Apple iPhone 18 Pro、初の可変絞り技術採用|サムスン撤退から6年ぶりの挑戦

[更新]2025年10月17日18:36

 - innovaTopia - (イノベトピア)

AppleはiPhone 18 ProおよびiPhone 18 Pro Maxに、variable aperture(可変絞り)を搭載したメインカメラを採用する予定であることが、ETNewsの報道で明らかになった。この技術により、暗所では絞りを開いて光量を増やし、明所では絞って露出オーバーを防ぐことが可能となる。また、被写界深度の制御も向上する。

Appleは現在サプライヤーとコンポーネントについて協議中で、LG InnotechとFoxconnがカメラを、Luxshare ICTとSunny Opticalがアクチュエーターを製造すると報じられている。iPhone 14 ProからiPhone 17 Proまでのメインカメラは固定絞りƒ/1.78を採用しており、Appleが可変絞りを採用するのは初めてである。発表は2026年秋の予定で、AppleアナリストのMing-Chi Kuoの昨年12月の予測を裏付ける内容となっている。

From: 文献リンクiPhone 18 Pro’s Major Camera Upgrade to Be Variable Aperture

【編集部解説】

可変絞り技術は、従来のデジタル一眼レフカメラやミラーレスカメラでは当たり前の機能ですが、スマートフォンへの搭載は技術的ハードルが高く、過去にサムスンが試みたものの、コストと筐体の厚み増加という課題から撤退した経緯があります。Appleがこのタイミングで採用を決断した背景には、小型化技術の進歩とともに、コンピュテーショナル フォトグラフィーだけでは到達できない物理的な光学性能の限界を超える必要性があると考えられます。

今回の報道で注目すべきは、サプライチェーンの構成です。LG InnotechとFoxconnがカメラモジュールを担当し、中国のLuxshare ICTとSunny Opticalがアクチュエーターを製造するという体制は、Appleが中国依存を完全には脱却できていない現状を示しています。地政学的リスクを考慮すると、将来的なサプライチェーンの再編成が必要になる可能性もあるでしょう。

可変絞りの実装により、ユーザーは明るい日中での撮影時にf値を上げることで、より広い被写界深度を確保し、風景写真全体にピントが合った写真を撮影できるようになります。逆に暗所やポートレート撮影では絞りを開放することで、より多くの光を取り込みつつ、背景を美しくぼかした表現が可能となるでしょう。これはソフトウェア処理によるボケ効果とは異なり、物理的な光学ボケであるため、より自然で破綻のない描写が期待されます。

一方で、可変絞り機構の追加は可動部品の増加を意味し、長期使用における耐久性や防塵防水性能への影響が懸念されます。サムスンが2020年にこの機能を廃止した理由の一つも、機構の複雑化によるコスト増でした。Appleがどのようにこれらの課題を克服するのか、実機での検証が待たれるところです。

発表が2026年秋と1年以上先であることから、現在のiPhone 17シリーズを購入予定のユーザーにとっては、カメラ性能を重視する場合は次世代を待つという選択肢も生まれることになります。これはAppleの販売戦略にも影響を与える可能性があり、iPhone 17 Proのカメラ以外の機能強化がより重要になってくるでしょう。

【用語解説】

variable aperture(可変絞り)
カメラレンズの開口部の大きさを状況に応じて調整できる機構。光量の制御と被写界深度のコントロールを物理的に実現する。

depth of field(被写界深度)
写真においてピントが合っているように見える範囲のこと。絞りを開く(f値を小さく)と浅くなり、絞る(f値を大きく)と深くなる。

actuator(アクチュエーター)
電気信号を機械的な動きに変換する駆動装置。カメラでは絞り羽根の開閉やレンズの位置調整などに使用される部品。

コンピュテーショナル フォトグラフィー
複数枚の画像を撮影し、ソフトウェア処理で合成・補正することで、物理的な光学性能を超える画質を実現する技術。

LG Innotek
韓国LGグループの電子部品メーカー。スマートフォン用カメラモジュールで世界トップクラスのシェアを持つ企業。

Luxshare ICT
中国の電子機器製造企業。Apple製品の製造においてFoxconnに次ぐ重要なサプライヤーとして存在感を増している。

Sunny Optical
中国最大の光学レンズメーカー。スマートフォン用カメラレンズで世界シェアトップを誇る企業。

Ming-Chi Kuo
Apple製品のサプライチェーン分析で知られる著名アナリスト。予測の精度の高さで業界から注目されている。

固定絞り
絞り値が一定で変更できないカメラレンズの仕様。スマートフォンカメラでは小型化を優先し、これまで一般的に採用されてきた。

f値
レンズの明るさを示す数値。値が小さいほど多くの光を取り込めるが、被写界深度は浅くなる特性を持つ。

【参考リンク】

LG Innotek 公式サイト(外部)
韓国LGグループの電子部品メーカーの公式サイト。カメラモジュール、基板実装、LED、自動車用部品などの製品情報と技術開発の最新情報を提供している。

Foxconn(鴻海精密工業)公式サイト(外部)
世界最大の電子機器製造受託企業(EMS)の公式サイト。Apple製品を含む多くのスマートフォンやコンピューターの製造を手がけ、サプライチェーンの詳細情報を掲載している。

Apple Newsroom(外部)
Appleの公式ニュースルーム。製品発表、企業ニュース、技術革新に関する公式情報を掲載。iPhone関連の最新情報が入手できる。

【参考記事】

Supply chain report backs iPhone 18 Pro variable aperture camera(外部)
ETNewsの報道を詳細に分析し、Ming-Chi Kuoの2024年12月の予測との整合性を検証。サプライチェーンの構成とAppleの戦略的意図について考察している。

iPhone 18 Pro could borrow this camera feature from the Galaxy S9(外部)
サムスンが2018-2019年にGalaxy S9/S10で採用した可変絞り技術の詳細と、その後廃止に至った経緯を分析。Appleがどう課題を克服するか展望している。

Variable aperture camera expected for iPhone 18 Pro(外部)
Ming-Chi Kuoの予測の詳細と、可変絞り技術がスマートフォン写真に与える影響について技術的観点から解説。製造コストと市場価格への影響も考察。

Apple iPhone 18 Pro gets camera feature that other Android flagships are omitting(外部)
Android旗艦機が可変絞りを採用しない理由と、Appleが逆行する戦略を取る背景を分析。Honor Magic 8 Proなど競合製品との比較を含む。

iPhone 18 confirmed camera upgrade one-ups Galaxy S26 Ultra(外部)
2026年の競合環境を予測し、Galaxy S26 Ultraとの性能比較を実施。可変絞り技術が市場に与える影響と消費者の購買行動への効果を分析している。

【編集部後記】

Appleが可変絞りという「枯れた技術」を2026年に投入する判断は興味深いものがあります。サムスンが6年前に撤退した機構を、どのような小型化と耐久性で実現するのでしょうか。

コンピュテーショナル フォトグラフィーとの融合で、従来の固定絞り+ソフトウェア処理を超える表現が生まれるのか注目されます。気になるのは価格設定です。Pro Maxは既に20万円超の水準にあり、可変絞り搭載でさらなる高額化が進めば、購入サイクルへの影響も予想されます。iPhone 17購入予定層が2026年秋まで待つ選択をするのか注目していきたいと思います。

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乗杉 海
SF小説やゲームカルチャーをきっかけに、エンターテインメントとテクノロジーが交わる領域を探究しているライターです。 SF作品が描く未来社会や、ビデオゲームが生み出すメタフィクション的な世界観に刺激を受けてきました。現在は、AI生成コンテンツやVR/AR、インタラクティブメディアの進化といったテーマを幅広く取り上げています。 デジタルエンターテインメントの未来が、人の認知や感情にどのように働きかけるのかを分析しながら、テクノロジーが切り開く新しい可能性を追いかけています。 デジタルエンターテインメントの未来形がいかに人間の認知と感情に働きかけるかを分析し、テクノロジーが創造する新しい未来の可能性を追求しています。

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