Adobe Express AIアシスタント登場、曖昧な指示でもデザイン編集が可能に

[更新]2025年10月30日11:06

Adobe Express AIアシスタント登場、曖昧な指示でもデザイン編集が可能に - innovaTopia - (イノベトピア)

Adobeは現地時間2025年10月28日、クラウドベースのデザインプラットフォーム「Adobe Express」に新しい生成AI機能「AIアシスタント」のパブリックベータ版を公開した。

この機能はAdobe Express Webアプリの左上隅のトグルから利用でき、有効化するとチャットボットスタイルのテキストボックスが表示され、自然言語で新しいデザインの作成や既存画像の編集が可能になる。ユーザーは「秋をテーマにした結婚式の招待状」といった具体的な説明や、「目立つようにして」のような曖昧な指示でもデザインを生成・編集できる。

AIアシスタントは背景、フォント、個別要素など特定部分のみを変更し、他の部分は維持する。AdobeのFontやストック画像ライブラリを活用し、Firefly AIモデルで画像を生成する。ユーザーはいつでもAIアシスタントをオフにして手動編集に切り替えられる。

同様の機能はPhotoshopでもプライベートベータ版として提供されており、将来的にはChatGPTなどサードパーティアプリとの統合も予定されている。

From: 文献リンクYou can tell Adobe Express’s new AI assistant to edit your designs for you

【編集部解説】

Adobe MAX 2025で発表されたこのAIアシスタントは、デザインツールの民主化における大きな転換点となる可能性があります。最も注目すべきは「ハイブリッド体験」という設計思想でしょう。従来の生成AIツールの多くは、AIが全てを生成するか、人間が全てを手動で編集するか、という二者択一でした。しかしAdobe Expressの新機能は、両者をシームレスに行き来できる点で独自性を持っています。

この機能が特に革新的なのは、レイヤー単位での編集が可能な点です。「背景だけ変えて」「このフォントだけ変更して」といった部分的な指示に対応できることで、デザインの細かなコントロールを維持しながらAIの効率性を活用できます。これはプロのデザイナーにとっても、初心者にとっても重要な要素となるでしょう。

技術的な観点では、Adobe Firefly AIモデルに加えて、Google Gemini 2.5 Flashなどのサードパーティモデルも活用している点が特徴的です。自社のFontライブラリやAdobe Stockとの統合により、著作権的にクリーンなアセットを使用できる安心感があります。企業ユースを想定すると、この点は極めて重要な差別化要因です。

長期的な視点で見ると、Adobeが示す「アプリ間でシームレスに連携するAIアシスタント」というビジョンは、クリエイティブワークフロー全体の変革を予感させます。Photoshop、Express、そして将来的にはIllustratorやPremiere Proなど、Adobe製品群全体で一貫したAI体験が提供されれば、クリエイターの生産性は飛躍的に向上するでしょう。

ただし、潜在的な懸念も存在します。AIに依存しすぎることで、基礎的なデザインスキルの習得機会が失われる可能性があります。また、自然言語による指示の曖昧さが、意図しない結果を生む可能性も考慮すべきでしょう。Adobeが「いつでも手動編集に切り替えられる」設計にこだわったのは、こうした懸念への回答とも言えます。

【用語解説】

Adobe Express
Adobeが提供するクラウドベースのデザインプラットフォーム。専門的なデザインスキルがなくても、SNS投稿、ポスター、チラシなどのビジュアルコンテンツを素早く作成できるツールである。テンプレートやAI機能を活用し、Webブラウザからアクセス可能な点が特徴だ。

Adobe Firefly
Adobeが開発した生成AIモデルシリーズ。テキストから画像を生成したり、画像の一部を編集したりできる。商用利用を前提とした著作権的にクリーンなデータセットで訓練されており、企業ユースでも安心して使える点が大きな特徴となっている。

レイヤー
デザインやグラフィックソフトウェアにおいて、画像や要素を階層的に管理する仕組み。各レイヤーを個別に編集できるため、一部だけを変更しながら他の部分を保持できる。Adobe ExpressのAIアシスタントは、特定のレイヤーのみを指定して編集可能だ。

Adobe MAX
Adobeが毎年開催する世界最大級のクリエイティビティカンファレンス。2025年は米ロサンゼルスで10月28日から30日まで開催。新製品の発表や最新技術のデモンストレーション、著名クリエイターによるセッションなどが行われ、クリエイティブ業界の最新トレンドが集まる場となっている。

Google Gemini 2.5 Flash
Googleが開発した大規模言語モデル。Adobe ExpressのAIアシスタントでは、Firefly AIモデルに加えてこのようなサードパーティのAIモデルも活用することで、より幅広い画像編集機能を実現している。

【参考リンク】

Adobe Express 公式サイト(外部)
クラウドベースのデザインプラットフォーム。テンプレート、AI機能、豊富なフォント・画像ライブラリを活用し、誰でも簡単にビジュアルコンテンツを作成可能。

Adobe Firefly 公式サイト(外部)
Adobeの生成AIツール群。商用利用可能な著作権的にクリーンなデータセットで学習され、テキストから画像生成や部分編集など多彩な機能を提供。

Adobe MAX 公式サイト(外部)
Adobeが主催する世界最大のクリエイティビティカンファレンス。最新のクリエイティブツールやAI技術の発表が行われ、オンライン参加も可能。

Adobe Stock(外部)
Adobeが提供するストック素材サービス。写真、イラスト、ベクター、動画など数億点の素材を提供し、商用利用可能な高品質素材をデザインに組み込める。

【参考動画】

【参考記事】

Adobe Introduces New AI Assistant in Adobe Express that Unlocks Creativity for All(外部)
Adobe公式のプレスリリース。会話型の作成・編集体験により、あらゆるスキルレベルのユーザーがコンセプトからコンテンツまで数分で移行できると説明。

Adobe launches AI assistants for Express and Photoshop(外部)
TechCrunchによる報道。ExpressではAIアシスタント専用モードを新設し、二つのモード切り替えにより技術をアクセシブルかつコントロール可能にすると紹介。

All-new AI Assistant and more takeaways from Adobe MAX 2025(外部)
Adobe Express公式ブログ。Adobe Firefly及びGoogle Gemini 2.5 Flashなどサードパーティモデルを活用した次世代の画像編集機能を搭載と記載。

【編集部後記】

「曖昧な指示でもAIが理解してくれる」というこの新機能、みなさんはどう感じられるでしょうか。デザイン経験がない方にとっては心強いツールになりそうですが、一方でプロのクリエイターにとっても制作時間の短縮につながるかもしれません。

私自身、子を持つ親として、こうしたAIツールが創造性を拡張するのか、それとも基礎スキルの習得機会を奪うのか、とても興味深く感じています。みなさんは、AIとの「ハイブリッドな協働」という考え方に、どのような可能性を感じられるでしょうか。ぜひご自身の制作スタイルと照らし合わせて考えてみていただければと思います。

投稿者アバター
omote
デザイン、ライティング、Web制作を行っています。AI分野と、ワクワクするような進化を遂げるロボティクス分野について関心を持っています。AIについては私自身子を持つ親として、技術や芸術、または精神面におけるAIと人との共存について、読者の皆さんと共に学び、考えていけたらと思っています。

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