Adobe Fireflyが動画制作を変革、AIでサウンドトラックとナレーションを自動生成

[更新]2025年10月30日07:34

Adobe Fireflyが動画制作を変革、AIでサウンドトラックとナレーションを自動生成 - innovaTopia - (イノベトピア)

Adobeは現地時間2025年10月28日、動画にサウンドトラックとナレーションを追加できる新しい生成AIオーディオツール「Generate Soundtrack」と「Generate Speech」を発表した。両ツールはリニューアルされたAdobe Firefly AIアプリでパブリックベータ版として提供される。

Generate Soundtrackは、アップロードされた動画を評価し、映像に自動同期するインストゥルメンタル音楽クリップを生成する。lofi、ヒップホップ、クラシック、EDMなどのプリセットから選択可能で、1つのプロンプトにつき4つの音声クリップバリエーションを提供し、各クリップの最大長は5分間である。Fireflyの生成AI責任者Alexandru Costinは、このモデルがライセンス取得済みコンテンツで訓練されているため商業的に安全だと述べた。

Generate Speechはテキストから動画用のナレーションを作成でき、AdobeのFirefly Speech ModelまたはElevenLabsによる50種類以上の音声オプションを提供し、20以上の言語をサポートする。また、Adobeは来月からFireflyビデオエディターのプライベートベータ版を提供開始する予定である。

From: 文献リンクAdobe’s new AI audio tools can add soundtracks and voice-overs to videos

【編集部解説】

今回Adobeが発表したGenerate SoundtrackとGenerate Speechは、クリエイティブ産業における著作権問題に正面から取り組んだ製品として注目に値します。特筆すべきは、Adobeがライセンス取得済みコンテンツのみを使用してAIモデルをトレーニングしている点です。これは、知的財産権所有者から音楽と音声を購入したという同社の主張を裏付けています。

この「商業的に安全」というアプローチは、2024年6月に米国レコード協会(RIAA)から著作権侵害で訴えられたSunoやUdioといった競合他社と明確に一線を画すものです。両社は保護されたコンテンツでAIモデルをトレーニングしたことを認めており、クリエイターが生成した音楽を商業利用する際に法的リスクを抱えています。

技術的な側面では、Generate Soundtrackが映像に自動同期する機能は、動画制作者にとって大きな時間短縮になります。従来は手動で音楽のタイミングを調整する必要がありましたが、このツールはその作業を自動化します。また、lofi、ヒップホップ、クラシック、EDMなどのプリセットから選択できる「マッドリブ的アプローチ」は、音楽に詳しくないクリエイターでも直感的に操作できる設計になっています。

Generate Speechツールでは、ElevenLabsとの提携が興味深い点です。ElevenLabsは高精度な音声合成技術で知られており、AdobeはこれをFirefly Speech Modelと組み合わせて50以上の音声オプションを提供しています。速度、ピッチ、感情の微調整が可能で、地域による発音の違いも手動で修正できるため、グローバルコンテンツ制作に対応した設計となっています。

長期的な視点で見ると、来月からプライベートベータ版が提供されるFireflyビデオエディターが重要です。これは「マルチトラックタイムラインエディター」として、ナレーション、サウンドトラック、タイトル生成ツールを統合したウェブベースのアプリケーションです。従来、Adobe Premiere ProやAfter Effectsといった高価なデスクトップアプリケーションが必要だった作業が、ブラウザ上で完結できるようになります。

潜在的なリスクとしては、AI生成音楽の普及が音楽クリエイターの仕事を奪う可能性が指摘されています。ただし、現時点ではAdobeのアプローチは「バックグラウンドオーディオ専用」と明確に位置づけられており、より包括的な音楽制作体験を提供する別のツールも開発中とのことです。これは、プロの音楽家とAIツールの共存を模索する姿勢の表れと言えるでしょう。

【用語解説】

マッドリブ(Mad Libs)
空欄に単語を埋めて文章を完成させる言葉遊びゲームである。この記事では、プリセットから選択肢を選んで組み合わせることで、音楽スタイルを指定する方法を指している。

RIAA(Recording Industry Association of America)
米国レコード協会の略称である。音楽業界の権利保護や著作権の擁護を行う業界団体で、著作権侵害に対する訴訟を主導することもある。

マルチトラックタイムラインエディター
複数の映像や音声トラックを時系列に沿って配置・編集できるツールである。プロの動画編集ソフトウェアに標準搭載されている機能で、複雑な編集作業を可能にする。

【参考リンク】

Adobe Firefly(外部)
Adobeが提供する生成AIプラットフォーム。画像、動画、音声、デザインをAIで生成でき、複数のAIモデルを統合している。

Adobe Firefly Generate Soundtrack(サウンドトラックを生成)(外部)
動画用のオリジナル音楽を生成するツールの公式ヘルプページ。雰囲気、スタイル、テンポを調整可能。

ElevenLabs(外部)
深層学習を用いた高精度な音声合成技術を開発する企業。29言語以上に対応し、Adobeと提携している。

RIAA(米国レコード協会)(外部)
音楽業界の権利保護を行う米国の業界団体。AI音楽生成における著作権問題で中心的な役割を果たす。

【参考動画】

【参考記事】

Adobe Firefly Delivers Groundbreaking AI Audio, Video and Imaging Innovations(外部)
Adobe公式のプレスリリース。Adobe MAX 2025で発表された新機能の全容を詳述している。

Major record companies sue Suno, Udio for ‘mass infringement of copyright’(外部)
2024年6月にソニー、ユニバーサル、ワーナーがSunoとUdioを提訴した詳細を報じる記事。

AI music startups say copyright violation is just rock and roll(外部)
SunoとUdioが保護されたコンテンツでAIモデルを訓練したことを認めた上でフェアユースを主張する内容。

Adobe Turns Up the Volume on AI With New Ways to Generate Soundtracks and Audio(外部)
Generate Soundtrackが動画を分析して自動的にプロンプトを生成する仕組みを詳しく解説している。

【編集部後記】

AI生成の音楽が著作権フリーで商業利用できる時代が、ついに現実のものとなりました。動画制作をされている方は、これまでBGM選びに何時間も費やしたり、ライセンス料を気にしたりしたことはありませんか。一方で、AI生成音楽が普及することで、音楽クリエイターの仕事にどのような影響が及ぶのかという懸念もあります。

皆さんは、クリエイティブな制作においてAIツールをどこまで活用すべきだと考えますか。また、人間とAIの協働という視点から、この技術の未来についてどう思われるでしょうか。ぜひご意見をお聞かせください。

投稿者アバター
omote
デザイン、ライティング、Web制作を行っています。AI分野と、ワクワクするような進化を遂げるロボティクス分野について関心を持っています。AIについては私自身子を持つ親として、技術や芸術、または精神面におけるAIと人との共存について、読者の皆さんと共に学び、考えていけたらと思っています。

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