資生堂オンラインストアがアバター接客導入|心理的障壁を解消する新しい美容体験

[更新]2025年10月26日07:29

資生堂オンラインストアがアバター接客導入|心理的障壁を解消する新しい美容体験 - innovaTopia - (イノベトピア)

資生堂ジャパンは2025年10月22日、公式ECサイト「資生堂オンラインストア」において、パーソナルビューティーパートナーが持つ美容や接客のノウハウと最新のアバター技術を融合した「アバターPBP」によるライブコマースの試験展開を開始した。

先輩女性キャラクターの「M!ra(ミラ)」と後輩男性キャラクターの「Rai(ライ)」という2名のアバターPBPがライブ配信の画面上に登場し、顧客とリアルタイムで双方向に交流しながら美容情報や商品紹介を行う

オリジナルアバターをライブコマースに本格導入する本施策は国内化粧品業界初であり、若年層や男性顧客へのアプローチ強化を目的としている。従来のライブ配信では出会えなかった層への接点拡大と新しい購買体験を提供し、顧客満足の向上とEC売上拡大を目指す。

From: 文献リンク資生堂オンラインストアにて「アバターPBP」によるライブコマースを開始

【編集部解説】

この取り組みで注目すべきは、資生堂が単なる効率化ではなく「心理的障壁の解消」という人間の深層心理に着目している点です。アバターによる接客は、人間の美容部員に対して抱きがちな「判断されるのでは」という無意識の緊張感を軽減し、より率直な相談を可能にします。特に男性顧客やZ世代にとって、キャラクターとのコミュニケーションは従来の店舗接客よりも心理的ハードルが低いという研究結果も出ています。

ライブコマースの市場環境を見ると、日本国内では認知率31.9%と発展途上ながら、視聴者の54.8%が実際に購入しており、転換率の高さが証明されています。中国では取引総額が100兆円規模に達するとも言われる巨大市場に成長しており日本でも2025年は本格的な普及期に入ると期待されています。資生堂はこの波に先駆けて参入することで、競合との差別化を図っています。

アバター技術の優位性は、24時間365日稼働可能な点、言語や地域を超えた展開の柔軟性、そしてブランドイメージの一貫性にあります。人間のインフルエンサーと異なり、スキャンダルリスクもなく、ブランドが完全にコントロールできる点も企業にとって魅力的です。実際、バーチャルインフルエンサーは従来の人間インフルエンサーよりも信頼性が高いと評価されるケースも増えています。

一方で課題も存在します。AIやアバターを使ったマーケティングでは、透明性の確保が重要視されており、消費者の52%がAI生成コンテンツの開示がない場合に不信感を抱くというデータがあります。また、バーチャル存在の発言責任や倫理的問題についても、運営企業がガバナンス体制を明確にする必要があります。

資生堂は経済産業省と東京証券取引所が選定する「DX銘柄2025」に選定されるなど、業界をリードする立場にあります。今回のアバターPBP導入は、同社が目指す「データドリブンな美容体験」の一環であり、顧客データの蓄積と分析を通じて、より精緻なパーソナライゼーションへと進化していく布石となるでしょう。

試験展開という慎重なアプローチを取りながら、効果測定とノウハウ蓄積を行う姿勢は、テクノロジーと人間的な接客の最適なバランスを探る上で重要です。この取り組みが成功すれば、化粧品業界全体のデジタル接客の標準を塗り替える可能性を秘めています。

【用語解説】

ライブコマース
ライブ配信とEC(電子商取引)を組み合わせた販売手法である。配信者が商品をリアルタイムで紹介し、視聴者がその場で購入できる仕組みで、双方向のコミュニケーションが可能な点が通常のECとの大きな違いである。

パーソナルビューティーパートナー(PBP)
資生堂において、顧客一人ひとりの「美しくなりたい」という想いと肌に寄り添い、一緒に顧客の美を創るパートナーである。皮膚科学から商品知識、スキンケア・メーキャップの施術、立ち居振る舞い、おもてなしの心まで幅広く学び、厚生労働省の『社内検定認定制度』に基づいた年1回の認定試験を受検している。

M!ra(ミラ)
スペイン語で「見る」という意味を持つ名前の先輩女性アバターキャラクターである。店頭での接客経験を通じて培った安心感と、最新の美容情報を柔軟に取り入れる力が強みで、スキンケアが得意である。

Rai(ライ)
「来(未来)」をイメージした名前の後輩男性アバターキャラクターである。明るく元気で素直な性格を持ち、ベーシックスキンケア、メンズスキンケア、UVケアの提案を得意とする。

【参考リンク】

資生堂オンラインストア(外部)
資生堂公式のECサイト。デイリー使いのアイテムからラグジュアリーブランドのアイテムまで、資生堂の化粧品を幅広く取り扱う。

資生堂ジャパン株式会社(外部)
資生堂グループの企業情報サイト。会社案内、主なブランド、投資家情報、サステナビリティ、研究・生産、採用情報などを提供。

パーソナルビューティーパートナー(PBP)(外部)
資生堂のパーソナルビューティーパートナーに関する公式情報ページ。PBPの役割や活動内容などの情報を提供している。

【参考記事】

2025年はライブコマース元年になる「買い物のエンタメ化」が進む(外部)
日本のライブコマース市場が2025年に本格的な成長期を迎えるとの予測。中国では既に100兆円規模の市場に成長していると分析。

2025年注目のライブコマースとは?日本で変化するライブコマース市場(外部)
日本のライブコマース市場について、認知率31.9%、視聴者の54.8%が実際に購入しているという具体的なデータを提示。

AI時代のインフルエンサーマーケティング 信頼、透明性(外部)
AIを活用したインフルエンサーマーケティングにおいて透明性の確保が重要。消費者の52%がAI開示なしで不信感を抱くデータを示す。

【編集部後記】

アバターと人間の接客、どちらが「自分らしい美容」に近づけるのでしょうか。資生堂の試みは、テクノロジーが人間の心理的な壁を取り除く可能性を示しています。私たち自身も、店頭で「似合わなかったらどうしよう」と躊躇した経験があるかもしれません。

アバターPBPとの対話が、そうした不安を和らげ、新しい自分を発見するきっかけになるとしたら、それは単なる販売手法を超えた価値を持つのではないでしょうか。この変化をどう受け止めるか、一緒に考えていきたいと思います。

投稿者アバター
omote
デザイン、ライティング、Web制作を行っています。AI分野と、ワクワクするような進化を遂げるロボティクス分野について関心を持っています。AIについては私自身子を持つ親として、技術や芸術、または精神面におけるAIと人との共存について、読者の皆さんと共に学び、考えていけたらと思っています。

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