OpenAI、Merge Labsに2.5億ドルの出資を準備か|音波と遺伝子工学で脳とAIを接続

[更新]2025年10月29日08:02

OpenAI、Merge Labsに2.5億ドルの出資を準備か|音波と遺伝子工学で脳とAIを接続 - innovaTopia - (イノベトピア)

OpenAIのCEOであるサム・アルトマンが、Merge Labsというステルス・スタートアップを支援している。

同社は音波と磁場を通じて人間の思考を解釈する非侵襲的なブレイン・コンピューター・インターフェース(BCI)の開発を目指している。手術を必要とするイーロン・マスクのNeuralinkとは異なり、Merge Labsは超音波技術と遺伝子工学を活用した手術不要のアプローチを追求する。

The Vergeの報道によれば、アルトマンはカリフォルニア工科大学の生体分子工学者ミハイル・シャピロや、WorldcoinのTools for HumanityのCEOアレックス・ブラニアを含むチームを編成している。シャピロは超音波を使ったニューロンとの相互作用や、細胞を音波に反応させる遺伝子治療技術の開発で知られる。

Financial Timesによると、Merge LabsはOpenAIのベンチャー部門を通じて2億5000万ドルの資金調達を準備しており、アルトマンは共同創設者として名を連ねるものの、日常業務には関与しない見込みである。

From: 文献リンクSam Altman Reportedly Backs Secretive Brain-Tech Startup Merge Labs to Build Non-Invasive Mind-AI Interface

【編集部解説】

これまでNeuralinkに代表される侵襲的アプローチが主流でしたが、アルトマンは「読み取り専用」という明確な哲学を打ち出しました。

この「読み取り専用」という概念は技術倫理の観点から極めて重要です。AIが人間の思考を解釈できても、それを変更したり操作したりすることはできない。この一線を引くことで、脳とAIの融合に対する社会的な受容性を高める狙いがあります。

技術的には、ミハイル・シャピロが開発した超音波と遺伝子治療の組み合わせが核心となる可能性があります。これは遺伝子工学によって特定の細胞を音波に反応するように改変し、超音波で非侵襲的にニューロンと通信する手法で、この方法なら開頭手術のリスクやコストを回避できます。

一方で、遺伝子治療を用いる点には慎重な議論が必要でしょう。「非侵襲的」という言葉の定義が問われます。物理的な手術は不要でも、遺伝子レベルでの介入が必要なら、それは果たして完全に非侵襲的と言えるのか。規制当局がどう判断するかは今後の焦点となります。

2億5000万ドルの資金調達ラウンドを準備しているという事実は、OpenAIのベンチャー部門が本気でこの分野に参入する意思を示しています。これはAI企業が単なるソフトウェアの領域を超え、人間の生物学的基盤そのものに関与し始めたことを意味します。

実用化の時間軸については慎重に見る必要があります。Neuralinkですら臨床試験の初期段階にあり、遺伝子治療を伴う超音波BCIはさらに複雑な承認プロセスを経る必要があるでしょう。しかし、成功すれば医療、コミュニケーション、そして人間の認知能力そのものを拡張する可能性を秘めています。

【用語解説】

ブレイン・コンピューター・インターフェース(BCI)
脳の神経信号を直接読み取り、コンピューターやデバイスと通信する技術である。侵襲的な方法では脳に電極を埋め込み、非侵襲的な方法では頭皮上から脳波を測定する。医療分野では麻痺患者の運動機能回復などへの応用が期待されている。

【参考リンク】

Neuralink(外部)
イーロン・マスクが2016年に創設した脳インプラント企業。脳に電極を埋め込む侵襲的BCIを開発し、麻痺患者の運動機能回復を目指している。

Shapiro Lab – Caltech(外部)
ミハイル・シャピロ教授が率いる研究室。超音波と磁場を使った生体分子技術を開発し、非侵襲的脳通信の研究で知られる。

Tools for Humanity(外部)
サム・アルトマンらが設立した企業。Worldcoinプロジェクトを開発し、生体認証による人間性証明システムを提供している。

World(外部)
虹彩スキャンによる生体認証で人間を識別し、AIとの区別を可能にするブロックチェーンベースのデジタルIDシステム。

【参考動画】

【参考記事】

Sam Altman’s next startup eyes using sound waves to read your brain(外部)
サム・アルトマンがMerge Labsを立ち上げ、シャピロ教授やブランジャCEOを含むチームで超音波と遺伝子工学を用いた非侵襲的BCIを開発。

Sam Altman Funding Biomedical Startup to Read Human Brain Using Sound Waves(外部)
アルトマンが音波で脳を読み取る技術を開発。2億5000万ドルの資金調達準備中で、評価額は8.5億ドルと報じられている。

Merge Labs Seeks $250M With OpenAI to Compete Neuralink(外部)
Merge LabsがOpenAIのベンチャーチームから2億5000万ドルを8.5億ドルの評価額で調達準備。アルトマンは共同創設者として参加予定。

OpenAI’s Sam Altman is funding a secretive brain-tech startup to read minds safely(外部)
Financial Timesの情報を引用し、Merge LabsがOpenAIのベンチャー部門から2億5000万ドルの資金調達を準備していることを報道。

Sam Altman’s Merge Labs may use ultrasound and magnetic field to read your mind(外部)
Merge Labsが超音波と磁場を組み合わせた技術で神経信号を読み取る計画を詳述。侵襲的手術不要がNeuralinkとの差別化要因。

【編集部後記】

脳と機械が直接つながる未来に、私たちはどう向き合うべきでしょうか。アルトマンが提唱する「読み取り専用」という倫理的な境界線は、技術の進歩と人間性の保護のバランスを考えるうえで重要な議論の出発点になりそうです。

手術不要で思考を読み取れる技術は、医療現場での可能性を大きく広げる一方で、プライバシーや認知的自由といった新たな権利の定義も必要になってきます。みなさんは、自分の思考がAIに読み取られることに、どこまで受け入れられるでしょうか。この技術が社会に実装される前に、私たち一人ひとりが考えておくべきテーマかもしれません。

投稿者アバター
omote
デザイン、ライティング、Web制作を行っています。AI分野と、ワクワクするような進化を遂げるロボティクス分野について関心を持っています。AIについては私自身子を持つ親として、技術や芸術、または精神面におけるAIと人との共存について、読者の皆さんと共に学び、考えていけたらと思っています。

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