台、2027年には最低50,000台という具体的な数値目標は、単なる市場参入ではなく本格的な事業展開を意図していることを明確に示しました 。

今回のIAA Mobilityでは、116社の中国企業が出展し、これは2023年の70社から大幅増となりました。この背景には、BYD2024年にテスラを抜いて世界最大のEVメーカーとなった影響があり、中国メーカー全体の海外展開が加速している状況があります 。

展示会での実際の反響を見ると、GACブースにはBOSCHやAUMOVIOといったグローバル企業の幹部も訪問し、技術提携や協業の可能性について議論が行われました 。これは、中国メーカーが単純な製品供給者ではなく、技術パートナーとして認知され始めていることを示しています。

一方で課題も明らかになりました。EUが中国製EVに課している27%の関税に対し、GACはオランダに欧州スペアパーツ流通センターを設立し、現地化によるコスト削減を図っています。また、BYDがハンガリーとトルコに工場建設を進めているように、製造拠点の現地化は中国メーカー共通の重要戦略となっています 。

技術面では、AION Vに搭載された冷蔵庫やマッサージ機能が欧州来場者の注目を集めました。従来の欧州メーカーが重視する走行性能や安全性に加え、車内での快適性や利便性を重視するアプローチは、新たな価値提案として評価されています 。

市場データを見ると、中国メーカーの欧州シェア2025年上半期に前年同期の倍となったものの、まだ5%程度に留まっています。しかし、今回の展示会での反響を見る限り、この数字は今後数年で大幅に変化する可能性が高いでしょう 。

IAA Mobility 2025の閉幕により、次回のIAA Mobility 20272027年9月7日から12日の開催が決定しています。GACをはじめとする中国メーカーがその時点でどのような進展を見せているかが、グローバル自動車産業の未来を占う重要な指標となるでしょう 。

【用語解説】

IAA Mobility – 国際自動車見本市(Internationale Automobil-Ausstellung)の新形態。2025年は9月9-14日にミュンヘンで開催され、50万人超の来場者と750社の出展者を記録した総合モビリティプラットフォーム 。

BEV(Battery Electric Vehicle) – バッテリー電気自動車。バッテリーに蓄積された電力のみで駆動するゼロエミッション車両で、内燃機関を一切使用しない純電気自動車を指す。

EREV(Range-Extended Electric Vehicle) – レンジエクステンダー電気自動車。主にバッテリーで駆動するが、航続距離を延長するための小型発電機を搭載した電気自動車の一種である。

PHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle) – プラグインハイブリッド電気自動車。外部電源から充電可能なバッテリーと内燃機関の両方を搭載し、短距離は電気のみ、長距離はハイブリッドで走行する。

Hyptec – GAC Aionの高級ブランド。2022年にHyperブランドとして発表され、2024年8月に西欧市場向けにHyptecに改名された。高級電気自動車を展開する 。

【参考リンク】

IAA Mobility公式サイト(外部)
2025年9月14日に閉幕した世界最大級のモビリティ展示会の公式サイト。50万人超の来場者と750社の出展者を記録。次回IAA Mobility 2027の開催情報も掲載。

GAC Group公式サイト(外部)
中国の国有自動車メーカーGACグループの公式サイト。Trumpchi、Aion、Hyptecブランドの車両情報、技術開発、企業情報を掲載している。

GAC Aion公式サイト(外部)
GACグループの電気自動車ブランドAionの製品情報を掲載。AION Y、AION V等の電気SUV、セダンの詳細仕様と特徴を紹介している。

【参考動画】

【参考記事】

GAC Unveils the “GAC Solution” at IAA MOBILITY Munich(外部)
IAA Mobility 2025でのGAC「GACソリューション」発表とAION V欧州発売の詳報。2025年9月からポーランド、ポルトガル、フィンランド参入を発表。

Chinese EV firms take fight to European automakers on their home turf(外部)
中国EV企業による欧州市場への本格進出を報じる。中国メーカーの欧州シェアが2025年上半期に倍増し5%に達したこと、116社の中国企業が出展したことを伝えている。

IAA Mobility 2025 in Munich: Record Visitor Numbers and Innovations(外部)
IAA Mobility 2025の総括記事。過去最多の来場者数と革新的な展示について報告。中国メーカーの存在感拡大についても言及している。

GAC Aion V launches in Europe at €35990(外部)
AION Vの欧州正式発売価格が35,990ユーロからであることを報告。段階的な販売計画として2025年3,000台、2026年15,000台、2027年50,000台以上の目標も明記している。

【編集部後記】

閉幕したばかりのIAA Mobility 2025を振り返ると、私たちが目の当たりにしたのは、単なる展示会を超えた産業構造の転換点だったのかもしれません。GACグループの戦略的な欧州進出は、その象徴的な事例といえるでしょう。

特に印象的だったのは、同社がブースに訪れたBOSCHやAUMOVIOといった欧州企業との真剣な技術討議の様子です。これは、中国メーカーがもはや単純な製品供給者ではなく、対等な技術パートナーとして認識されていることを物語っています。35,990ユーロから始まるAION Vの価格設定も、市場を意識した戦略的なアプローチを感じさせます。

皆さんはこの変化をどう受け止められるでしょうか。2028年までに欧州市場を全面網羅するという野心的な計画が、既存の自動車メーカーや消費者にどのような影響をもたらすのか。また、マッサージ機能付きの車両といった新しい価値提案が、私たちのモビリティ体験をどう変えていくのでしょうか。ぜひ皆さんのご意見をお聞かせください。

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TaTsu
『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。

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